土地収用法94条7項又は8項の規定による収用委員会の裁決の判断内容が損失の補償に関する事項に限られている場合であっても,その名宛人は,上記裁決の取消訴訟を提起することができる。
土地収用法94条7項又は8項の規定による収用委員会の裁決の判断内容が損失の補償に関する事項に限られている場合にその名宛人が上記裁決の取消訴訟を提起することの可否
土地収用法94条7項,土地収用法94条8項,土地収用法133条
判旨
土地収用法94条に基づく収用委員会の裁決が損失補償に関する事項のみを判断したものであっても、名宛人は裁決手続の違法等の損失補償以外の事由を主張して、裁決の取消訴訟を提起することができる。
問題の所在(論点)
収用委員会の裁決の内容が、損失の補償に関する事項(存否や額)に限られている場合に、名宛人が当該裁決の取消訴訟(抗告訴訟)を提起することができるか。土地収用法133条2項等との関係が問題となる。
規範
土地収用法133条2項及び3項が、収用委員会の裁決につき損失の補償に関する訴え(当事者訴訟)を別途規定している趣旨は、同事項についての争訟を当該訴えに委ねる点にある。したがって、裁決取消訴訟において主張し得る違法事由は損失の補償に関する事項以外の事由に限られるが、これは主張し得る事由の範囲を制限するにとどまり、裁決が行政事件訴訟法3条2項の「処分」に該当する以上、その取消訴訟自体の提起が制限されるものではない。以上は道路法70条4項に基づき土地収用法94条の規定を準用する裁決についても同様に妥当する。
重要事実
上告人は、隣接する市道の拡幅工事(本件工事)により自宅敷地への出入りに支障が生じたとして、道路法70条1項に基づく通路の新築を請求した。しかし、道路管理者である市がこれに応じなかったため、同条4項に基づき収用委員会に損失補償の裁決を申請した。これに対し収用委員会は、本件工事による損失は生じていないとして申請を却下する裁決(本件裁決)を行った。上告人が本件裁決の取消しを求めて提訴したところ、原審は、本件裁決は損失補償に関する事項のみを判断したものであり、同法133条2項の形式的当事者訴訟によってのみ争うべきであるとして、訴えを却下した。
あてはめ
本件裁決は道路法70条1項の要件を欠くとして申請を却下したものであり、土地収用法94条7項の裁決にあたる。収用法上の仕組みによれば、損失補償の額や存否については土地収用法133条2項の訴えによるべきであるが、裁決手続の違法など、損失補償以外の違法事由を理由として裁決自体の取消しを求めることは依然として可能である。本件において、上告人は裁決手続の違法等を主張しており、裁決の判断内容が補償事項に限られていたとしても、裁決という「処分」の取消しを求める訴えの適法性は妨げられない。
結論
本件裁決の内容が損失補償に関する事項のみであっても、名宛人たる上告人が提起した取消訴訟は適法である。
実務上の射程
収用委員会の裁決に対する不服申立てにおいて、実質的な補償額を争う場合は形式的当事者訴訟(収用法133条2項)によるべきであるが、手続的な瑕疵や前提となる要件判断の誤りを争う場合には、取消訴訟を選択できることを示した。答案上は、行政事件訴訟法における処分性と、個別法による訴訟形態の限定(形式的当事者訴訟の排他的管轄の範囲)を論じる際の根拠となる。
事件番号: 平成24(行ヒ)20 / 裁判年月日: 平成24年11月20日 / 結論: 破棄自判
収用委員会の裁決につき審査請求をすることができる場合において,審査請求がされたときは,収用委員会の裁決の取消訴訟の出訴期間は,土地収用法133条1項ではなく行政事件訴訟法14条3項の適用により,その審査請求に対する裁決があったことを知った日から6か月以内かつ当該裁決の日から1年以内となる。
事件番号: 昭和25(オ)73 / 裁判年月日: 昭和25年10月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】訴願期間の経過に関し、旧訴願法8条3項にいう「宥恕スベキ事由」の有無の判断は、行政庁の自由裁量に属するものではなく、裁判所が審理判断し得る事項である。 第1 事案の概要:上告人は、農地買収計画に対して異議および訴願を経た後に出訴したが、原審はその訴願が期間経過後になされた不適法なものであると判断し…