供託申請についての供託官の審査権限は、供託書及び添付書類のみに基づいてするいわゆる形式的審査の範囲にとどまるが、その審査の対象は、手続的要件に限られるものではなく、供託原因の存否等の実体的要件にも及ぶ。
供託申請についての供託官の審査権限の範囲
供託法2条,供託規則13条,供託規則18条,供託規則38条
判旨
供託官の審査権限は形式的審査に限定されるが、提出書類に基づき判断可能な範囲で供託原因等の実体法的要件にも及ぶ。また、当該却下処分の取消訴訟において裁判所は、供託官の形式的審査権限の範囲内で処分の適法性を審理判断すべきである。
問題の所在(論点)
1. 供託官による審査権限の範囲に、実体法上の要件(供託原因の存否等)が含まれるか。 2. 供託申請却下処分の取消訴訟において、裁判所が審理すべき範囲はどこまでか。
規範
供託官の審査権限は、供託書及び添付書類のみに基づいて判断する形式的審査の範囲にとどまる。ただし、その審査対象は手続的要件に限られず、提出された書類に基づいて判断しうる限りにおいて、供託原因の存否等の実体法上の有効性(実体的要件)にも及ぶ。これに伴い、供託申請却下処分の取消訴訟における審理範囲も、供託官の権限である形式的審査の範囲内において処分の適法性を判断すべきものと解される。
重要事実
上告人(供託申請者)が供託官に対して供託申請を行ったところ、供託官は供託書等の書類を審査した結果、供託原因等の実体的要件を欠くと判断して申請を却下した。これに対し、上告人が供託官の審査権限の逸脱および処分の違法を主張して、却下処分の取消しを求めて提訴した事案である(具体的な供託原因や添付書類の詳細は判決文からは不明)。
事件番号: 昭和36(オ)299 / 裁判年月日: 昭和36年10月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】供託官吏は、供託書が供託法2条所定の形式的要件を具備しているかを審査すれば足り、供託原因の存否等の実質的審査権限を有しない。また、供託書に住所の誤記等があっても、後日の訂正が可能である以上、供託受理行為の無効または取消原因とはならない。 第1 事案の概要:上告人は、供託官吏が供託を受理した行為につ…
あてはめ
供託手続の迅速性と明確性を確保する観点から、供託官に実質的調査権はない。しかし、提出された「供託書及び添付書類」から明らかに実体法上の供託原因を欠くと判断できる場合には、これを却下することが認められる。本件において、供託官が提出書類に基づき実体法的要件に欠けると判断してなした却下処分は、形式的審査権限の範囲内にある適法な公権力の行使といえる。したがって、取消訴訟においても、供託官の審査権限に対応した範囲で審理されるべきである。
結論
本件供託申請却下処分は、供託官の形式的審査権限の範囲内においてなされたものであり、違法ではないため、上告を棄却する。
実務上の射程
司法書士試験や実務で重要な「形式的審査権」の限界を画した判例。行政事件訴訟の文脈では、処分庁の権限範囲と取消訴訟における裁判所の審理範囲がパラレルに関係することを示す。答案では、供託官の権限を論じる際に「書類から判断できる限りの実体的要件」も含まれることを明示するために引用する。
事件番号: 昭和42(行ツ)13 / 裁判年月日: 昭和43年6月21日 / 結論: 棄却
仮執行宣言付判決による仮執行の免脱のために供された担保は、その判決の確定に至るまで、勝訴原告が仮執行をすることができなかつたことによつて被ることのあるべき損害のみを担保し、本案の請求までも担保するものではない。
事件番号: 昭和58(行ツ)106 / 裁判年月日: 昭和61年11月4日 / 結論: 棄却
法人登記の職権抹消処分の取消訴訟においては、裁判所は、登記官が審査権限を有する範囲内で当該処分の適否を判断すれば足り、登記官の審査権限に属さない資料に基づいて処分の適否を判断すべきではない。
事件番号: 平成10(行ツ)22 / 裁判年月日: 平成13年11月27日 / 結論: 棄却
1 弁済供託における供託金取戻請求権の消滅時効は,過失なくして債権者を確知することができないことを原因とする弁済供託の場合を含め,供託者が免責の効果を受ける必要が消滅した時から進行する。 2 過失なくして債権者を確知することができないことを原因として賃料債務についてされた弁済供託につき,同債務の各弁済期の翌日から民法1…