少年に対し家庭裁判所を経由することなくされた略式命令に対する非常上告
刑訴法458条1号
判旨
少年法上の送致手続を経ずに少年に対し提起された公訴は、その提起の手続が規定に違反するため、刑事訴訟法338条4号により判決で棄却すべきである。
問題の所在(論点)
少年法上の送致決定を経ずに少年に対してなされた公訴提起の効力、およびこれに基づき発せられた略式命令の適法性。
規範
少年法20条に基づく家庭裁判所から検察官への送致決定(逆送)を経ることなく、少年に対して提起された公訴は、「公訴提起の手続がその規定に違反したため無効であるとき」(刑訴法338条4号)に該当する。この場合、裁判所は通常の規定に従って審理をした上で、判決をもって公訴を棄却しなければならない。
重要事実
被告人は平成13年5月20日に道路交通法違反(速度超過)の罪を犯した。検察官は同年6月13日、被告人を徳山簡易裁判所に略式起訴し、同裁判所は罰金8万円の略式命令を発した。しかし、被告人の生年月日は昭和57年10月20日であり、公訴提起時において18歳の少年であった。本件において、少年法20条による家庭裁判所から検察官への送致決定がなされた事実は存在しなかった。
あてはめ
被告人は公訴提起当時、昭和57年生まれの18歳であり、少年法上の少年に該当する。少年に対する刑事訴追には原則として家庭裁判所の送致決定を要する(少年法20条)が、本件では当該手続を経ていない。したがって、本件公訴提起の手続は法令の規定に違反し無効である(刑訴法338条4号)。本来、受訴裁判所は刑訴法463条1項により通常手続へ移行し公訴棄却判決をすべきであったが、これを見過ごして略式命令を発したことは法令に違反し、被告人に不利益である。
事件番号: 昭和42(さ)4 / 裁判年月日: 昭和42年6月20日 / 結論: その他
罰金のみにあたる罪を犯した少年の事件について、家庭裁判所を経由することなく公訴が提起され、これを有罪とした略式命令が確定した場合において、これに対する非常上告の申立があつたときは、右略式命令を破棄して公訴棄却の言渡をすべきである。
結論
原略式命令を破棄し、刑事訴訟法338条4号により本件公訴を棄却する。
実務上の射程
少年の刑事手続における家庭裁判所先議原則の重要性を確認する事例である。実務上、被告人が少年であることを見逃して略式命令が確定した場合、非常上告(刑訴法454条以下)の手続を経て、最高裁判所が直接公訴棄却の判決を下す際の先例として機能する。
事件番号: 平成14(さ)2 / 裁判年月日: 平成14年11月8日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】罰金以下の刑に当たる罪については、少年法20条1項により家庭裁判所から検察官へ送致することができない。これに反して公訴が提起された場合、裁判所は刑訴法338条4号により公訴棄却の判決をすべきである。 第1 事案の概要:被告人(当時少年)は、法令の定める乗車定員を超えて原動機付自転車を運転した道路交…
事件番号: 平成25(さ)4 / 裁判年月日: 平成26年1月20日 / 結論: 破棄自判
少年につき禁錮以上の刑に当たる罪として家庭裁判所から少年法20条1項の送致を受けた事件について,それと事実の同一性が認められるとしても,罰金以下の刑に当たる罪の事件として公訴を提起することは許されない。
事件番号: 昭和56(さ)4 / 裁判年月日: 昭和57年9月28日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】交通反則者に対し、反則金の納付通告等を経ることなく提起された公訴は、公訴提起の手続が規定に違反したため無効であるとして、刑訴法338条4号に基づき棄却すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、指定最高速度を17キロメートル超過して普通乗用自動車を運転した。当初、交通事件原票の誤記により、被告人に…
事件番号: 昭和58(さ)2 / 裁判年月日: 昭和58年11月1日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】交通反則通告制度の対象となる「反則者」に対し、通告手続を経ずに公訴が提起された場合、その公訴提起の手続は法律の規定に違反するため、刑訴法338条4号により公訴を棄却すべきである。 第1 事案の概要:被告人は道路標識による最高速度を14キロメートル超過して走行した。この行為は道交法125条1項の「反…