同一の貸主と借主との間でカードを利用して継続的に金銭の貸付けとその返済が繰り返されることを予定した基本契約が締結されており,同契約には,毎月の返済額は前月における借入金債務の残額の合計を基準とする一定額に定められ,利息は前月の支払日の返済後の残元金の合計に対する当該支払日の翌日から当月の支払日までの期間に応じて計算するなどの条項があって,これに基づく債務の弁済が借入金の全体に対して行われるものと解されるという事情の下においては,上記基本契約は,同契約に基づく借入金債務につき利息制限法1条1項所定の制限を超える利息の弁済により過払金が発生した場合には,弁済当時他の借入金債務が存在しなければ上記過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含んでいるものと解するのが相当である。
カードの利用による継続的な金銭の貸付けを予定した基本契約が同契約に基づく借入金債務につき利息制限法所定の制限を超える利息の弁済により過払金が発生した場合には弁済当時他の借入金債務が存在しなければこれをその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含むものと解された事例
民法488条,利息制限法1条1項
判旨
継続的な金銭消費貸借取引において、基本契約に基づき制限超過利息が元本に充当され過払金が発生した場合、当該過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意が含まれていると解するのが相当である。
問題の所在(論点)
利息制限法1条1項所定の制限額を超えて支払われた過払金につき、弁済当時に他の借入金債務が存在しなかった場合、その後に発生した新たな借入金債務に当然に充当されるか。また、そのための合意を認定できるか。
規範
同一の貸主と借主間で基本契約に基づき継続的に貸付けが繰り返される場合、制限超過部分の元本充当により発生した過払金は、特段の事情のない限り弁済当時存在する他の借入金債務に充当される。さらに、弁済当時に他の債務が存在しない場合であっても、基本契約が「各借入金全体に対して弁済を行う」ことを予定している内容(借入限度額内での反復、一括口座振替、全体残高基準の返済額設定等)であれば、当該過払金を将来発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意が含まれていると解すべきである。
事件番号: 平成18(受)1534 / 裁判年月日: 平成19年7月19日 / 結論: 棄却
同一の貸主と借主の間で基本契約を締結せずにされた多数回の金銭の貸付けが,1度の貸付けを除き,従前の貸付けの切替え及び貸増しとして長年にわたり反復継続して行われており,その1度の貸付けも,前回の返済から期間的に接着し,前後の貸付けと同様の方法と貸付条件で行われたものであり,上記各貸付けは1個の連続した貸付取引と解すべきも…
重要事実
貸金業者である上告人と被上告人は、クレジットカード(本件基本契約1)およびローンカード(本件基本契約2)の各基本契約を締結した。各契約は、限度額内での反復借入、口座振替による一括返済、残高スライド方式等を定めていた。被上告人は約12年間にわたり各契約に基づき貸付けと返済を繰り返したが、利息制限法を上回る利率の支払により過払金が発生。被上告人は、発生した過払金がその後の新たな貸借に充当されるべきであると主張して不当利得返還を求めた。
あてはめ
本件各基本契約では、会員が限度額内で1万円単位で反復して借入れを行い、返済は指定口座からの口座振替により、前月の借入残高合計を基準とした一定額を支払う形式であった。この仕組みは、個別の貸付けと弁済を対応させるものではなく、基本契約に基づく借入金全体に対して弁済を行う性質を持つ。したがって、当事者間には過払金を将来の債務に充当する旨の合意があったと解するのが相当であり、弁済時に他の債務がなくとも、その後の貸付け債務に過払金が充当される結果、過払金の額が算定される。
結論
過払金は、その後に発生した新たな借入金債務に充当される。原審が不当利得返還請求を一部認容した判断は正当である。
実務上の射程
リボルビング方式等の基本契約に基づく一連の取引(一連性)が認められる場合、中間に借入残高がゼロになる期間があっても、過払金が将来の債務に自動的に充当されることを肯定した。これにより不当利得返還請求権の消滅時効の起算点が「取引終了時」となるなど、実務上の過払金計算に決定的な影響を与える判例である。
事件番号: 平成22(受)1983 / 裁判年月日: 平成25年4月11日 / 結論: 破棄差戻
継続的な金銭消費貸借取引に係る基本契約が過払金充当合意(過払金発生当時他の借入金債務が存在しなければ過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意)を含む場合には,別段の合意があると評価できるような特段の事情がない限り,まず過払金について発生した民法704条前段所定の利息を新たな借入金債務に充当し,次いで過…
事件番号: 平成18(受)2268 / 裁判年月日: 平成20年1月18日 / 結論: 破棄差戻
1 同一の貸主と借主との間で継続的に金銭の貸付けとその弁済が繰り返されることを予定した基本契約が締結され,この基本契約に基づく取引に係る債務について利息制限法1条1項所定の利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当すると過払金が発生するに至ったが,その後に改めて金銭消費貸借に係る基本契約が締結され,この基…
事件番号: 平成20(受)468 / 裁判年月日: 平成21年1月22日 / 結論: 棄却
継続的な金銭消費貸借取引に関する基本契約が,借入金債務につき利息制限法1条1項所定の制限を超える利息の弁済により過払金が発生したときには,弁済当時他の借入金債務が存在しなければ上記過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含む場合は,上記取引により生じた過払金返還請求権の消滅時効は,特段の事情がない限…
事件番号: 平成21(受)1192 / 裁判年月日: 平成21年9月4日 / 結論: 棄却
いわゆる過払金充当合意(過払金発生当時他の借入金債務が存在しなければ過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意)を含む基本契約に基づく金銭消費貸借の借主が利息制限法所定の制限を超える利息の支払を継続したことにより過払金が発生した場合においても,悪意の受益者である貸主は過払金発生の時から民法704条前段所…