株式会社の代表取締役が、会社において代金を支払う資力がないものである事情を知りながら、会社の被用者をして会社のため第三者から商品を買い受けさせ、右第三者にその代金相当額の損害を与えた場合には、右代表取締役は、右第三者に対し、不法行為による損害賠償責任を負うものと解すべきである。 (意見がある)
株式会社の取締役がその職務執行行為により第三者に与えた損害につき不法行為責任を負うとされた事例
民法709条,商法266条ノ3第1項
判旨
会社代表取締役が、会社に支払資力がないことを知りながらあえて第三者から商品を買い受けさせた場合、会社役員の第三者に対する責任(現会社法429条1項)が成立し、民法709条の不法行為責任とあわせて損害賠償義務を負う。
問題の所在(論点)
取締役が会社に資力がないことを知りながら取引を継続し、第三者に代金未払の損害を与えた場合、当該取締役は民法709条の不法行為責任および旧商法266条の3第1項(現会社法429条1項)の責任を負うか。
規範
取締役が職務を行うに際し、悪意又は重大な過失によって第三者に損害を加えたときは、会社法429条1項に基づき損害賠償責任を負う。また、当該責任の要件を満たす場合には、民法709条の一般不法行為責任の成立も妨げられない。
重要事実
D建設株式会社の代表取締役である上告人は、同社に代金支払能力がないことを認識しながら、従業員Eを介して被上告人から建築工事用パネルを買い受けさせた。その結果、被上告人はパネル代金相当額(82万2400円)の回収が不能となる損害を被ったため、上告人に対し損害賠償を求めた。
あてはめ
上告人は、代表取締役として会社の支払不能という重要な事実を認識しながら、あえて被上告人との取引を強行させている。これは第三者に対する関係において「悪意」があるといえ、被上告人が被った代金相当額の損害は、取締役の職務執行に基づく直接的な損害に該当する。したがって、会社法上の役員責任の要件を満たすとともに、故意により他人の権利を侵害したものとして一般不法行為の要件も充足する。
結論
上告人は被上告人に対し、不法行為および役員の第三者に対する責任に基づき、代金相当額の損害を賠償する責任を負う。
実務上の射程
役員が「支払不能」を認識しつつ取引をさせた場合の典型的な責任追及パターンである。答案上は、まず会社法429条1項の責任を検討し、その「悪意」の認定において支払不能の認識を援用する。不法行為責任との関係については、本判決は両者の併存を認める立場(法条競合ではなく請求権競合)と解される。
事件番号: 昭和45(オ)50 / 裁判年月日: 昭和45年4月30日 / 結論: 棄却
省略(最高裁昭和三九年(オ)第一一七五号同四四年一一月二六日大法廷判決・民集二三巻一一号二一五〇頁参照) (反対意見がある。)