少年につき禁錮以上の刑に当たる罪として家庭裁判所から少年法20条1項の送致を受けた事件について,それと事実の同一性が認められるとしても,罰金以下の刑に当たる罪の事件として公訴を提起することは許されない。
少年につき禁錮以上の刑に当たる罪として家庭裁判所から少年法20条1項の送致を受けた事件をそれと事実の同一性が認められる罰金以下の刑に当たる罪の事件として公訴を提起することの許否
刑訴法458条1号,刑訴法338条4号,少年法20条1項
判旨
少年法20条1項に基づき家庭裁判所から検察官へ送致された「故意」の非行事実と同一性が認められる「過失」の事実であっても、それが罰金以下の刑に当たる罪である場合には、検察官は公訴を提起することができない。
問題の所在(論点)
家庭裁判所から故意の非行事実で送致を受けた検察官が、少年である被告人に対し、当該事実と同一性があるものの罰金以下の刑に当たる過失の事実について公訴を提起できるか(少年法20条1項、刑訴法338条4号)。
規範
少年法20条1項の趣旨に照らし、家庭裁判所から特定の非行事実について送致を受けた場合であっても、公訴提起の対象が罰金以下の刑に当たる罪の事件であるときは、送致事実と同一性が認められる事実であっても別途公訴を提起することは許されない。これに反する公訴提起は、刑訴法338条4号により公訴棄却の対象となる。
重要事実
被告人は少年であり、家裁から「故意による通行禁止違反」の事実で検察官送致を受けた。検察官は、当該事実と同一性が認められる「無免許運転」及び「過失による通行禁止違反」の事実で略式命令を請求した。簡易裁判所はこれに基づき罰金刑の略式命令を発し、確定した。しかし、過失による通行禁止違反は罰金以下の刑に当たる罪であった。
事件番号: 平成14(さ)2 / 裁判年月日: 平成14年11月8日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】罰金以下の刑に当たる罪については、少年法20条1項により家庭裁判所から検察官へ送致することができない。これに反して公訴が提起された場合、裁判所は刑訴法338条4号により公訴棄却の判決をすべきである。 第1 事案の概要:被告人(当時少年)は、法令の定める乗車定員を超えて原動機付自転車を運転した道路交…
あてはめ
被告人は公訴提起当時少年であった。過失による通行禁止違反の事実は、法定刑が罰金以下の刑に当たる罪である。家裁から送致された故意の事実と同一性が認められるとしても、少年法20条1項の趣旨(少年の保護および家裁の先議権)に鑑みれば、罰金以下の刑に当たる罪については検察官に起訴権限はないと解される。したがって、当該事実についての公訴提起は無効であり、公訴棄却の判決をすべきであった。
結論
罰金以下の刑に当たる事実についての公訴提起は無効であり、刑訴法338条4号により公訴を棄却すべきである。本件では非常上告に基づき、原略式命令を破棄し公訴を棄却した。
実務上の射程
少年の刑事事件において、検察官が家裁からの送致事実(故意犯)を過失犯等へ構成変更して起訴する場合であっても、それが罰金以下の刑に当たる場合は、少年法の原則的な手続(家裁の終局的判断)を潜脱することになるため許されないことを示した。実務上、訴訟条件の欠如(刑訴法338条4号)の論点として重要である。
事件番号: 昭和42(さ)4 / 裁判年月日: 昭和42年6月20日 / 結論: その他
罰金のみにあたる罪を犯した少年の事件について、家庭裁判所を経由することなく公訴が提起され、これを有罪とした略式命令が確定した場合において、これに対する非常上告の申立があつたときは、右略式命令を破棄して公訴棄却の言渡をすべきである。
事件番号: 平成13(さ)2 / 裁判年月日: 平成14年4月8日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】少年法上の送致手続を経ずに少年に対し提起された公訴は、その提起の手続が規定に違反するため、刑事訴訟法338条4号により判決で棄却すべきである。 第1 事案の概要:被告人は平成13年5月20日に道路交通法違反(速度超過)の罪を犯した。検察官は同年6月13日、被告人を徳山簡易裁判所に略式起訴し、同裁判…
事件番号: 平成4(さ)1 / 裁判年月日: 平成4年9月8日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】少年法20条に基づき検察官送致ができない事案であるにもかかわらず、家庭裁判所が刑事処分相当として送致し、検察官が公訴提起をした場合、その公訴提起は無効であり、裁判所は刑事訴訟法338条4号により公訴を棄却すべきである。 第1 事案の概要:当時少年であった被告人は、路上に夜間8時間以上の長時間駐車を…
事件番号: 令和5(さ)24 / 裁判年月日: 令和6年3月7日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】道路交通法上の反則行為に該当する事実について、通告及び納付期間の経過という同法130条所定の手続を経ずに公訴を提起することは、刑事訴訟法338条4号の公訴提起の手続が規定に違反したときに該当し、公訴棄却の対象となる。 第1 事案の概要:被告人は、指定最高速度50km/hの道路を34km/h超過の8…