建物の賃料債権の差押えの効力が発生した後に、建物が譲渡され賃貸人の地位が譲受人に移転したとしても、譲受人は、建物の賃料債権を取得したことを差押債権者に対抗することができない。
建物の賃料債権の差押えの効力が発生した後に建物を譲り受けた者が賃貸人の地位の移転に伴う賃料債権の取得を差押債権者に対抗することの可否
民事執行法145条,民事執行法151条
判旨
賃貸用建物の所有者が賃料債権を差し押さえられた後に当該建物を第三者に譲渡した場合、建物の譲受人は、差押債権者に対し、賃料債権を取得したことを対抗できない。
問題の所在(論点)
賃料債権の差押え後に建物所有権が移転し賃貸人の地位が承継された場合、建物の譲受人は差押債権者に対して賃料債権の取得を対抗できるか。差押えの効力と賃貸人の地位の承継に伴う債権移転の関係が問題となる。
規範
賃料債権の差押えの効力が発生した後に、建物の所有権が譲渡され賃貸人の地位が移転した場合、建物の譲受人は賃料債権の取得を差押債権者に対抗できない。なぜなら、差押えは建物の所有権自体の処分を妨げないが、その効力は将来収受すべき賃料債権(民事執行法151条)に及ぶため、建物譲渡に伴う賃料債権の帰属変更は、将来の賃料債権の処分を禁止する差押えの効力に抵触するからである。
重要事実
建物所有者Dの債権者である被上告人は、Dが賃借人4名に対して有する本件建物の賃料債権を差し押さえ、その効力が発生した。その後、Dは本件建物を上告人に譲渡した。上告人は賃貸人の地位を承継したことを理由に、差し押さえられた賃料債権の取得を被上告人(差押債権者)に主張した。
事件番号: 平成5(オ)1164 / 裁判年月日: 平成9年6月5日 / 結論: 棄却
譲渡禁止の特約のある指名債権について、譲受人が特約の存在を知り、又は重大な過失により特約の存在を知らないでこれを譲り受けた場合でも、その後、債務者が債権の譲渡について承諾を与えたときは、債権譲渡は譲渡の時にさかのぼって有効となるが、民法一一六条の法意に照らし、第三者の権利を害することはできない。
あてはめ
本件において、被上告人による賃料債権の差押えの効力は、建物所有者Dに譲渡がなされる前に既に発生していた。この差押えの効力は、被上告人の債権額等の限度で将来の賃料債権に及んでいる。Dから上告人への建物譲渡は賃貸人の地位の移転を伴うが、これは同時に賃料債権の帰属の変更を伴うものである。したがって、この譲渡行為は、将来の賃料債権の処分を禁止する差押えの効力に抵触すると評価される。ゆえに、上告人は被上告人に対し、建物譲受を理由とした賃料債権の取得を対抗し得ない。
結論
上告人は、差押債権者である被上告人に対して、本件建物の賃料債権を取得したことを対抗することができない。
実務上の射程
建物の所有権移転に伴う賃貸人の地位の移転(民法605条の2第1項)があっても、先行する賃料債権の差押えによる処分禁止効が優先することを明確にした判例である。債権執行と不動産譲渡が競合した際の処理基準として重要であり、答案では「処分禁止効の抵触」をキーワードに論じるべきである。
事件番号: 平成12(受)194 / 裁判年月日: 平成13年11月22日 / 結論: 破棄自判
甲が乙に対する金銭債務の担保として,甲の丙に対する既に生じ,又は将来生ずべき債権を一括して乙に譲渡することとし,乙が丙に対して担保権実行として取立ての通知をするまでは甲に譲渡債権の取立てを許諾し,甲が取り立てた金銭について乙への引渡しを要しないとの内容のいわゆる集合債権を対象とした譲渡担保契約において,同契約に係る債権…
事件番号: 平成14(受)240 / 裁判年月日: 平成14年10月10日 / 結論: 棄却
債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律2条1項に規定する債権譲渡登記に譲渡債権の発生年月日の始期(平成10年法務省告示第295号3(5)の項番24)は記録されているがその終期(同項番25)が記録されていない場合には,当該債権譲渡登記に係る債権譲渡が数日にわたって発生した債権を目的とするものであったとしても,…
事件番号: 昭和56(オ)927 / 裁判年月日: 昭和59年2月2日 / 結論: 破棄自判
先取特権者は、債務者が破産宣告を受けた場合であつても、目的債権を差し押えて物上代位権を行使することができる。
事件番号: 昭和63(オ)1526 / 裁判年月日: 平成5年3月30日 / 結論: その他
一 同一の債権について、差押通知と確定日付のある譲渡通知との第三債務者への到達の先後関係が不明である場合、差押債権者と債権譲受人とは、互いに自己が優先的地位にある債権者であると主張することができない。 二 同一の債権について、差押通知と確定日付のある譲渡通知との第三債務者への到達の先後関係が不明であるため、第三債務者が…