省略(最高裁昭和三九年(オ)第一一七五号同四四年一一月二六日大法廷判決・民集二三巻一一号二一五〇頁参照) (反対意見がある。)
株式会社の代表取締役が職務の執行として第三者所有の機械を無権限者から買い受け解体処分して右第三者に損害を与えた場合における右代表取締役に対する第三者の損害賠償請求権の根拠法条
民法709条,商法266条ノ3
判旨
取締役が職務執行に際し、第三者に損害を加えた場合の直接の賠償責任について、会社法429条1項(旧商法266条ノ3第1項)の規定がある場合であっても、民法709条の一般不法行為責任の適用は排除されず、軽過失による責任も肯定される。
問題の所在(論点)
取締役が職務執行に関し第三者に直接損害を与えた場合、会社法429条1項(旧商法266条ノ3第1項)が民法709条の特別規定として優先的に適用され、重過失以上の要件を必要とするのか。それとも民法709条による一般不法行為責任(軽過失責任)も併せて追及できるのか。
規範
取締役の第三者に対する責任に関し、会社法429条1項(旧商法266条ノ3第1項)は取締役の地位に基づく特別の法定責任を定めたものであるが、これは民法709条に基づく一般不法行為責任を排斥する趣旨ではない。したがって、取締役が職務執行にあたり、故意または過失(軽過失を含む)によって第三者の権利を侵害した場合には、同条に基づき損害賠償責任を負う。
重要事実
上告人会社(株式会社)の代表取締役である上告人Aは、その職務執行として、被上告会社が所有する本件機械類を切断・搬出し、解体・処分した。この際、Aには当該機械が他人の所有物であることの確認を怠った過失があった。被上告人は、上告人会社に対しては法人本質説および不法行為責任(民法44条1項・当時)に基づき、代表取締役Aに対しては民法709条に基づき、機械の時価相当額の損害賠償を求めた。
あてはめ
本件において、代表取締役Aは職務執行の過程で他人の所有物を解体処分しており、権利侵害の結果が発生している。Aには当該機械が他人の所有であることを知らなかったことにつき過失が認められる。反対意見は429条1項を特別規定と解し重過失が必要と説くが、多数意見は原審の過失認定を是認した。これは、429条1項の責任と民法709条の責任が重畳的に成立し得ることを前提に、軽過失による不法行為責任の成立を認めたものといえる。
結論
代表取締役Aは、民法709条に基づき、軽過失による不法行為責任を負う。したがって、Aに対する損害賠償請求を認容した原判決は正当である。
実務上の射程
会社法429条1項が「悪意または重過失」を要件としているため、軽過失の場合には取締役個人の責任を追及できないようにも見えるが、本判例(および最判昭44.11.26)により、一般不法行為としての要件を満たす限り、軽過失でも民法709条による責任追及が可能である。答案上は、両者の責任の性質(法定責任と不法行為責任)を区別した上で、請求の根拠を分立させて論じる際に有用である。
事件番号: 昭和33(オ)539 / 裁判年月日: 昭和35年10月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】取締役が旧商号を記載した手形を振り出した行為につき、任務懈怠(悪意・重過失)が認められる場合であっても、第三者の損害との間に相当因果関係が認められない限り、会社法429条1項(旧商法266条の3)に基づく賠償責任は負わない。 第1 事案の概要:被告(被上告人)が取締役を務める会社は、商号を「F林業…