商法704条2項にいう先取特権には,民法上の先取特権も含まれる。
商法704条2項にいう先取特権と民法上の先取特権
民法303条,商法704条2項
判旨
船舶賃借人が商行為の目的で船舶を航海の用に供した場合、船舶の利用につき生じた民法上の先取特権は、商法704条2項本文により、船舶所有者に対してもその効力を生じる。
問題の所在(論点)
商法704条2項本文にいう「先取特権」に、商法上の先取特権のみならず、民法上の先取特権(動産保存の先取特権)も含まれるか。また、船舶賃借人が生じさせた債務に基づく先取特権の効力が、非債務者である船舶所有者の持分に及ぶか。
規範
商法704条2項本文は、船舶賃借人が商行為を行う目的で船舶を航海の用に供した際、船舶の利用につき生じた先取特権を所有者に対しても対抗可能とする旨を規定する。同条の趣旨は、船舶賃借人が船舶を所有している場合と同様の効力を認めることで債権者を保護する点にある。したがって、本規定が適用される先取特権は、商法842条所定のものに限定されず、民法上の先取特権(動産保存の先取特権等)も含まれる。
重要事実
船舶所有者である相手方(事業団)は、共有持分(100分の80)を相手方(B海運)に賃貸した。B海運は本件船舶を自己の海上貨物運送事業に使用していた。抗告人は、B海運から船舶の定期検査及び修繕を請け負い、修繕費請求権を取得した。抗告人は、当該債権を被担保債権とする動産保存の先取特権(民法321条)に基づき、事業団の持分に対しても競売を申し立てた。
事件番号: 平成23(ク)166 / 裁判年月日: 平成23年10月11日 / 結論: 棄却
建物の区分所有等に関する法律59条1項に基づく訴訟の口頭弁論終結後に被告であった区分所有者がその区分所有権及び敷地利用権を譲渡した場合に,その譲受人に対し同訴訟の判決に基づいて競売を申し立てることはできない。 (補足意見がある。)
あてはめ
本件修繕費請求権に係る動産保存の先取特権は、B海運による本件船舶の利用につき生じたものである。商法704条2項本文の「先取特権」には民法上の先取特権も含まれると解される以上、たとえ被担保債権の債務者が賃借人(B海運)であっても、その効力は所有者(事業団)の共有持分に対して生じる。したがって、事業団の持分に対する競売申立ては適法である。
結論
商法704条2項本文の適用により、民法上の先取特権の効力も船舶所有者に及ぶ。よって、事業団の共有持分に対する競売申立てを却下した原決定は取り消されるべきである。
実務上の射程
船舶賃借人が運航に関連して修繕等の債務を負った場合、債権者は民法上の先取特権を根拠として、真の所有者に対しても権利行使ができる。商法704条の適用範囲を拡張する判例として、海事事件のみならず、他人所有物を利用した営業における責任主体と物件把握の論理として重要である。
事件番号: 平成18(許)21 / 裁判年月日: 平成18年10月27日 / 結論: 破棄自判
登録自動車を目的とする民法上の留置権による競売においては,その被担保債権が当該自動車に関して生じたことが主要事実として認定されている確定判決であれば,債権者による当該自動車の占有の事実が認定されていなくとも,民事執行法181条1項1号所定の「担保権の存在を証する確定判決」に当たる。
事件番号: 平成11(許)23 / 裁判年月日: 平成12年4月14日 / 結論: 破棄差戻
抵当権者は、抵当不動産の賃借人を所有者と同視することを相当とする場合を除き、右賃借人が取得する転貸賃料債権について物上代位権を行使することができない。
事件番号: 平成14(許)11 / 裁判年月日: 平成14年10月25日 / 結論: 棄却
物上保証人所有の不動産を目的とする競売手続において,債務者の所在が不明であるため,開始決定の債務者への送達が公示送達によりされた場合には,民訴法111条の規定による掲示を始めた日から2週間を経過した時に,被担保債権について消滅時効の中断の効力を生ずる。
事件番号: 平成10(許)2 / 裁判年月日: 平成11年5月17日 / 結論: 棄却
一 銀行甲が、輸入業者乙のする商品の輸入について信用状を発行し、約束手形の振出しを受ける方法により乙に輸入代金決済資金相当額を貸し付けるとともに、乙から右約束手形金債権の担保として輸入商品に譲渡担保権の設定を受けた上、乙に右商品の貸渡しを行ってその処分権限を与えたところ、乙が、右商品を第三者に転売した後、破産の申立てを…