株式会社の取締役は、会社に対し、代表取締役が行なう業務執行につき、これを監視し、必要があれば、取締役会をみずから招集し、あるいは招集することを求め、取締役会を通じてその業務執行が適正に行なわれるようにする職責がある。
代表取締役の業務執行についての取締役の監視義務
商法254条ノ2,商法266条ノ3
判旨
取締役は、取締役会に上程された事項のみならず、代表取締役の業務執行一般を監視し、必要があれば取締役会の招集を通じて業務執行を適正化させる職務を負う。
問題の所在(論点)
取締役が負う監視義務の範囲は、取締役会に上程された事項に限定されるか、あるいは代表取締役の業務執行一般に及ぶか(現行会社法429条1項の任務懈怠の有無)。
規範
取締役会を構成する取締役は、会社に対し、代表取締役の業務執行一般につき監視する職務を有する。これには、取締役会に上程された事項に限らず、必要があれば自ら取締役会を招集し、または招集を請求することで、取締役会を通じて業務執行が適正に行われるようにする義務が含まれる。
重要事実
上告人らは株式会社の取締役に就任していたが、代表取締役の業務執行に対する監視を適切に行わなかった。その結果、被上告人らに損害が生じ、取締役としての任務懈怠(監視義務違反)およびそれについての重大な過失の有無が争われた。
あてはめ
取締役は業務執行を監査する地位にあり、取締役会を構成する一員である。したがって、単に受動的に上程事項を確認するだけでは足りない。本件上告人らは、代表取締役の業務執行一般を監視し、必要に応じて取締役会の招集権限を行使するなどして適正な執行を確保すべき職務を怠ったものと解される。かかる職務放棄には重大な過失が認められ、損害との因果関係も認められる。
結論
取締役は代表取締役の業務執行一般について監視義務を負う。本件において上告人らには監視義務違反(任務懈怠)につき重大な過失があり、第三者に対する損害賠償責任を免れない。
実務上の射程
平取締役の監視義務が代表取締役の業務執行全般に及ぶことを示した重要判例である。現行法423条1項(会社に対する責任)や429条1項(第三者に対する責任)の任務懈怠を論じる際、監視義務の内容を定義する規範として活用する。自ら招集権限等を行使すべき点まで言及した点が実務上重要である。
事件番号: 昭和59(オ)208 / 裁判年月日: 昭和59年10月4日 / 結論: 棄却
商法(昭和五六年法律第七四号による改正前のもの)二六六条の三第一項の規定に基づく取締役の損害賠償については民法七二二条二項の適用がある。