同一の貸主と借主との間で無担保のリボルビング方式の金銭消費貸借に係る基本契約に基づく取引が続けられた後,改めて不動産に担保権を設定した上で確定金額に係る金銭消費貸借契約が締結された場合において,第2の契約に基づく借入金の一部が第1の契約に基づく約定残債務の弁済に充てられ,借主にはその残額のみが現実に交付されたこと,第1の契約に基づく取引は長期にわたって継続しており,第2の契約が締結された時点では当事者間に他に債務を生じさせる契約がないことなどの事情があっても,当事者が第1の契約及び第2の契約に基づく各取引が事実上1個の連続した貸付取引であることを前提に取引をしていると認められる特段の事情がない限り,第1の契約に基づく取引により発生した過払金を第2の契約に基づく借入金債務に充当する旨の合意が存在すると解することはできない。 (補足意見がある。)
無担保のリボルビング方式の金銭消費貸借に係る基本契約に基づく取引により発生した過払金を不動産に担保権を設定した上で締結された確定金額に係る金銭消費貸借契約に基づく借入金債務に充当する旨の合意が存在すると解することの可否
民法488条,利息制限法(平成18年法律第115号による改正前のもの)1条1項
判旨
無担保のリボルビング方式による基本契約(第1契約)の後、不動産担保付の確定金額に係る金銭消費貸借契約(第2契約)が締結された場合、契約形態等の差異から原則として事実上の1個の連続した貸付取引とは評価されない。第1契約に基づく過払金を第2契約の債務に充当する合意を認めるには、両者が事実上1個の連続した貸付取引であることを前提に取引したといえる特段の事情を要する。
問題の所在(論点)
無担保リボルビング方式(第1契約)から不動産担保付確定額貸付(第2契約)へ切り替わった場合において、両取引を「事実上1個の連続した貸付取引」と評価し、第1契約による過払金を第2契約の債務に充当する合意を認めることができるか。また、これにより過払金返還請求権の消滅時効の起算点が第2契約の最終弁済時まで延びるか。
規範
同一の貸主と借主の間で基本契約が順次締結された場合、第1の契約に基づく過払金が第2の契約に基づく債務に充当されるには、特段の事情がない限り、両取引が「事実上1個の連続した貸付取引」と評価できることを要する。契約形態が「無担保・リボルビング方式」から「不動産担保付・確定額一括貸付・分割弁済方式」へ変更された場合、弁済の在り方を含む契約条件が大きく異なるため、原則として1個の連続した取引とは評価されない。充当合意を認めるには、契約解消の経緯やその後の取引実情に照らし、当事者が1個の連続した貸付取引であることを前提に取引していると認められる特段の事情が必要である。
事件番号: 平成18(受)2268 / 裁判年月日: 平成20年1月18日 / 結論: 破棄差戻
1 同一の貸主と借主との間で継続的に金銭の貸付けとその弁済が繰り返されることを予定した基本契約が締結され,この基本契約に基づく取引に係る債務について利息制限法1条1項所定の利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当すると過払金が発生するに至ったが,その後に改めて金銭消費貸借に係る基本契約が締結され,この基…
重要事実
借主は、昭和63年から貸主との間で無担保リボルビング方式の基本契約(本件第1契約)に基づき、約10年にわたり借入れと弁済を繰り返した。平成10年、貸主の勧めで不動産根抵当権を設定し、600万円を借り入れる金銭消費貸借契約(本件第2契約)を締結。第2契約の借入金の一部(約86万円)が第1契約の約定残債務の弁済に充てられ、第1契約の取引は終了した。その後、第2契約に基づく弁済が続けられた。第1契約を利息制限法に基づき引き直し計算すると、第2契約締結時に約112万円の過払金が発生していた。
あてはめ
本件第1契約は融資限度額内で借入れと弁済を繰り返すリボルビング方式であるのに対し、本件第2契約は不動産担保を設定し確定金額を貸し付けて分割弁済するもので、契約形態や条件が大きく異なる。第2契約締結後は同契約に基づく弁済のみが続けられている。第2契約の借入金で第1契約の残務を清算し、第1契約時に他に債務がなかった等の事情があっても、それらは切り替え時の一般的な状況に過ぎない。本件では、それ以上に当事者が両取引を1個の連続した取引として扱っていたという「特段の事情」は認められない。したがって、両取引は分断されており、充当合意は認められない。
結論
本件の両取引は事実上1個の連続した貸付取引とは評価できず、第1契約に基づく過払金は第2契約の債務に充当されない。その結果、第1契約に基づく過払金返還請求権は、第1契約終了時(平成10年)から進行する消滅時効の完成により消滅している。
実務上の射程
貸付形態が「リボ」から「証書貸付(不動産担保付等)」に変更された場合の取引の個数・連続性に関する判断基準を示した。司法試験上は、契約条件の差異(担保の有無、返済方式)を重視しつつ、借換の経緯や空白期間の有無に加え、「契約の性質の同一性」を厳格に検討する際の規範として用いる。
事件番号: 平成23(受)516 / 裁判年月日: 平成23年9月30日 / 結論: 破棄差戻
貸金業者Yとその完全子会社である貸金業者Aの顧客Xとが,金銭消費貸借取引に係る基本契約を締結し,この際,Xが,Aとの継続的な金銭消費貸借取引における約定利息を前提とする残債務相当額をYから借り入れ,これをAに弁済してAとの取引を終了させた場合において,次の(1)〜(3)など判示の事情の下では,XとYとは,上記基本契約の…
事件番号: 平成21(受)955 / 裁判年月日: 平成22年4月20日 / 結論: 破棄差戻
1 継続的な金銭消費貸借取引に関する基本契約に基づいて金銭の借入れと弁済が繰り返され,同契約に基づく債務の弁済がその借入金全体に対して行われる場合における利息制限法1条1項にいう「元本」の額は,各借入れの時点における従前の借入金残元本と新たな借入金との合計額をいい,従前の借入金残元本の額は,弁済金のうち制限超過部分があ…
事件番号: 平成22(受)1983 / 裁判年月日: 平成25年4月11日 / 結論: 破棄差戻
継続的な金銭消費貸借取引に係る基本契約が過払金充当合意(過払金発生当時他の借入金債務が存在しなければ過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意)を含む場合には,別段の合意があると評価できるような特段の事情がない限り,まず過払金について発生した民法704条前段所定の利息を新たな借入金債務に充当し,次いで過…
事件番号: 平成21(受)1192 / 裁判年月日: 平成21年9月4日 / 結論: 棄却
いわゆる過払金充当合意(過払金発生当時他の借入金債務が存在しなければ過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意)を含む基本契約に基づく金銭消費貸借の借主が利息制限法所定の制限を超える利息の支払を継続したことにより過払金が発生した場合においても,悪意の受益者である貸主は過払金発生の時から民法704条前段所…