仮執行宣言付判決に対する上訴に伴う強制執行の停止のために担保が立てられた場合において,債務者が破産宣告を受けたことの一事をもって,「担保の事由が消滅したこと」に該当するということはできない。
仮執行宣言付判決に対する上訴に伴う強制執行の停止のために担保が立てられた場合における債務者に対する破産宣告と担保の事由の消滅
破産法70条1項,民訴法79条1項,民訴法259条,民訴法398条1項,民訴法400条2項,民事執行法39条1項
判旨
仮執行宣言付判決の執行停止において、債務者が破産宣告を受けたとしても、強制執行が破産時までに終了し得た可能性が否定されない限り「担保の事由が消滅した」とは言えず、債権者は担保物から優先弁済を受ける権利を有する。
問題の所在(論点)
仮執行宣言付判決に対する執行停止後、債務者が破産宣告を受けた場合、民事訴訟法79条1項の「担保の事由が消滅した」といえるか。破産により強制執行が制限される状況下での担保の目的と損害発生の可能性が問題となる。
規範
強制執行停止のために供された担保に関し、債務者が破産宣告を受けた一事をもって民事訴訟法79条1項の「担保の事由が消滅した」と解することはできない。例外的に、執行停止がされなかったとしても破産宣告時までに仮執行が終了し得なかったという事情がない限り、債権者は執行停止により損害を被る可能性があるからである。この場合、債権者は担保物について他の債権者に先立ち弁済を受ける権利(同法400条2項、77条)を保持する。
重要事実
債権者(抗告人)は、債務者D社に対する損害賠償請求訴訟において仮執行宣言付判決を得た。D社は、金銭を供託して担保を立て、控訴に伴う強制執行停止決定を得た。しかし、その直後にD社は破産宣告を受けた。破産管財人(相手方)は、破産により強制執行が失効したことを理由に担保取消しの申立てを行った。なお、執行停止がなければ破産時までに仮執行が終了していなかったという特別の事情は立証されていない。
事件番号: 平成13(許)21 / 裁判年月日: 平成13年12月13日 / 結論: 棄却
仮執行宣言付判決に対する上訴に伴い担保を立てさせて強制執行の停止又は既にした執行処分の取消しがされた場合において,債務者が破産宣告を受けたことの一事をもって,「担保の事由が消滅したこと」に該当するということはできない。
あてはめ
本件では、債務者が破産宣告を受けているが、執行停止決定がなされなければ破産宣告時までに仮執行が完了し、債権者が配当等を受けられていた可能性がある。相手方(管財人)は、執行停止がなかったとしても破産時までに仮執行が終了していなかったという事情を立証しておらず、裁判所もこれを認定していない。したがって、債権者には執行停止による損害(債権を回収できなかったことによる損害)が発生し得る状態にあるといえる。よって、担保の目的は依然として存続している。
結論
債務者が破産宣告を受けた一事をもって担保事由が消滅したとはいえない。したがって、本件担保取消しの申立ては却下されるべきである。
実務上の射程
執行停止の担保が、停止による不当な遅延損害のみならず、その後の破産等による回収不能リスクに対する実質的な担保として機能することを認めた判例である。答案上は、担保取消しの要件を検討する際、単に「本案判決の確定」や「破産」といった形式的な事実だけでなく、執行停止がなければ債権回収が完了していたかという実質的観点から「損害発生の可能性」を論じる必要がある。
事件番号: 平成24(許)15 / 裁判年月日: 平成25年4月26日 / 結論: 破棄自判
1 仮執行宣言付判決に対する上訴に伴い,金銭を供託する方法により担保を立てさせて強制執行の停止がされた後に,債務者につき更生手続開始の決定がされた場合,その被担保債権である損害賠償請求権は,更生担保権ではなく,更生債権に当たる。 2 仮執行宣言付判決に対する上訴に伴う強制執行の停止に当たって金銭を供託する方法により担保…
事件番号: 昭和23(ク)5 / 裁判年月日: 昭和24年6月16日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】第三者異議の訴えに伴う強制執行停止決定の効力は本案の第一審判決言渡により当然に消滅し、判決における停止決定取消の裁判及び仮執行宣言は既往の効力消滅を表明するに過ぎない。したがって、控訴提起を理由とする仮執行宣言付裁判の執行停止(旧民訴法512条等)を求める申請は原則として無意義であるが、実務上は新…
事件番号: 昭和24(ク)41 / 裁判年月日: 昭和24年7月15日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する抗告は、訴訟法上特に最高裁判所への申し立てが許容されている場合を除き、提起することができない。 第1 事案の概要:抗告人が最高裁判所に対して抗告を申し立てた事案。本件において、抗告人は当時の民事訴訟法419条の2(民訴応急措置法7条)などの特別の規定に基づかずに、最高裁判所への抗…
事件番号: 平成14(許)11 / 裁判年月日: 平成14年10月25日 / 結論: 棄却
物上保証人所有の不動産を目的とする競売手続において,債務者の所在が不明であるため,開始決定の債務者への送達が公示送達によりされた場合には,民訴法111条の規定による掲示を始めた日から2週間を経過した時に,被担保債権について消滅時効の中断の効力を生ずる。