同一の貸主と借主の間で基本契約を締結せずにされた多数回の金銭の貸付けが,1度の貸付けを除き,従前の貸付けの切替え及び貸増しとして長年にわたり反復継続して行われており,その1度の貸付けも,前回の返済から期間的に接着し,前後の貸付けと同様の方法と貸付条件で行われたものであり,上記各貸付けは1個の連続した貸付取引と解すべきものであるという判示の事情の下においては,各貸付けに係る金銭消費貸借契約は,各貸付けに基づく借入金債務につき利息制限法1条1項所定の制限を超える利息の弁済により過払金が発生した場合には,当該過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含んでいるものと解するのが相当である。
同一の貸主と借主の間で基本契約を締結せずに切替え及び貸増しとしてされた多数回の貸付けに係る金銭消費貸借契約が,利息制限法所定の制限を超える利息の弁済により発生した過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含むものと解された事例
民法488条,利息制限法1条1項
判旨
貸金業者と債務者との間で、長年にわたり同様の方法で反復継続して貸付けと借換えが行われ、1個の連続した貸付取引と認められる場合には、特段の事情がない限り、制限超過利息の支払により発生した過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意が含まれていると解するのが相当である。
問題の所在(論点)
利息制限法の制限を超える利息の支払によって発生した過払金が、その後に発生した新たな貸付金債務に充当されるか。特に、複数の貸付契約が形式上別個に存在する場合において、充当合意の存在を認めることができるか。
規範
制限超過利息の支払により発生した過払金が、その後に発生した別個の借入金債務に充当されるためには、当事者間にその旨の充当合意が存在することを要する。この合意の有無については、貸付けが1個の連続した貸付取引であるといえる場合、当事者は複数の権利関係が並存することを望まないのが通常であるから、特段の事情がない限り、過払金を新たな借入金債務に充当する旨の合意(充当合意)が含まれていると解するのが合理的である。
事件番号: 平成18(受)1666 / 裁判年月日: 平成19年7月17日 / 結論: その他
貸金業者が利息制限法1条1項所定の制限を超える利息を受領したが,その受領につき貸金業の規制等に関する法律43条1項の適用が認められないときは,当該貸金業者は,同項の適用があるとの認識を有しており,かつ,そのような認識を有するに至ったことについてやむを得ないといえる特段の事情がある場合でない限り,民法704条の「悪意の受…
重要事実
貸金業者である上告人は、債務者Aに対し、昭和61年頃から平成16年まで、制限超過利息を含む元利均等分割返済方式による貸付けと返済を繰り返していた。平成15年7月の貸付けを除き、いずれも従前の貸付金残額と追加貸付額を合計して新債務とする「借換え」の形式が取られ、即時の書面審査で反復継続されていた。平成15年7月の貸付けのみ、前回の完済から約3か月の空白期間があったが、貸付条件や方法は従前と同様であった。Aの破産管財人である被上告人が、過払金の返還を求めて提訴した。
あてはめ
本件各貸付けは、平成15年7月の貸付けを除き、従前の貸付けの切替え及び貸増しとして長年反復継続されており、実質的に1個の連続した貸付取引といえる。一時的に3か月の期間が空いた貸付けについても、前回の返済から期間的に接着しており、方法や条件も同一であることから、同様に連続した取引の一部と認められる。このような1個の連続した貸付取引においては、当事者が過払金を新たな債務に充当することを想定しているのが合理的であり、特段の事情がない限り、契約内容に過払金の充当合意が含まれていると評価できる。
結論
本件各貸付けは1個の連続した貸付取引であり、過払金をその後の新たな借入金債務に充当する旨の合意が含まれている。したがって、過払金は新たな債務に充当され、その残額について不当利得返還請求が認められる。
実務上の射程
貸金業者に対する過払金返還請求訴訟における「一連計算」の根拠となるリーディングケースである。答案上は、まず個別の貸付けが「1個の連続した取引」といえるかを、期間の接着性、貸付条件の同一性、契約締結の態様から認定し、次に本判例の規範を用いて「充当合意」を推認する、という二段構えの構成をとる際に使用する。
事件番号: 平成18(受)1887 / 裁判年月日: 平成19年6月7日 / 結論: その他
同一の貸主と借主との間でカードを利用して継続的に金銭の貸付けとその返済が繰り返されることを予定した基本契約が締結されており,同契約には,毎月の返済額は前月における借入金債務の残額の合計を基準とする一定額に定められ,利息は前月の支払日の返済後の残元金の合計に対する当該支払日の翌日から当月の支払日までの期間に応じて計算する…
事件番号: 平成18(受)2268 / 裁判年月日: 平成20年1月18日 / 結論: 破棄差戻
1 同一の貸主と借主との間で継続的に金銭の貸付けとその弁済が繰り返されることを予定した基本契約が締結され,この基本契約に基づく取引に係る債務について利息制限法1条1項所定の利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当すると過払金が発生するに至ったが,その後に改めて金銭消費貸借に係る基本契約が締結され,この基…
事件番号: 平成18(受)276 / 裁判年月日: 平成19年7月13日 / 結論: 破棄差戻
利息制限法1条1項所定の制限を超える利息を受領した貸金業者が,その預金口座への払込みを受けた際に貸金業の規制等に関する法律18条1項に規定する書面を債務者に交付していなかったために同法43条1項の適用を受けられない場合において,当該貸金業者が,事前に債務者に約定の各回の返済期日及び返済金額等を記載した償還表を交付してい…
事件番号: 平成22(受)1983 / 裁判年月日: 平成25年4月11日 / 結論: 破棄差戻
継続的な金銭消費貸借取引に係る基本契約が過払金充当合意(過払金発生当時他の借入金債務が存在しなければ過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意)を含む場合には,別段の合意があると評価できるような特段の事情がない限り,まず過払金について発生した民法704条前段所定の利息を新たな借入金債務に充当し,次いで過…