継続的な金銭消費貸借取引に関する基本契約が,借入金債務につき利息制限法1条1項所定の制限を超える利息の弁済により過払金が発生したときには,弁済当時他の借入金債務が存在しなければ上記過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含む場合は,上記取引により生じた過払金返還請求権の消滅時効は,特段の事情がない限り,上記取引が終了した時から進行する。
継続的な金銭消費貸借取引に関する基本契約が,利息制限法所定の制限を超える利息の弁済により発生した過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含む場合における,上記取引により生じた過払金返還請求権の消滅時効の起算点
民法166条1項,民法703条,利息制限法1条1項
判旨
過払金充当合意を含む継続的な金銭消費貸借取引における過払金返還請求権の消滅時効は、特段の事情がない限り、取引が終了した時点から進行する。
問題の所在(論点)
過払金充当合意を含む継続的取引において、過払金返還請求権の消滅時効の起算点(民法166条1項)をいつと解すべきか。
規範
過払金充当合意を含む基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引においては、取引継続中は当該合意が法律上の障害となり過払金返還請求権の行使を妨げるため、同請求権の消滅時効は、行使について異なる合意があるなどの特段の事情がない限り、取引が終了した時点から進行する。
重要事実
貸金業者である上告人と借主である被上告人は、昭和57年から平成17年にかけて、1個の基本契約に基づき継続的に借入れと返済を繰り返していた。この基本契約には、制限超過利息により過払金が発生した場合、これをその後の借入金債務に充当する旨の合意(過払金充当合意)が含まれていた。上告人は、一部の過払金について発生時から10年が経過し消滅時効が完成したと主張した。
事件番号: 平成20(受)1170 / 裁判年月日: 平成21年3月6日 / 結論: 破棄自判
継続的な金銭消費貸借取引に関する基本契約が,借入金債務につき利息制限法1条1項所定の制限を超える利息の弁済により過払金が発生したときには,弁済当時他の借入金債務が存在しなければ上記過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含む場合は,上記取引により生じた過払金返還請求権の消滅時効は,特段の事情がない限…
あてはめ
過払金充当合意には、取引終了時まで過払金の返還を請求せず新たな借入金への充当に供するという趣旨が含まれる。借主が任意に取引を終了させ得るとしても、それをもって発生時から時効が進行すると解するのは、借主に取引終了を強いることになり合意の趣旨に反する。本件では特段の事情は認められず、最終の取引日である平成17年3月2日が起算点となる。
結論
取引終了時が消滅時効の起算点となるため、訴え提起時点で時効は完成しておらず、上告人の時効援用は認められない。
実務上の射程
利息制限法に基づく過払金返還請求の基本判例であり、取引が「一連」といえる場合には、個々の過払金発生時ではなく取引終了時を基準とする。複数の契約が介在する場合に取引の同一性(一連性)が認められるかどうかが、実務上の主たる争点となる。
事件番号: 平成18(受)2268 / 裁判年月日: 平成20年1月18日 / 結論: 破棄差戻
1 同一の貸主と借主との間で継続的に金銭の貸付けとその弁済が繰り返されることを予定した基本契約が締結され,この基本契約に基づく取引に係る債務について利息制限法1条1項所定の利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当すると過払金が発生するに至ったが,その後に改めて金銭消費貸借に係る基本契約が締結され,この基…
事件番号: 平成21(受)1192 / 裁判年月日: 平成21年9月4日 / 結論: 棄却
いわゆる過払金充当合意(過払金発生当時他の借入金債務が存在しなければ過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意)を含む基本契約に基づく金銭消費貸借の借主が利息制限法所定の制限を超える利息の支払を継続したことにより過払金が発生した場合においても,悪意の受益者である貸主は過払金発生の時から民法704条前段所…
事件番号: 平成23(受)122 / 裁判年月日: 平成24年9月11日 / 結論: 破棄差戻
同一の貸主と借主との間で無担保のリボルビング方式の金銭消費貸借に係る基本契約に基づく取引が続けられた後,改めて不動産に担保権を設定した上で確定金額に係る金銭消費貸借契約が締結された場合において,第2の契約に基づく借入金の一部が第1の契約に基づく約定残債務の弁済に充てられ,借主にはその残額のみが現実に交付されたこと,第1…