先取特権者は、債務者が破産宣告を受けた場合であつても、目的債権を差し押えて物上代位権を行使することができる。
債務者が破産宣告を受けた場合と先取特権者の物上代位権
民法304条1項但書,破産法92条
判旨
動産売買先取特権者は、債務者が破産手続開始の決定(旧破産宣告)を受けた後であっても、物上代位の目的となる債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる。
問題の所在(論点)
債務者が破産手続開始の決定を受けたことは、民法304条1項但書にいう「払渡又は引渡」に該当し、先取特権者はもはや物上代位権を行使できなくなるのか。破産管財人を「払渡」を受けたのと同様の第三者として保護すべきかが問われた。
規範
民法304条1項但書が「払渡又は引渡」前の差し押さえを要する趣旨は、債権の特定性を保持して物上代位権の効力を保全するとともに、第三者が不測の損害を被ることを防止する点にある。一般債権者による差し押さえがあったにすぎない場合は、依然として物上代位権の行使は妨げられない。破産手続開始の決定は、破産者の財産に対する管理処分権を剥奪し破産管財人に帰属させる効果をもたらすが、財産の所有権が移転するものではないため、一般債権者による差し押さえと区別すべき理由はない。したがって、破産手続開始後であっても物上代位権の行使は可能である。
重要事実
上告人は、破産会社に対し工作機械を売却したが、代金債権の一部が未払いであった。破産会社はこの機械を第三者Dに転売し、転売代金債権を有していた。その後、破産会社は破産宣告(現:破産手続開始決定)を受け、被上告人が破産管財人に選任された。上告人は、破産宣告後に、動産売買先取特権に基づき、破産会社がDに対して有する転売代金債権の一部について差し押さえ・転付命令を得た。Dは債権者不確知を理由に当該代金を供託したため、破産管財人と上告人の間で供託金還付請求権の帰属が争われた。
事件番号: 昭和63(オ)1526 / 裁判年月日: 平成5年3月30日 / 結論: その他
一 同一の債権について、差押通知と確定日付のある譲渡通知との第三債務者への到達の先後関係が不明である場合、差押債権者と債権譲受人とは、互いに自己が優先的地位にある債権者であると主張することができない。 二 同一の債権について、差押通知と確定日付のある譲渡通知との第三債務者への到達の先後関係が不明であるため、第三債務者が…
あてはめ
本件において、上告人が動産売買先取特権の対象である転売代金債権を差し押さえたのは破産宣告後であった。しかし、破産宣告の効果は管理処分権の管財人への移転と個別的権利行使の禁止にとどまり、所有権が譲渡されたわけではない。これは一般債権者が差し押さえ命令を取得した状態と実質的に異ならない。したがって、民法304条1項但書の制限には抵触せず、上告人による差し押さえは有効であり、特定性は保持されているといえる。また、破産管財人は不測の損害を被る第三者には当たらないため、上告人は優先権を対抗できる。
結論
先取特権者は債務者の破産宣告後であっても物上代位権を行使できる。したがって、本件供託金の還付請求権は上告人に帰属する。
実務上の射程
本判決は、抵当権の物上代位(民法372条・304条)にも射程が及ぶ。破産手続において先取特権や抵当権は「別除権」として扱われること(破産法65条)と整合しており、答案では「払渡」の意義を検討する際、破産管財人が対抗問題における第三者に準ずる存在ではないことを強調する根拠として用いる。
事件番号: 平成19(受)1280 / 裁判年月日: 平成21年3月27日 / 結論: 破棄自判
譲渡禁止の特約に反して債権を譲渡した債権者が同特約の存在を理由に譲渡の無効を主張することは,債務者にその無効を主張する意思があることが明らかであるなどの特段の事情がない限り,許されない。
事件番号: 平成12(受)194 / 裁判年月日: 平成13年11月22日 / 結論: 破棄自判
甲が乙に対する金銭債務の担保として,甲の丙に対する既に生じ,又は将来生ずべき債権を一括して乙に譲渡することとし,乙が丙に対して担保権実行として取立ての通知をするまでは甲に譲渡債権の取立てを許諾し,甲が取り立てた金銭について乙への引渡しを要しないとの内容のいわゆる集合債権を対象とした譲渡担保契約において,同契約に係る債権…
事件番号: 平成5(オ)1164 / 裁判年月日: 平成9年6月5日 / 結論: 棄却
譲渡禁止の特約のある指名債権について、譲受人が特約の存在を知り、又は重大な過失により特約の存在を知らないでこれを譲り受けた場合でも、その後、債務者が債権の譲渡について承諾を与えたときは、債権譲渡は譲渡の時にさかのぼって有効となるが、民法一一六条の法意に照らし、第三者の権利を害することはできない。
事件番号: 平成7(オ)514 / 裁判年月日: 平成10年3月24日 / 結論: 棄却
建物の賃料債権の差押えの効力が発生した後に、建物が譲渡され賃貸人の地位が譲受人に移転したとしても、譲受人は、建物の賃料債権を取得したことを差押債権者に対抗することができない。