甲が乙に対する金銭債務の担保として,甲の丙に対する既に生じ,又は将来生ずべき債権を一括して乙に譲渡することとし,乙が丙に対して担保権実行として取立ての通知をするまでは甲に譲渡債権の取立てを許諾し,甲が取り立てた金銭について乙への引渡しを要しないとの内容のいわゆる集合債権を対象とした譲渡担保契約において,同契約に係る債権の譲渡を第三者に対抗するには,指名債権譲渡の対抗要件の方法によることができる。
金銭債務の担保として既発生債権及び将来債権を一括して譲渡するいわゆる集合債権譲渡担保契約における債権譲渡の第三者に対する対抗要件
民法369条(譲渡担保),民法467条2項
判旨
集合債権を対象とした譲渡担保契約において、債権は譲受人に確定的に帰属し、譲渡人が有する取立権限は特約により付与されたものにすぎない。したがって、民法467条2項に基づく通知により第三者対抗要件を具備でき、譲受人からの別途通知があるまで譲渡人への弁済を認める記載があっても通知の効力は妨げられない。
問題の所在(論点)
集合債権譲渡担保において、実行通知があるまで譲渡人に取立権限を認め、債務者に対しても同様の指示を含む通知がなされた場合、当該通知は民法467条2項の対抗要件としての効力を有するか。債権の移転が確定的といえるかが問題となる。
規範
1. 集合債権譲渡担保契約により、対象債権は譲受人に確定的に移転する。譲受人が担保権実行通知をするまで譲渡人に取立権限を留保する旨の合意は、譲受人に帰属した債権の一部について、特約により譲渡人に取立権限を付与し、受領金の引渡しを免除したものと解すべきである。 2. かかる債権譲渡について、民法467条2項の対抗要件を具備することは可能であり、その通知において債務者に対し譲渡人の取立権限行使への協力を依頼する記載(例:実行通知までは譲渡人に弁済されたい等)が含まれていても、対抗要件としての効力は妨げられない。
重要事実
事件番号: 平成5(オ)1164 / 裁判年月日: 平成9年6月5日 / 結論: 棄却
譲渡禁止の特約のある指名債権について、譲受人が特約の存在を知り、又は重大な過失により特約の存在を知らないでこれを譲り受けた場合でも、その後、債務者が債権の譲渡について承諾を与えたときは、債権譲渡は譲渡の時にさかのぼって有効となるが、民法一一六条の法意に照らし、第三者の権利を害することはできない。
債権者Dは、上告人に対し、債務者Fとの将来の継続的取引に基づく売掛債権等を一括して譲渡する譲渡担保設定契約を締結した。同契約では、上告人が実行通知を出すまではDが取立てを行える旨が約定された。DはFに対し、確定日付のある書面で、譲渡担保権の設定事実と「上告人からの実行通知があるまではDに弁済し、通知後は上告人に弁済されたい」旨を通知した(本件通知)。その後、Dが不渡りを出し上告人が実行通知を行う前後に、被上告人(国)が本件債権を差し押さえた。
あてはめ
本件契約は、発生原因や期間で特定された債権を一括して確定的に譲渡するものであり、債権は上告人に移転している。本件通知中の「別途の通知があるまではDに支払うよう依頼する」旨の記載は、上告人が自己に帰属する債権についてDに取立権限を付与したことに伴い、債務者Fの便宜を図ったものにすぎない。この記載があるからといって、債権が確定的に上告人に移転した事実の通知であるとの性質が失われるものではなく、第三者である被上告人らに対しても対抗力を有するといえる。
結論
本件通知は民法467条2項の通知として有効であり、上告人は後着の差押債権者である被上告人らに対し、本件債権の譲受を対抗できる。したがって、上告人は供託金の還付請求権を有する。
実務上の射程
集合債権譲渡担保における「対抗要件具備の時点」を明確にした判例である。実務上、実行通知(取立権限の剥奪)を停止条件とする「債権移転の構成」ではなく、「確定的な移転+取立権限の許諾」という構成を採ることで、設定当初の通知により第三者への優先権を確保できることを示した。答案では、債権の特定性と対抗要件の有効性を論じる際にセットで使用する。
事件番号: 平成14(受)240 / 裁判年月日: 平成14年10月10日 / 結論: 棄却
債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律2条1項に規定する債権譲渡登記に譲渡債権の発生年月日の始期(平成10年法務省告示第295号3(5)の項番24)は記録されているがその終期(同項番25)が記録されていない場合には,当該債権譲渡登記に係る債権譲渡が数日にわたって発生した債権を目的とするものであったとしても,…
事件番号: 平成7(オ)514 / 裁判年月日: 平成10年3月24日 / 結論: 棄却
建物の賃料債権の差押えの効力が発生した後に、建物が譲渡され賃貸人の地位が譲受人に移転したとしても、譲受人は、建物の賃料債権を取得したことを差押債権者に対抗することができない。
事件番号: 平成9(オ)219 / 裁判年月日: 平成11年1月29日 / 結論: 破棄自判
一 将来発生すべき債権を目的とする債権譲渡契約の締結時において目的債権の発生の可能性が低かったことは、右契約の効力を当然には左右しない。 二 医師が社会保険診療報酬支払基金から将来八年三箇月の間に支払を受けるべき各月の診療報酬債権の一部を目的として債権譲渡契約を締結した場合において、右医師が債務の弁済のために右契約を締…
事件番号: 昭和42(オ)271 / 裁判年月日: 昭和42年7月6日 / 結論: 棄却
本件乙第一号証は、株式会社D組がa村に対して有する工事代金の内金五二六、〇〇〇円の債権を被上告会社に譲渡するにつきa村村長が右債権譲渡を承諾する文言と承諾した日附を記入した債権譲渡契約書であるというのであるから、右文書の日附は民法施行法第五条第五号の確定日附にあたる。