判旨
供託官吏は、供託書が供託法2条所定の形式的要件を具備しているかを審査すれば足り、供託原因の存否等の実質的審査権限を有しない。また、供託書に住所の誤記等があっても、後日の訂正が可能である以上、供託受理行為の無効または取消原因とはならない。
問題の所在(論点)
供託官吏に供託原因の存否等の実質的事項を審査する権限があるか。また、供託書に住所の誤記がある場合、供託受理行為の効力に影響を及ぼすか。
規範
供託官吏の審査権限は、供託書が供託法2条所定の要件を具備しているか等の形式的要件に限定される。供託の原因たる契約の存否や効力の有無といった実質的事項について審査する権限はない。また、住所の誤記等の軽微な不備は後日訂正可能であり、直ちに受理行為を無効・取消しとする事由にはならない。
重要事実
上告人は、供託官吏が供託を受理した行為について、供託の原因となる契約の効力等に問題があることや、供託書に住所の誤記があること等を理由に、その受理行為の適法性を争い上告した。原審は、供託官吏の権限は形式的審査に留まるとして上告人の訴えを退けていた。
あてはめ
供託制度の円滑な運用を期するため、供託官吏は供託書に記載された形式的要件の有無のみを確認すれば足りる。本件において上告人が主張する契約の存否等の実質的事由は審査対象外である。また、住所の誤記は後日訂正可能であり、手続の安定性の観点から受理行為の無効・取消原因とは認められない。したがって、供託受理行為は適法である。
結論
供託官吏は実質的審査権限を有さず、住所の誤記も受理の効力を左右しないため、本件供託受理行為は有効である。
実務上の射程
事件番号: 昭和56(行ツ)83 / 裁判年月日: 昭和59年11月26日 / 結論: 棄却
供託申請についての供託官の審査権限は、供託書及び添付書類のみに基づいてするいわゆる形式的審査の範囲にとどまるが、その審査の対象は、手続的要件に限られるものではなく、供託原因の存否等の実体的要件にも及ぶ。
供託受理という行政処分の適法性を争う場面において、供託官吏の審査権限が「形式的審査権限」に限定されることを示す重要判例である。答案上は、供託の有効性や公務員の注意義務違反を論じる際の前提として活用できる。
事件番号: 昭和33(オ)106 / 裁判年月日: 昭和35年4月21日 / 結論: 棄却
登記官吏は、当該申請書および附属書類について登記申請が形式上の要件を具備するかどうかの形式的審査をすることができるにとどまり、その登記事項が真実であるかどうかにつき実質的審査をする権限を有するものではない。