1 弁済供託における供託金取戻請求権の消滅時効は,過失なくして債権者を確知することができないことを原因とする弁済供託の場合を含め,供託者が免責の効果を受ける必要が消滅した時から進行する。 2 過失なくして債権者を確知することができないことを原因として賃料債務についてされた弁済供託につき,同債務の各弁済期の翌日から民法169条所定の5年の時効期間が経過した時から更に10年が経過する前にされた供託金取戻請求に対し,同取戻請求権の消滅時効が完成したとしてこれを却下した処分は,違法である。
1 弁済供託における供託金取戻請求権の消滅時効の起算点 2 債権者不確知を原因とする弁済供託に係る供託金取戻請求の却下処分が違法とされた事例
供託法8条2項,民法166条1項,民法167条1項,民法169条,民法496条1項
判旨
弁済供託における供託物取戻請求権の消滅時効は、供託の時からではなく、供託の基礎となった債務について消滅時効が完成するなど供託者が免責の効果を受ける必要が消滅した時から進行する。
問題の所在(論点)
弁済供託がなされた場合における供託物取戻請求権の消滅時効の起算点(民法166条1項、現行法下では民法166条1項2号の権利を行使することができる時)。
規範
弁済供託における供託物取戻請求権(民法496条)の消滅時効の起算点は、債権者不確知による場合を含め、供託の基礎となった債務について消滅時効が完成するなど、供託者が供託による免責の効果を受ける必要が消滅した時と解する。
重要事実
賃借人である被上告人は、賃貸人の死亡後に複数の相続人を自称する者から賃料請求を受けたため、債権者不確知(民法494条後段)を理由に賃料を供託した。その後、被上告人が供託金の取戻しを請求したところ、供託官は供託時から10年の経過により取戻請求権が時効消滅したとして却下処分を行った。
事件番号: 昭和40(行ツ)100 / 裁判年月日: 昭和45年7月15日 / 結論: 棄却
一、弁済供託における供託金取戻請求が供託官により却下された場合には、供託官を被告として却下処分の取消の訴を提起することができる。 二、弁済供託における供託金取戻請求権の消滅時効は、供託の基礎となつた債務について紛争の解決などによつてその不存在が確定するなど、供託者が免責の効果を受ける必要が消滅した時から進行し、一〇年を…
あてはめ
弁済供託制度は債務者の免責を保護する趣旨であり、取戻しをすれば供託しなかったとみなされる(民法496条2項)。そうであれば、債務者が免責の効果を受ける必要がある間は取戻請求権の行使を期待できず、供託時から時効が進行すると解すのは制度趣旨に反する。本件賃料債務は5年の短期消滅時効(旧民法169条)にかかるため、各弁済期の翌日から5年が経過し、債務自体が時効消滅して免責の必要がなくなった時点が取戻請求権の起算点となる。したがって、当該起算点から10年を経過していない本件取戻請求を却下した処分は違法である。
結論
供託金取戻請求を却下した処分は違法であり、取り消されるべきである。
実務上の射程
弁済供託後の取戻権の時効起算点に関するリーディングケースである。答案上は、供託による免責の必要性と取戻権行使の期待可能性を関連付けて論じる際に活用する。特に債権者不確知の場合でも、債務自体の時効完成時を基準とする点を明示すべきである。
事件番号: 平成27(行ヒ)374 / 裁判年月日: 平成28年3月31日 / 結論: 破棄自判
宅地建物取引業法30条1項前段所定の事由が発生した場合において,同条2項本文所定の公告がされなかったときは,営業保証金の取戻請求権の消滅時効は,当該事由が発生した時から10年を経過した時から進行する。
事件番号: 昭和42(行ツ)13 / 裁判年月日: 昭和43年6月21日 / 結論: 棄却
仮執行宣言付判決による仮執行の免脱のために供された担保は、その判決の確定に至るまで、勝訴原告が仮執行をすることができなかつたことによつて被ることのあるべき損害のみを担保し、本案の請求までも担保するものではない。
事件番号: 昭和56(行ツ)83 / 裁判年月日: 昭和59年11月26日 / 結論: 棄却
供託申請についての供託官の審査権限は、供託書及び添付書類のみに基づいてするいわゆる形式的審査の範囲にとどまるが、その審査の対象は、手続的要件に限られるものではなく、供託原因の存否等の実体的要件にも及ぶ。
事件番号: 平成14(受)240 / 裁判年月日: 平成14年10月10日 / 結論: 棄却
債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律2条1項に規定する債権譲渡登記に譲渡債権の発生年月日の始期(平成10年法務省告示第295号3(5)の項番24)は記録されているがその終期(同項番25)が記録されていない場合には,当該債権譲渡登記に係る債権譲渡が数日にわたって発生した債権を目的とするものであったとしても,…