仮執行宣言付判決による仮執行の免脱のために供された担保は、その判決の確定に至るまで、勝訴原告が仮執行をすることができなかつたことによつて被ることのあるべき損害のみを担保し、本案の請求までも担保するものではない。
仮執行免脱のための担保の性質
民訴法196条,民訴法198条2項
判旨
仮執行免脱の宣言に付される担保は、判決確定まで仮執行ができなかったことにより勝訴原告が被る損害のみを担保し、本案請求それ自体を担保するものではない。
問題の所在(論点)
民事訴訟法上の仮執行免脱の宣言(旧民訴法197条、現行民訴法259条3項)に基づき供えられた担保の被担保債権の範囲に、本案の請求権(主文の給付債権等)それ自体が含まれるか。
規範
仮執行免脱の宣言制度は、判決確定前の執行を認める原告と、損害を被る被告との利害を調整するものである。したがって、免脱のために提供される担保は、免脱によって執行が遅延したことによる損害(利息や遅延損害金相当額等)を補填する性質のものであり、本案請求権そのものの履行を保証する性質(支払担保)ではない。
重要事実
本件は、勝訴原告(上告人)が、被告側の提供した仮執行免脱のための担保に対し、本案請求そのものの債権に基づいて権利行使(還付等)を求めた事案。原審が「本案の請求それ自体は担保されない」としてこれを却下したため、上告人がその法的解釈を争って上告した。
事件番号: 昭和56(行ツ)83 / 裁判年月日: 昭和59年11月26日 / 結論: 棄却
供託申請についての供託官の審査権限は、供託書及び添付書類のみに基づいてするいわゆる形式的審査の範囲にとどまるが、その審査の対象は、手続的要件に限られるものではなく、供託原因の存否等の実体的要件にも及ぶ。
あてはめ
仮執行免脱の宣言の趣旨は、判決未確定の間における当事者間の利害調整にある。被告が担保を供して仮執行を免脱した場合、原告は確定まで執行を待たされることになる。この「待機期間」に生じ得る損害が填補されれば調整として十分であり、確定判決による満足そのものまでを担保の対象とすることは、制度の本来の目的を超えると評価される。
結論
仮執行免脱の担保は、本案の請求それ自体を担保するものではない。したがって、本案請求権に基づき当然に当該担保から優先弁済を受けることは認められない。
実務上の射程
仮執行免脱の担保だけでなく、仮執行の宣言を付す際に原告が供する担保についても同様の理が働き、執行によって被告が被る損害のみを担保すると解される。司法試験の実務基礎や民訴法においては、担保取消しの要件(権利行使催告)や、何について「損害」として賠償請求できるかを検討する際の基礎となる判例である。
事件番号: 平成10(行ツ)22 / 裁判年月日: 平成13年11月27日 / 結論: 棄却
1 弁済供託における供託金取戻請求権の消滅時効は,過失なくして債権者を確知することができないことを原因とする弁済供託の場合を含め,供託者が免責の効果を受ける必要が消滅した時から進行する。 2 過失なくして債権者を確知することができないことを原因として賃料債務についてされた弁済供託につき,同債務の各弁済期の翌日から民法1…
事件番号: 平成24(許)15 / 裁判年月日: 平成25年4月26日 / 結論: 破棄自判
1 仮執行宣言付判決に対する上訴に伴い,金銭を供託する方法により担保を立てさせて強制執行の停止がされた後に,債務者につき更生手続開始の決定がされた場合,その被担保債権である損害賠償請求権は,更生担保権ではなく,更生債権に当たる。 2 仮執行宣言付判決に対する上訴に伴う強制執行の停止に当たって金銭を供託する方法により担保…
事件番号: 平成12(受)194 / 裁判年月日: 平成13年11月22日 / 結論: 破棄自判
甲が乙に対する金銭債務の担保として,甲の丙に対する既に生じ,又は将来生ずべき債権を一括して乙に譲渡することとし,乙が丙に対して担保権実行として取立ての通知をするまでは甲に譲渡債権の取立てを許諾し,甲が取り立てた金銭について乙への引渡しを要しないとの内容のいわゆる集合債権を対象とした譲渡担保契約において,同契約に係る債権…
事件番号: 平成19(受)1280 / 裁判年月日: 平成21年3月27日 / 結論: 破棄自判
譲渡禁止の特約に反して債権を譲渡した債権者が同特約の存在を理由に譲渡の無効を主張することは,債務者にその無効を主張する意思があることが明らかであるなどの特段の事情がない限り,許されない。