譲渡禁止の特約のある指名債権について、譲受人が特約の存在を知り、又は重大な過失により特約の存在を知らないでこれを譲り受けた場合でも、その後、債務者が債権の譲渡について承諾を与えたときは、債権譲渡は譲渡の時にさかのぼって有効となるが、民法一一六条の法意に照らし、第三者の権利を害することはできない。
譲渡禁止の特約のある指名債権の譲渡後にされた債務者の譲渡についての承諾と債権譲渡の第三者に対する効力
民法116条,民法466条
判旨
譲渡禁止特約に反する債権譲渡について、譲受人が悪意または重過失であっても債務者の事後承諾により遡及的に有効となるが、その遡及効をもって承諾前に差押えをした第三者に対抗することはできない。
問題の所在(論点)
譲渡禁止特約に反する債権譲渡について、債務者が事後承諾をした場合の遡及効(民法116条の類推適用)は、承諾前に債権を差し押さえた第三者に対抗できるか。
規範
譲渡禁止特約のある指名債権を、譲受人が特約の存在につき悪意または重過失で譲り受けた場合、その時点では有効に債権を取得できない。その後、債務者が譲渡に承諾を与えたときは、民法116条の法意に照らし、譲渡の時にさかのぼって有効となる。しかし、この遡及効によって、承諾前に債権を差し押さえた第三者等の権利を害することはできない。
重要事実
DはEに対し譲渡禁止特約付の売掛代金債権を有していた。上告人は特約につき悪意または重過失でDから本件債権を譲り受け、DはEに通知した。その後、承諾が得られる前に、F社会保険事務所長およびH税務署長(被上告人側)が本件債権を滞納処分により差し押さえた。差押えの後に、債務者Eは本件譲渡を承諾した。上告人は、承諾の遡及効により差押債権者に対抗できると主張して争った。
事件番号: 平成12(受)194 / 裁判年月日: 平成13年11月22日 / 結論: 破棄自判
甲が乙に対する金銭債務の担保として,甲の丙に対する既に生じ,又は将来生ずべき債権を一括して乙に譲渡することとし,乙が丙に対して担保権実行として取立ての通知をするまでは甲に譲渡債権の取立てを許諾し,甲が取り立てた金銭について乙への引渡しを要しないとの内容のいわゆる集合債権を対象とした譲渡担保契約において,同契約に係る債権…
あてはめ
上告人は譲渡時に特約につき悪意または重過失であったため、譲渡時点では債権を取得していない。債務者Eによる事後承諾は、民法116条の法意に基づき譲渡時に遡って効力を生じさせる。しかし、同条但書の趣旨から第三者の権利を害することはできないところ、被上告人(国側)はEの承諾前に本件債権を適法に差し押さえている。したがって、上告人は承諾の遡及効を被上告人に対抗できず、被上告人の差押えが優先する。
結論
債務者の事後承諾による遡及効は、承諾前に差し押さえを行った第三者には対抗できない。したがって、上告人は被上告人に対して債権譲渡の有効性を主張できず、上告は棄却される。
実務上の射程
改正前民法下の判例であるが、現行法(466条)下でも「譲渡制限制限特約に反する譲渡の効力」と「債務者の承諾の法的性質」を論じる際の参照となる。特に、無権代理の追認の規定(116条)を類推適用して遡及効を認めつつ、第三者保護の観点からその限界を示した点に実務上の意義がある。
事件番号: 平成7(オ)514 / 裁判年月日: 平成10年3月24日 / 結論: 棄却
建物の賃料債権の差押えの効力が発生した後に、建物が譲渡され賃貸人の地位が譲受人に移転したとしても、譲受人は、建物の賃料債権を取得したことを差押債権者に対抗することができない。
事件番号: 平成14(受)240 / 裁判年月日: 平成14年10月10日 / 結論: 棄却
債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律2条1項に規定する債権譲渡登記に譲渡債権の発生年月日の始期(平成10年法務省告示第295号3(5)の項番24)は記録されているがその終期(同項番25)が記録されていない場合には,当該債権譲渡登記に係る債権譲渡が数日にわたって発生した債権を目的とするものであったとしても,…
事件番号: 昭和63(オ)1526 / 裁判年月日: 平成5年3月30日 / 結論: その他
一 同一の債権について、差押通知と確定日付のある譲渡通知との第三債務者への到達の先後関係が不明である場合、差押債権者と債権譲受人とは、互いに自己が優先的地位にある債権者であると主張することができない。 二 同一の債権について、差押通知と確定日付のある譲渡通知との第三債務者への到達の先後関係が不明であるため、第三債務者が…
事件番号: 平成19(受)1280 / 裁判年月日: 平成21年3月27日 / 結論: 破棄自判
譲渡禁止の特約に反して債権を譲渡した債権者が同特約の存在を理由に譲渡の無効を主張することは,債務者にその無効を主張する意思があることが明らかであるなどの特段の事情がない限り,許されない。