収用委員会に対する収用裁決取消請求の訴えと起業者に対する違法な収用地の形状の変更等を理由とする不法行為上の損害賠償請求等の訴えとが併合して提起されたのち、土地収用法一三三条一項所定の期間経過後に、同条所定の損失の補償に関する訴えが予備的に追加された場合において、右損害賠償請求等の主位的請求は右裁決取消請求の関連請求として提起されたものであり、右主位的請求と予備的請求とは全くその性質を異にするなど判示の事情があるときは、右主位的請求が収用時における収用地の価額と収用裁決における損失補償額との差額の支払を求めるものであるため、その請求金額と右予備的請求の請求金額とがたまたま一致していたとしても、右主位的請求が損失補償額自体を争う趣旨を含むものとみることはできず、右予備的請求に係る訴えは、出訴期間を徒過したものとして、不適法である。
予備的に追加された土地収用法一三三条所定の損失の補償に関する訴えが出訴期間を徒過したものとして不適法とされた事例
行政事件訴訟法14条,土地収用法133条1項
判旨
土地収用法133条の損失補償に関する訴えの出訴期間遵守の有無は、訴えの変更の場合、原則として変更時を基準とする。先行する裁決取消訴訟の関連請求としてなされた損害賠償請求等が、結果的に補償不足分と同額であっても、出訴期間内に提起されたものとみなす「特段の事情」には当たらない。
問題の所在(論点)
土地収用法133条所定の出訴期間(3か月)を経過した後に損失補償に関する訴えを追加した場合において、先行して提起されていた損害賠償請求等との関係から、出訴期間を遵守したものとみなすべき「特段の事情」が認められるか。同条の趣旨に照らして、先行請求の「趣旨」や「審判対象」が新請求と実質的に同一といえるかが問題となる。
規範
訴えの変更において、出訴期間制限のある新請求が提起された場合、期間遵守の有無は原則として「訴えの変更時」を基準とする。ただし、①変更前後の請求間に訴訟物の同一性が認められるとき、又は②両者の関係から新請求を当初の訴え提起時に提起されたものと同視すべき「特段の事情」があるときは、当初の提起時を基準とすることができる。
重要事実
被収用者である被上告人は、収用裁決書の正本送達から3か月以内(出訴期間内)に、収用裁決取消訴訟の関連請求として、起業者に対し「不法行為に基づく損害賠償」または「原状回復に代わる価額填補」を請求した。その請求額は「土地時価と既受領補償額との差額」であった。その後、期間経過後に、同額の支払を求める「土地収用法133条に基づく補償金増額請求」を予備的に追加した。原審は、先行請求が実質的に損失補償額を争う意思を表明したものであるとして、特段の事情を認め適法とした。
あてはめ
土地収用法133条が損失補償の訴えを別個に規定した趣旨は、収用の適否と切り離して補償額の紛争を早期に確定・解決させる点にある。本件の主位的請求(損害賠償等)は、収用の違法を前提として土地形状変更による損害等を問うものであり、収用の適法を前提に補償額のみを争う予備的請求とは性質を全く異にする。請求額が一致し、時価のいかんが共通の争点となる点はあるが、主位的請求において時価が判断されるのは「収用が違法」とされた場合に限られる。したがって、主位的請求に損失補償額自体を争う趣旨が含まれるとはいえず、当初の提起時に予備的請求がなされたと同視すべき特段の事情は認められない。
結論
損失補償に関する訴えの追加は、出訴期間経過後になされた不適法なものである。特段の事情を認めた原審の判断は法令の解釈適用の誤りであり、予備的請求は却下されるべきである。
実務上の射程
訴えの変更における出訴期間の起算点に関する一般原則を示しつつ、収用法133条の「形式的当事者訴訟」と「抗告訴訟の関連請求(損害賠償等)」は、たとえ実質的な経済的利益が共通していても、その制度趣旨や審判構造の相違から、出訴期間の特例(当初提起時基準)を認めないとする厳格な立場を明らかにした。答案上は、請求の性質や審判対象の差異を具体的に論じる際の指標となる。
事件番号: 昭和36(オ)1154 / 裁判年月日: 昭和37年9月18日 / 結論: 棄却
土地収用法第一二九条第二項但書括弧内の「第七十八条の規定による請求にかかる裁決」とは、第七十八条の拡張収用に関する収用委員会の裁決のうち、収用の目的物についてん裁決のみを指し、損失補償についての裁決は含まないものと解すべきである。
事件番号: 平成10(行ツ)158 / 裁判年月日: 平成14年6月11日 / 結論: その他
土地収用法71条は,憲法29条3項に違反しない。
事件番号: 昭和28(オ)1284 / 裁判年月日: 昭和32年3月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地収用法における損失補償は、近傍類地の取引価格等を考慮した客観的な相当額を意味し、所有者の精神的損害や生存権保障の観点からの加算を包含するものではない。 第1 事案の概要:上告人の所有する土地が土地収用法の規定に基づき収用された際、収用審査会が決定した補償額について、上告人が不当に低額であると主…