罰金のみにあたる罪を犯した少年の事件について、家庭裁判所を経由することなく公訴が提起され、これを有罪とした略式命令が確定した場合において、これに対する非常上告の申立があつたときは、右略式命令を破棄して公訴棄却の言渡をすべきである。
罰金のみにあたる罪を犯した少年の事件について家庭裁判所を経由することなく公訴が提起され略式命令が確定したときと非常上告
刑訴法458条,刑訴法338条4号,少年法3条1項1号,少年法20条,少年法41条,少年法42条
判旨
少年法上の家庭裁判所による送致決定を経ずに提起された公訴は、公訴提起の手続が法令に違反したときに該当するため、裁判所は刑訴法338条4号により公訴を棄却すべきである。
問題の所在(論点)
少年法上の送致手続を経ないままなされた少年に対する公訴提起の有効性と、これに対する裁判所の措置が問題となる。
規範
少年法上の先議権(少年法41条、42条等)に基づき、少年に対する公訴を提起するためには、原則として家庭裁判所による検察官への送致決定(同法20条)を経ることを要する。この正当な手続を経ずになされた公訴提起は、刑訴法338条4号にいう「公訴提起の手続が規定に違反したため無効であるとき」に該当し、判決をもって公訴を棄却すべきである。
重要事実
被告人は昭和22年8月11日生まれであり、公訴が提起された昭和41年10月21日当時、20歳未満の少年であった。しかし、検察官は家庭裁判所からの送致決定を経ることなく、被告人の道路交通法違反事件について簡易裁判所に略式命令の請求を行った。簡易裁判所は、これに対し被告人を罰金3,000円に処する旨の略式命令を発した。
事件番号: 平成13(さ)2 / 裁判年月日: 平成14年4月8日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】少年法上の送致手続を経ずに少年に対し提起された公訴は、その提起の手続が規定に違反するため、刑事訴訟法338条4号により判決で棄却すべきである。 第1 事案の概要:被告人は平成13年5月20日に道路交通法違反(速度超過)の罪を犯した。検察官は同年6月13日、被告人を徳山簡易裁判所に略式起訴し、同裁判…
あてはめ
被告人は公訴提起当時、少年法上の少年に該当する。本来、少年事件については家庭裁判所の審判に付すべきであり、刑事処分を相当と認める送致決定がない限り、検察官は公訴を提起できない。本件ではかかる送致決定がなされた事実は認められない。さらに、本件は罰金のみに相当する罪であり、少年法上の逆送(20条)が許されない事案であった可能性も高い。したがって、本件公訴提起の手続は法令に違反しており、受訴裁判所は通常の規定に従い、刑訴法338条4号を適用して公訴を棄却すべきであったといえる。
結論
原略式命令を法令違反かつ被告人に不利益なものとして破棄し、刑訴法338条4号により公訴を棄却する。
実務上の射程
刑事訴訟において、被告人が行為時または訴追時に少年であったことが後発的に判明した場合の処理指針となる。実務上、訴訟条件の欠缺(少年法上の適正手続の潜脱)がある場合には、実体審理に入らず公訴棄却判決を選択すべきであることを示している。
事件番号: 平成25(さ)4 / 裁判年月日: 平成26年1月20日 / 結論: 破棄自判
少年につき禁錮以上の刑に当たる罪として家庭裁判所から少年法20条1項の送致を受けた事件について,それと事実の同一性が認められるとしても,罰金以下の刑に当たる罪の事件として公訴を提起することは許されない。
事件番号: 平成14(さ)2 / 裁判年月日: 平成14年11月8日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】罰金以下の刑に当たる罪については、少年法20条1項により家庭裁判所から検察官へ送致することができない。これに反して公訴が提起された場合、裁判所は刑訴法338条4号により公訴棄却の判決をすべきである。 第1 事案の概要:被告人(当時少年)は、法令の定める乗車定員を超えて原動機付自転車を運転した道路交…
事件番号: 平成22(さ)243 / 裁判年月日: 平成22年7月22日 / 結論: 破棄自判
被告人が原略式命令確定後に本邦を出国し非常上告申立て時において再入国していない場合においても,検事総長は最高裁判所に非常上告をすることができる。
事件番号: 昭和56(さ)4 / 裁判年月日: 昭和57年9月28日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】交通反則者に対し、反則金の納付通告等を経ることなく提起された公訴は、公訴提起の手続が規定に違反したため無効であるとして、刑訴法338条4号に基づき棄却すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、指定最高速度を17キロメートル超過して普通乗用自動車を運転した。当初、交通事件原票の誤記により、被告人に…