1 継続的な金銭消費貸借取引に関する基本契約に基づいて金銭の借入れと弁済が繰り返され,同契約に基づく債務の弁済がその借入金全体に対して行われる場合において,過払金が発生している時点で新たな借入れをしたときには,利息制限法(平成18年法律第115号による改正前のもの)1条1項にいう「元本」の額は,新たな借入金に上記過払金を充当した後の額をいう。 2 民訴法260条2項の裁判を求める申立ての相手方が破産手続開始の決定を受けた場合における同申立てに係る請求権は,破産債権である。 3 本案請求と民訴法260条2項の裁判を求める申立てに係る請求とが併合されている訴訟手続の全部が中断した場合,同申立てについての適法な受継がされないまま,本案請求に係る部分についてのみ,当事者が受継の申立てをし,又は受訴裁判所が続行命令をすることは許されない。 4 訴訟当事者の一方が破産手続開始の決定を受け,破産債権である当該訴訟に係る請求権につき破産債権としての届出がないのに破産管財人に対して訴訟手続の続行命令が違法にされた瑕疵がある場合であっても,当該破産手続が既に終結し,かつ,破産管財人が当事者として関与した訴訟手続が全部勝訴判決の送達を受けたことなどにとどまるという事実関係の下においては,当該瑕疵は治癒される。
1 継続的な金銭消費貸借取引に関する基本契約に基づいて金銭の借入れと弁済が繰り返され,同契約に基づく債務の弁済がその借入金全体に対して行われる場合において,過払金が発生している時点で新たな借入れをしたときにおける利息制限法(平成18年法律第115号による改正前のもの)1条1項にいう「元本」の額 2 民訴法260条2項の裁判を求める申立ての相手方が破産手続開始の決定を受けた場合における同申立てに係る請求権の破産債権該当性 3 本案請求と民訴法260条2項の申立てに係る請求とが併合されている場合における本案請求に係る部分についてのみの受継又は続行命令の許否 4 訴訟当事者の一方が破産手続開始の決定を受け,破産債権である当該訴訟に係る請求権につき破産債権としての届出がないのに破産管財人に対して違法にされた続行命令の瑕疵が治癒されるとされた事例
(1につき)利息制限法(平成18年法律第115号による改正前のもの)1条1項 (2,3につき)民訴法260条2項 (2につき)破産法2条5項 (3,4につき)民訴法129条 (3につき)民訴法124条,民訴法136条 (4につき)破産法100条1項,破産法111条1項,破産法220条
判旨
継続的な借入れと弁済を繰り返す基本契約において、過払金が発生している状態で新たな借入れがされた場合、利息制限法1条1項の「元本」額は、新たな借入金に過払金を充当した後の残額をいう。これにより、制限利率の判定基準となる元本額も、充当後の金額を基準として判断される。
問題の所在(論点)
過払金が発生している状態で新たな借入れが行われた場合、利息制限法1条1項の制限利率の基準となる「元本」の額をどのように解釈すべきか。
事件番号: 平成21(受)955 / 裁判年月日: 平成22年4月20日 / 結論: 破棄差戻
1 継続的な金銭消費貸借取引に関する基本契約に基づいて金銭の借入れと弁済が繰り返され,同契約に基づく債務の弁済がその借入金全体に対して行われる場合における利息制限法1条1項にいう「元本」の額は,各借入れの時点における従前の借入金残元本と新たな借入金との合計額をいい,従前の借入金残元本の額は,弁済金のうち制限超過部分があ…
規範
継続的な金銭消費貸借取引に関する基本契約に基づき、債務の弁済が借入金全体に対して行われる場合において、過払金が発生している時点で新たな借入れがされたときの利息制限法1条1項にいう「元本」の額は、新たな借入金に上記過払金を充当した後の額をいうものと解する。
重要事実
債務者は、貸金業者との間で継続的な金銭消費貸借に係る基本契約を締結し、制限利率を超える利息で借入れと弁済を繰り返していた(本件取引)。本件取引において、平成8年8月26日時点で24万1426円の過払金が発生していたところ、同日、新たに100万円の借入れがなされた。原審は、この「元本」を新たな借入金そのものの額(100万円)と判断し、制限利率を年1割5分とした。これに対し、上告人(業者側)は、過払金を充当した後の額(75万8574円)が元本であり、制限利率は年1割8分であると主張して上告した。
あてはめ
本件取引では、弁済が借入金全体に対して行われる合意があるため、過払金が存在する状態で新たな借入れがあれば、当然にその過払金が新債務に充当される。平成8年8月26日の借入れ時点において、過払金24万1426円が存在していた以上、これを新たな借入金100万円に充当した後の額である75万8574円が同法上の「元本」となる。この金額は100万円未満であるから、同条項に基づき、以降の取引に適用される制限利率は年1割8分(10万円以上100万円未満の区分)と解される。したがって、100万円そのものを元本として制限利率を年1割5分とした原審の判断は、法令の解釈を誤ったものである。
結論
過払金充当後の金額を元本として制限利率を判定すべきであり、原判決中本件取引に関する部分は破棄を免れない。本件を原審に差し戻す。
実務上の射程
過払金返還請求訴訟における引き直し計算の基本ルールを示す射程の長い判例である。答案上は、制限利率(15%・18%・20%)の境界線付近で新たな借入れが行われた場合に、過払金の存在によって「元本のランク」が下がり、適用される制限利率が上がる(業者側に有利に働く)可能性がある点に注意して使用する。
事件番号: 平成18(受)2268 / 裁判年月日: 平成20年1月18日 / 結論: 破棄差戻
1 同一の貸主と借主との間で継続的に金銭の貸付けとその弁済が繰り返されることを予定した基本契約が締結され,この基本契約に基づく取引に係る債務について利息制限法1条1項所定の利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当すると過払金が発生するに至ったが,その後に改めて金銭消費貸借に係る基本契約が締結され,この基…
事件番号: 平成22(受)1784 / 裁判年月日: 平成23年7月7日 / 結論: 破棄差戻
貸金業者が貸金債権を一括して他の貸金業者に譲渡する旨の合意をした場合において,上記債権を譲渡した業者の有する資産のうち何が譲渡の対象であるかは,上記合意の内容いかんにより,それが営業譲渡の性質を有するときであっても,借主との間の金銭消費貸借取引に係る契約上の地位が上記債権を譲り受けた業者に当然に移転する,あるいは,当該…
事件番号: 平成18(受)1534 / 裁判年月日: 平成19年7月19日 / 結論: 棄却
同一の貸主と借主の間で基本契約を締結せずにされた多数回の金銭の貸付けが,1度の貸付けを除き,従前の貸付けの切替え及び貸増しとして長年にわたり反復継続して行われており,その1度の貸付けも,前回の返済から期間的に接着し,前後の貸付けと同様の方法と貸付条件で行われたものであり,上記各貸付けは1個の連続した貸付取引と解すべきも…