土地収用法第一二九条第二項但書括弧内の「第七十八条の規定による請求にかかる裁決」とは、第七十八条の拡張収用に関する収用委員会の裁決のうち、収用の目的物についてん裁決のみを指し、損失補償についての裁決は含まないものと解すべきである。
土地収用法第一二九条第二項但書括弧内の「第七十八条の規定による請求にかかる裁決」の意義。
土地収用法78条,土地収用法129条,土地収用法133条
判旨
土地収用法(昭和38年法律第161号による改正前)129条2項但書にいう拡張収用の裁決には、損失補償に関する部分は含まれず、これに対し訴願を提起することはできない。また、訴願前置主義の採用の可否は立法政策の範疇に属するため、特定の裁決について訴願を認めない規定は憲法に違反しない。
問題の所在(論点)
土地収用法129条2項但書(括弧書き)の「第78条の規定による請求にかかる裁決」に損失補償に関する部分が含まれるか。また、同条項が損失補償に関する訴願を制限することが憲法に違反するか。
規範
1. 土地収用法129条2項但書括弧内の「第78条の規定による請求にかかる裁決」とは、収用の目的物(拡張収用の成否)に関する裁決のみを指し、損失補償に関する裁決を含まないものと解すべきである。2. 訴願(審査請求)を前置するか否かは、立法府の広範な裁量に委ねられた立法政策の問題であり、特定の処分について訴願を認めないことが直ちに憲法(13条等)に違反することはない。
重要事実
上告人が土地収用法78条に基づく拡張収用の請求を行った際、収用委員会が下した裁決のうち、損失補償に関する部分について不服を申し立てるべく訴願を提起しようとした事案。原審は、当時の土地収用法129条2項但書の規定を根拠に、損失補償に関する部分については訴願を許さないものと解釈したため、上告人が憲法13条違反や理由不備を主張して上告した。
事件番号: 平成24(行ヒ)187 / 裁判年月日: 平成25年10月25日 / 結論: 破棄自判
土地収用法94条7項又は8項の規定による収用委員会の裁決の判断内容が損失の補償に関する事項に限られている場合であっても,その名宛人は,上記裁決の取消訴訟を提起することができる。
あてはめ
法文の解釈として、拡張収用に関する裁決のうち、収用の目的物そのものに関する判断と、それに付随する損失補償の判断は峻別される。同法129条2項但書は、その文理上、前者の「収用目的物の存否等」に限定されると解するのが相当であり、後者の「補償額等」については訴願の対象から除外されているといえる。また、訴願制度は行政の自律的統制機能を有するものであるが、これを司法審査の要件として、あるいは司法審査以前の救済手段としてどう構成するかは立法政策に委ねられる。したがって、一部の裁決を訴願対象外としても、憲法違反の問題は生じない。原判決がこれらの判断を示すにあたり、詳細な個別反論を行わなくとも理由不備とはいえない。
結論
土地収用法上の拡張収用裁決のうち、損失補償に関する部分は訴願の対象とならない。また、本規定は憲法に違反しない。
実務上の射程
行政不服申立制度の設計が立法政策の範疇であることを示した重要な先例である。答案上は、行政争訟における審査請求前置主義の合理性や、行政訴訟との役割分担を論ずる際の、立法裁量の広さを支える根拠として活用できる。
事件番号: 昭和54(行ツ)129 / 裁判年月日: 昭和58年9月8日 / 結論: 破棄自判
収用委員会に対する収用裁決取消請求の訴えと起業者に対する違法な収用地の形状の変更等を理由とする不法行為上の損害賠償請求等の訴えとが併合して提起されたのち、土地収用法一三三条一項所定の期間経過後に、同条所定の損失の補償に関する訴えが予備的に追加された場合において、右損害賠償請求等の主位的請求は右裁決取消請求の関連請求とし…
事件番号: 昭和28(オ)451 / 裁判年月日: 昭和34年1月29日 / 結論: 棄却
同一土地につき二個の買収計画が並存することは相当でなく、両計画をともに取り消した上で新たに買収計画を定むべきであるとの理由で、町農業委員会の定めた農地買収計画を取り消す旨の訴願裁決があつた場合、町農業委員会が右趣旨に従い右土地につき再度買収計画を定めることは、訴願法第一六条に違反するものではない。
事件番号: 昭和49(行ツ)88 / 裁判年月日: 昭和50年3月13日 / 結論: 棄却
公共のためにする財産権の制限が社会生活上一般に受忍すべきものとされる限度をこえ、特定の人に対し特別の財産上の犠牲を強いるものである場合には、これについて損失補償に関する規定がなくても、直接憲法二九条三項を根拠にして、補償請求をすることができないわけではない。