1 仮執行宣言付判決に対する上訴に伴い,金銭を供託する方法により担保を立てさせて強制執行の停止がされた後に,債務者につき更生手続開始の決定がされた場合,その被担保債権である損害賠償請求権は,更生担保権ではなく,更生債権に当たる。 2 仮執行宣言付判決に対する上訴に伴う強制執行の停止に当たって金銭を供託する方法により担保が立てられた場合,被供託者は,債務者につき更生計画認可の決定がされても,会社更生法203条2項にいう「更生会社と共に債務を負担する者に対して有する権利」として,供託金の還付請求権を行使することができる。
1 仮執行宣言付判決に対する上訴に伴い金銭を供託する方法により担保を立てさせて強制執行の停止がされた後に債務者につき更生手続開始の決定がされた場合における上記担保の被担保債権の性質 2 仮執行宣言付判決に対する上訴に伴う強制執行の停止に当たって金銭を供託する方法により担保が立てられた場合において債務者につき更生計画認可の決定がされた後であっても供託金の還付請求権を行使することの可否
(1,2につき)民訴法76条,民訴法77条,民訴法259条,民訴法403条1項,民訴法405条2項,民事執行法39条1項 (1につき)会社更生法2条8項,会社更生法2条10項 (2につき)会社更生法203条2項,会社更生法204条1項,供託法8条1項
判旨
仮執行免脱の担保として金銭が供託された場合、債務者の更生手続において被担保債権が失権しても、債権者は「更生会社と共に債務を負担する者に対して有する権利」として供託金還付請求権を行使できるため、担保事由は消滅しない。
問題の所在(論点)
仮執行免脱の担保を立てた債務者について更生計画認可決定がなされ、被担保債権が更生手続上失権した場合、民事訴訟法79条1項の「担保の事由が消滅した」といえるか。被供託者の還付請求権が更生手続の影響を受けるかが問題となる。
規範
1. 仮執行宣言付判決に対する強制執行停止のための担保(民訴法405条2項、77条)として供託された金銭について、被供託者が有する優先的弁済受領権は、会社更生法2条10項所定の「担保権」ではなく、還付請求権を通じた独占的履行確保の権利である。したがって、当該被担保債権(損害賠償請求権)は「更生債権」に当たる。 2. 民訴法が当該担保制度を設けた趣旨は、供託金を債務者の責任財産から切り離し、債務者の資力に関わらず損害補填を確実にする点にある。そうであれば、債務者の更生手続によって還付請求権が制約されるべきではない。 3. よって、更生計画認可により被担保債権が失権(責任免除)したとしても、被供託者は会社更生法203条2項の「更生会社と共に債務を負担する者に対して有する権利」と同様、供託所に対する還付請求権を行使でき、担保の事由は消滅しないと解する。
事件番号: 平成14(許)1 / 裁判年月日: 平成14年4月26日 / 結論: 破棄自判
仮執行宣言付判決に対する上訴に伴う強制執行の停止のために担保が立てられた場合において,債務者が破産宣告を受けたことの一事をもって,「担保の事由が消滅したこと」に該当するということはできない。
重要事実
債権者(抗告人)は、債務者(A)に対し不当利得返還請求訴訟を提起し、仮執行宣言付勝訴判決を得た。Aは控訴し、強制執行停止のために700万円の担保を供託した。その後、Aについて更生手続が開始。債権者は本案の債権については更生債権の届出をしたが、本件担保の被担保債権である損害賠償請求権については届出をしなかった。更生計画認可決定により、当該賠償請求権は失権した。Aの管財人(相手方)は、失権により被担保債権が消滅したとして、民訴法79条1項の「担保の事由が消滅したとき」に該当すると主張し、担保取消しを申し立てた。
あてはめ
本件担保制度の趣旨に照らせば、供託金は債務者の責任財産から分離されており、債権者の利益を確保すべきである。本件の被担保債権である損害賠償請求権は更生担保権ではないが、更生計画認可後も会社更生法203条2項の趣旨を及ぼすべきである。具体的には、管財人を被告とする還付請求権確認訴訟の確定判決等を得ることで、更生手続外での還付が可能である。したがって、被担保債権が失権したという事実のみをもって、直ちに担保の事由が消滅したとはいえない。
結論
担保の事由が消滅したとは認められないため、担保取消しの申立ては却下されるべきである。
実務上の射程
会社更生手続における「失権」が、民訴法上の担保取消事由に直結しないことを示した。答案上は、担保制度の「責任財産からの分離」という実質的趣旨を重視する構成をとる際に引用する。また、担保取消しの要件充足性を判断する際の「担保事由の消滅」の意義を厳格に解する例としても重要である。
事件番号: 平成13(許)21 / 裁判年月日: 平成13年12月13日 / 結論: 棄却
仮執行宣言付判決に対する上訴に伴い担保を立てさせて強制執行の停止又は既にした執行処分の取消しがされた場合において,債務者が破産宣告を受けたことの一事をもって,「担保の事由が消滅したこと」に該当するということはできない。
事件番号: 昭和24(ク)85 / 裁判年月日: 昭和25年3月14日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告に関して裁判権を有するのは、訴訟法において特に認められた場合に限定され、民事事件においては憲法違反の判断を不当とする特別抗告のみが許容される。 第1 事案の概要:抗告人が、原決定に対して最高裁判所へ抗告を申し立てた事案。抗告人が主張した抗告理由は、憲法違反に関する判断を不当とするも…
事件番号: 平成14(許)32 / 裁判年月日: 平成15年3月14日 / 結論: 棄却
支払保証委託契約を締結する方法により強制執行停止の担保を立てた場合において,委託者が同契約締結の際にした定期預金の払戻請求権に対して転付命令を得た同契約の当事者以外の第三者は,当該担保の取消しの申立てをすることができない。
事件番号: 昭和42(行ツ)13 / 裁判年月日: 昭和43年6月21日 / 結論: 棄却
仮執行宣言付判決による仮執行の免脱のために供された担保は、その判決の確定に至るまで、勝訴原告が仮執行をすることができなかつたことによつて被ることのあるべき損害のみを担保し、本案の請求までも担保するものではない。