一 同一の債権について、差押通知と確定日付のある譲渡通知との第三債務者への到達の先後関係が不明である場合、差押債権者と債権譲受人とは、互いに自己が優先的地位にある債権者であると主張することができない。 二 同一の債権について、差押通知と確定日付のある譲渡通知との第三債務者への到達の先後関係が不明であるため、第三債務者が債権額に相当する金員を供託した場合において、被差押債権額と譲受債権額との合計額が右供託金額を超過するときは、差押債権者と債権譲受人は、被差押債権額と譲受債権額に応じて供託金額を案分した額の供託金還付請求権をそれぞれ分割取得する。
一 同一の債権について差押通知と確定日付のある譲渡通知との第三債務者への到達の先後関係が不明である場合における差押債権者と債権譲受人との間の優劣 二 同一の債権について差押通知と確定日付のある譲渡通知との第三債務者への到達の先後関係が不明である場合と当該債権に係る供託金の還付請求権の帰属
民法467条,国税徴収法62条,国税徴収法67条
判旨
滞納処分による債権差押通知と確定日付のある債権譲渡通知の到達の先後が不明な場合、両者は同時に到達したものとみなされる。この場合、債権者らは公平の原則に基づき、被差押債権額と譲受債権額の額に応じて供託金を案分した額を分割取得する。
問題の所在(論点)
滞納処分による債権差押通知と確定日付のある債権譲渡通知の到達が同時(または先後不明)である場合、差押債権者と債権譲受人の間の優劣関係、および供託金還付請求権の帰属はどう決すべきか。
規範
1. 滞納処分としての債権差押えと債権譲渡の優劣は、差押通知の送達日時と、確定日付のある譲渡通知の到達日時の先後によって決する。2. 到達の先後関係が不明な場合は、各通知が同時に到達したものとして取り扱う。3. このとき、差押債権者と債権譲受人は、互いに相手方に対して自己が優先的地位にあると主張することはできない。4. 第三債務者が債権者不確知を理由に供託した場合において、被差押債権額と譲受債権額の合計が供託金額を超過するときは、公平の原則に照らし、各債権額に応じて供託金還付請求権を案分し、分割取得する。
事件番号: 昭和56(オ)927 / 裁判年月日: 昭和59年2月2日 / 結論: 破棄自判
先取特権者は、債務者が破産宣告を受けた場合であつても、目的債権を差し押えて物上代位権を行使することができる。
重要事実
租税債権を有する上告人は、債務者会社が第三債務者に対し有する運送代金債権(62万円)を差し押さえ、差押通知は昭和60年9月24日に第三債務者に送達された。一方、被上告人は同債権を譲り受け、確定日付のある譲渡通知も同日に第三債務者に到達したが、送達と到達の先後関係は不明であった。第三債務者は債権者不確知を理由に債権全額を供託した。上告人は、当該供託金還付請求権について取立権の確認を求めた。
あてはめ
本件では、差押通知と譲渡通知の到達の先後が不明であるため、両通知は同時に到達したものとみなされる。この場合、上告人と被上告人は互いに優先性を主張できない。供託金額は62万円であるのに対し、被差押債権額(62万円)と譲受債権額(62万円)の合計(124万円)はこれを超過している。したがって、公平の原則に基づき、各自の債権額の比率(1:1)に応じて供託金額を案分すべきである。その結果、上告人は供託金のうち31万円分について還付請求権を分割取得し、その範囲で取立権を有する。これを超える部分の優先主張は認められない。
結論
上告人は、供託金62万円のうち、案分額である31万円の還付請求権について取立権を有する。原判決を一部破棄し、当該部分の請求を認容する。
実務上の射程
対抗要件が同時到達した場合の処理(按分説)を確立した重要判例。民事執行法上の差押えと債権譲渡が競合し、かつ債権額の合計が被差押債権額を超える場面でも、同様の論理が適用される(いわゆる「同時到達・按分」の原則)。答案では、まず先後不明を同時到達と擬制し、その後に公平の原則から案分計算を導く流れで記述する。
事件番号: 平成19(受)1280 / 裁判年月日: 平成21年3月27日 / 結論: 破棄自判
譲渡禁止の特約に反して債権を譲渡した債権者が同特約の存在を理由に譲渡の無効を主張することは,債務者にその無効を主張する意思があることが明らかであるなどの特段の事情がない限り,許されない。
事件番号: 平成5(オ)1164 / 裁判年月日: 平成9年6月5日 / 結論: 棄却
譲渡禁止の特約のある指名債権について、譲受人が特約の存在を知り、又は重大な過失により特約の存在を知らないでこれを譲り受けた場合でも、その後、債務者が債権の譲渡について承諾を与えたときは、債権譲渡は譲渡の時にさかのぼって有効となるが、民法一一六条の法意に照らし、第三者の権利を害することはできない。
事件番号: 平成12(受)194 / 裁判年月日: 平成13年11月22日 / 結論: 破棄自判
甲が乙に対する金銭債務の担保として,甲の丙に対する既に生じ,又は将来生ずべき債権を一括して乙に譲渡することとし,乙が丙に対して担保権実行として取立ての通知をするまでは甲に譲渡債権の取立てを許諾し,甲が取り立てた金銭について乙への引渡しを要しないとの内容のいわゆる集合債権を対象とした譲渡担保契約において,同契約に係る債権…
事件番号: 平成7(オ)514 / 裁判年月日: 平成10年3月24日 / 結論: 棄却
建物の賃料債権の差押えの効力が発生した後に、建物が譲渡され賃貸人の地位が譲受人に移転したとしても、譲受人は、建物の賃料債権を取得したことを差押債権者に対抗することができない。