土地収用法71条は,憲法29条3項に違反しない。
土地収用法71条と憲法29条3項
憲法29条3項,土地収用法71条
判旨
憲法29条3項の正当な補償とは、当時の経済状態において成立する価格に基づき合理的に算出された相当額を指し、土地収用法71条による補償額の算定方式はこれに反しない。
問題の所在(論点)
土地収用法71条の規定する、事業認定の告示時を基準とした価格算定及び物価変動修正による補償額の決定方式が、憲法29条3項の「正当な補償」に反するか。
規範
憲法29条3項にいう「正当な補償」とは、その当時の経済状態において成立すると考えられる価格に基づき合理的に算出された相当な額をいい、必ずしも常に完全な市場価格と一致することを要しない。土地収用における補償額は、権利取得裁決時を基準としつつも、事業認定告示時の相当価格に裁決時までの物価変動修正率を乗じる手法(土地収用法71条)によっても、財産価値を等しくさせる合理的な補償として是認される。
重要事実
上告人らは、土地収用に伴う損失補償につき、土地収用法71条が定める補償額の算定基準(事業認定告示時の価格+物価変動修正)が、実際の近傍類地の取引価格の変動を反映していないとして、憲法29条3項に違反すると主張し、本件上告に至った。
あてはめ
事業認定後の近傍類地の価格変動は、一般に当該事業の影響を受けたものであり、その変動利益を被収用者が享受すべき理由はない。また、告示後は一般の取引対象から外れるため通常の変動に従うとはいえない。さらに、法46条の2等の早期支払制度を利用すれば代替地取得も可能である。したがって、告示時価格を基礎に物価変動のみを考慮する手法には十分な合理性が認められる。
結論
土地収用法71条の規定は、被収用者の財産価値を等しくさせるような補償を可能にするものであり、憲法29条3項に違反しない。
実務上の射程
土地収用における損失補償の基準を確定させた重要判例である。答案上は、開発利益(事業による地価上昇分)を補償に含める必要がないことの論拠、および「正当な補償=完全な補償(相当な額)」という定義を引用する際に用いる。
事件番号: 平成5(行ツ)11 / 裁判年月日: 平成9年1月28日 / 結論: 棄却
一 土地収用法一三三条所定の損失補償に関する訴訟において、裁判所は、収用委員会の補償に関する認定判断に裁量権の逸脱濫用があるかどうかを審理判断するのではなく、裁決時点における正当な補償額を客観的に認定し裁決に定められた補償額が右認定額と異なるときは、これを違法とし、正当な補償額を確定すべきである。 二 被収用者は、土地…
事件番号: 昭和54(行ツ)129 / 裁判年月日: 昭和58年9月8日 / 結論: 破棄自判
収用委員会に対する収用裁決取消請求の訴えと起業者に対する違法な収用地の形状の変更等を理由とする不法行為上の損害賠償請求等の訴えとが併合して提起されたのち、土地収用法一三三条一項所定の期間経過後に、同条所定の損失の補償に関する訴えが予備的に追加された場合において、右損害賠償請求等の主位的請求は右裁決取消請求の関連請求とし…
事件番号: 昭和28(オ)1284 / 裁判年月日: 昭和32年3月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地収用法における損失補償は、近傍類地の取引価格等を考慮した客観的な相当額を意味し、所有者の精神的損害や生存権保障の観点からの加算を包含するものではない。 第1 事案の概要:上告人の所有する土地が土地収用法の規定に基づき収用された際、収用審査会が決定した補償額について、上告人が不当に低額であると主…
事件番号: 平成15(オ)129 / 裁判年月日: 平成15年11月27日 / 結論: 棄却
1 「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法の一部を改正する法律」(平成9年法律第39号)附則2項及び「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並…