最高裁昭和三九年(オ)第一一七五号、同四四年一一月二六日大法廷判決(民集二三巻一一号二一五〇頁)と同旨。 (反対意見あり。)
商法二六六条ノ三第一項の法意 (会社の受託物返還債務の履行不能による寄託者の損害の賠償につき商法二六六条ノ三第一項を適用して代表者の責任が認められた事例)
商法266条ノ3
判旨
取締役が職務上の義務に違反し、その結果として第三者に損害を生じさせた場合、その損害が会社への損害を介した間接的なものであっても、任務懈怠に悪意または重過失があり相当因果関係が認められる限り、役員等は第三者に対して直接の損害賠償責任を負う。
問題の所在(論点)
1. 役員等の第三者に対する賠償責任において、会社が損害を被った結果として第三者に損害が生じた「間接損害」の場合にも、役員等の直接責任が認められるか。2. 代表取締役が業務を他の者に任せきりにしていた「監視義務違反」が、悪意または重大な過失による任務懈怠に該当するか。
規範
1. 役員等の第三者に対する賠償責任(旧商法266条の3第1項、現会社法429条1項)は、取締役の任務懈怠の行為と第三者の損害との間に相当の因果関係がある限り、直接損害か間接損害かを問わず発生する。2. 代表取締役が他の者に会社業務の一切を任せきりとし、その執行を全く監視せず不正行為等を看過した場合には、自らもまた悪意または重大な過失により任務を怠ったものと解する。
重要事実
被上告人(第三者)は、訴外の会社との間で麦類の寄託契約を締結していたが、当該麦類が亡失する事故が発生した。上告人(会社代表取締役)は、他の者らに会社業務の一切を任せきりにしており、業務執行について何ら意を用いることなく、その結果として不正行為や任務懈怠を看過した。被上告人は、上告人に対し、旧商法266条の3第1項(現会社法429条1項)に基づき、麦類の亡失により被った損害の賠償を求めた。
あてはめ
1. 役員等の第三者に対する責任は、会社制度の重要性に鑑み、第三者を保護するために認められた法定の責任である。したがって、直接損害か間接損害かを区別せず、任務懈怠と損害との間に相当因果関係があれば足りる。2. 本件において、上告人は代表取締役でありながら業務を他の者に「任せきり」にし、一切の監視を行わずに不正・懈怠を看過した。これは代表取締役としての善管注意義務に著しく違反するものであり、悪意または重大な過失による任務懈怠に該当すると評価される。
結論
上告人は、悪意または重大な過失により任務を怠ったものといえ、麦類の亡失という第三者の損害について、会社法上の第三者責任に基づき賠償義務を負う。
実務上の射程
会社法429条1項の責任の性質を「法定の責任」と解する判例理論を確立した。答案上では、間接損害(株主の株価下落等を除く債権者の損害など)についても同条の適用があることを論じる際の根拠となる。また、いわゆる「幽霊取締役」や「名目的取締役」の監視義務違反を問う際のスタンダードな規範として機能する。
事件番号: 昭和43(オ)1145 / 裁判年月日: 昭和45年7月16日 / 結論: 棄却
有限会社の代表取締役が、経営の一切を他の取締役に一任しみずから会社の経営に関与しなかつた場合において、会社の取引先が取引に関して損害を被つたとしても、その損害が経営を一任された取締役の悪意または重大な過失による任務懈怠によつて生じたものでないときは、右代表取締役の任務懈怠と右取引先の損害との間には相当因果関係を欠き、代…