物上保証人所有の不動産を目的とする競売手続において,債務者の所在が不明であるため,開始決定の債務者への送達が公示送達によりされた場合には,民訴法111条の規定による掲示を始めた日から2週間を経過した時に,被担保債権について消滅時効の中断の効力を生ずる。
物上保証人所有の不動産を目的とする競売の開始決定の債務者への送達が債務者の所在が不明であるため公示送達によりされた場合における被担保債権の消滅時効の中断
民法147条,民法155条,民訴法110条1項,民訴法111条,民訴法113条,民事執行法45条2項,民事執行法188条
判旨
物上保証人所有の不動産に対する競売で債務者の所在が不明な場合、競売開始決定正本の公示送達がなされれば、民訴法113条の類推適用により民法155条の通知の効力が生じ、被担保債権の消滅時効が中断する。
問題の所在(論点)
物上保証人の不動産に対する競売において、債務者の所在不明を理由に競売開始決定正本が公示送達された場合、民法155条(差押えの通知)による時効中断の効力が発生するか。発生するとすればその根拠と時期はいつか。
規範
物上保証人に対する競売開始決定正本の債務者への送達は、民法155条所定の差押えの通知としての性質を有する。そして、債務者の所在が不明で公示送達がなされた場合、民訴法113条を類推適用し、掲示開始から2週間経過時に当該通知が到達したものとみなすべきである。なぜなら、訴訟書類の送達により実体法上の意思表示・通知がなされる場合に、民法上の公示による意思表示手続を別途強いることは債権者に不相応な負担を課すことになり、同条の趣旨(二重負担の回避)に合致するからである。
重要事実
債権者は、物上保証人が所有する不動産を目的とする根抵当権を実行し、競売手続を開始した。しかし、債務者の所在が不明であったため、執行裁判所は競売開始決定正本の債務者への送達を公示送達により行った。その後、被担保債権の消滅時効中断の効力がいつ発生したかが争われた。
事件番号: 平成14(許)1 / 裁判年月日: 平成14年4月26日 / 結論: 破棄自判
仮執行宣言付判決に対する上訴に伴う強制執行の停止のために担保が立てられた場合において,債務者が破産宣告を受けたことの一事をもって,「担保の事由が消滅したこと」に該当するということはできない。
あてはめ
本件では、競売開始決定正本の送達という競売手続の進行に不可欠な手続が行われており、これが民法155条の通知を兼ねている。債務者の所在が不明な以上、民訴法113条を類推適用し、同法111条の掲示から2週間が経過した時点で実体法上の通知としての到達を認めるのが相当である。これにより、民法97条の2(現在の公示による意思表示)の手続を重ねて執る必要はないといえる。
結論
公示送達により民訴法111条の掲示を始めた日から2週間を経過した時に、債務者に対し民法155条の通知が到達したものとみなされ、被担保債権について消滅時効中断の効力が生じる。
実務上の射程
物上保証人に対する競売において、債務者への通知をいかに擬制するかを示す重要判例。答案では「物上保証人への差押えによる時効中断の効力(民法155条)」と「公示送達による意思表示の到達(民訴法113条)」を組み合わせて論じる。民訴法113条の類推適用の可否が論点となった際の主要な論拠として活用する。
事件番号: 昭和47(オ)723 / 裁判年月日: 昭和50年11月21日 / 結論: 棄却
物上保証人に対する抵当権の実行により、競売裁判所が競売開始決定をし、これを債務者に告知した場合には、被担保債権についての消滅時効は中断する。
事件番号: 平成23(ク)166 / 裁判年月日: 平成23年10月11日 / 結論: 棄却
建物の区分所有等に関する法律59条1項に基づく訴訟の口頭弁論終結後に被告であった区分所有者がその区分所有権及び敷地利用権を譲渡した場合に,その譲受人に対し同訴訟の判決に基づいて競売を申し立てることはできない。 (補足意見がある。)
事件番号: 平成13(許)21 / 裁判年月日: 平成13年12月13日 / 結論: 棄却
仮執行宣言付判決に対する上訴に伴い担保を立てさせて強制執行の停止又は既にした執行処分の取消しがされた場合において,債務者が破産宣告を受けたことの一事をもって,「担保の事由が消滅したこと」に該当するということはできない。
事件番号: 平成13(許)10 / 裁判年月日: 平成14年2月5日 / 結論: その他
商法704条2項にいう先取特権には,民法上の先取特権も含まれる。