死刑の量刑が維持された事例(架空請求詐欺グループ仲間割れ殺人等事件)
判旨
被告人が指示系統の従属的立場にあり、前科がなく反省を示している等の事情を考慮しても、4名の生命を奪った結果の重大性、殺害行為の中核を担った役割の大きさ、及び冷酷・残忍な犯行態様に照らせば、死刑の選択はやむを得ない。
問題の所在(論点)
死刑選択の要件(刑法11条、199条等)に関し、従属的な立場や前科のない事情が、4名の殺害・致死という重大な結果を回避し、死刑を回避すべき決定的な事情となり得るか。
規範
死刑選択の適否は、永山事件判決(最判昭58.7.8)の示す諸要素(犯行の性質、動機、態様、殺害された被害者数、遺族の処罰感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状)を総合的に考慮し、罪責が極めて重大であって、罪刑均衡の観点からも一般予防の観点からもやむを得ない場合に認められる。
重要事実
詐欺組織の構成員である被告人が、共犯者らと共謀の上、組織を裏切ろうとした被害者4名を監禁。うち2名を殺害目的外の激しい暴行により死亡させ、残る2名を鼻口部を塞ぐなどして窒息死させて殺害し、全遺体を土中に遺棄した。被告人は、上位者Aらの指示に従う従属的立場にあり、監禁等の当初はAらを恐れていた面もあったが、殺人の実行に際しては自ら進んで鼻口部を塞ぐという核心的役割を果たした。被告人には前科がなく、公判では事実を認め反省の態度を示していた。
あてはめ
まず、結果の重大性について、4名の命が奪われた事実は甚だ重く、遺族の処罰感情も厳しい。次に犯行態様について、緊縛され身動きの取れない被害者を窒息死させた点は冷酷かつ残忍であり、死体遺棄も死者への畏敬の念が欠如している。さらに被告人の役割について、先行する2名の死亡を目の当たりにしながら、残る2名の殺害の中核部分を自ら進んで実行しており、人命軽視の態度は顕著である。確かに上位者を恐れた従属的立場や、前科がなく反省している等の情状は認められるが、これらを十分に考慮しても、犯行の残虐性や結果の重大性に照らせば刑事責任は極めて重大といえる。
事件番号: 平成21(あ)994 / 裁判年月日: 平成25年1月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】犯行に至る経緯・動機に酌量の余地がなく、態様が極めて冷酷かつ非情であり、4名もの生命を奪った結果が甚だ重大な事案においては、被告人が犯行の中核的役割を果たし、反省の態度も乏しい等の事情がある限り、第一審の無期懲役判決を破棄して死刑を宣告した原判断は正当として是認される。 第1 事案の概要:詐欺団体…
結論
本件における死刑の科刑は、甚だ重い罪責に見合うものであり、是認せざるを得ない。
実務上の射程
死刑選択が問題となる事案において、共犯関係における「従属的立場」や「前科なし・反省」という有利な情状が、被害者数(本件は4名)や犯行態様の残虐性、実行行為への積極的な関与といった不利な事情をどこまで凌駕しうるかを判断する際の基準となる。
事件番号: 平成21(あ)995 / 裁判年月日: 平成25年1月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の量刑に際しては、犯行の罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の処罰感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、その責任が極めて重大であって罪刑の均衡等の見地からやむを得ない場合に認められる。 第1 事案の概要:組織的詐欺グループの構成員であった被告人は、グループの資金を…
事件番号: 平成13(あ)1162 / 裁判年月日: 平成17年1月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択が許容されるか否かは、永山事件判決(最判昭58.7.8)の示した9つの判断要素を総合考慮して決定されるべきであり、本件においても、犯行の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情況を慎重に検討した結果、死刑の選択はやむを得ない。 第1 事案の…
事件番号: 平成20(あ)909 / 裁判年月日: 平成24年12月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】3名の生命を奪い、かつ死体を土中に埋めて遺棄するなどした各犯行(傷害致死、逮捕監禁、殺人等)について、被告人が主導的な役割を果たし、強固な殺意に基づき冷静に残忍な殺害行為に及んでいるなどの諸事情に照らせば、死刑の科刑は正当として是認される。 第1 事案の概要:被告人は、人材派遣業を営む中、(1)雇…