死刑の量刑が維持された事例(栃木・妻,知人連続殺人事件)
判旨
被告人らが、被害者の頸部を絞め、口を塞ぐなどの暴行を加えて窒息死させ、死体を山中に埋没させた事案につき、原審の無期懲役の判決を維持し、死刑の適用が相当であるとする検察官の上告を棄却した事例(いわゆる永山基準を踏まえた死刑選択の判断)。
問題の所在(論点)
殺害された被害者が1名である事案において、犯行の残虐性や動機の悪質性を考慮し、死刑の選択が許容されるか。すなわち、刑法11条(死刑)の適用の適否が問題となる。
規範
死刑は、究極の刑罰であり、その適用は慎重に行われなければならない。具体的には、罪状、動機、犯行態様(特に殺害方法の残虐性)、結果の重大性(殺害された被害者の数)、遺族の被害感情、社会的影響、被告人の年齢、前科、犯行後の情状を総合的に考慮し、その罪責が誠に重大であって、罪刑の均衡の見地からも一般予防の見地からも死刑の選択がやむを得ないと認められる場合に限り、許容される。
重要事実
被告人2名は、当時21歳の男性被害者を拉致し、約1時間にわたり頸部を絞める、口を塞ぐ等の暴行を加え、窒息死させた。その後、死体を山中に埋没させて遺棄した。犯行の動機は、被告人らの不法な要求を被害者が拒んだこと等に端を発しており、身勝手かつ非情なものである。殺害態様も冷酷で執拗であり、犯行後の隠蔽工作も計画的であった。一方で、殺害された被害者は1名であり、被告人らには特筆すべき重大な前科はなく、犯行後の情状において一部反省の態度も見られる。
あてはめ
本件犯行は、約1時間におよぶ執拗な暴行による殺害と死体遺棄を伴うものであり、態様は極めて残虐かつ非道である。被害者が1名であっても、その動機に酌むべき点はなく、結果の重大性や遺族の処罰感情は峻烈である。しかし、従来の量刑慣行(いわゆる永山基準)に照らせば、被害者が1名である場合には、特に残虐な態様や高度な計画性、重大な前科などの顕著な情状悪化要因が累積しない限り、死刑の選択には慎重を期すべきである。本件では被告人らの若年性や前科関係、反省の状況等を総合考慮すると、原審が維持した無期懲役の判決が、著しく正義に反するほどに軽きに失するもの(刑訴法411条2号)とは断定しがたい。
事件番号: 平成15(あ)600 / 裁判年月日: 平成18年6月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強盗殺人等の罪に問われた被告人に対し、犯行の残虐性、結果の重大性、および動機の身勝手さを重視し、死刑に処した一審判決を維持した原判決は、量刑の衡平を欠くものではなく相当である。 第1 事案の概要:被告人は、共犯者2名と共謀のうえ、金品強取の目的で、何ら落ち度のない女性2名を絞殺した。犯行は計画的か…
結論
被告人らの罪責は極めて重く、死刑の選択を検討する余地は十分にあるものの、諸般の事情を総合考慮した原審の無期懲役判決は相当であり、死刑を適用しないことは適法である。
実務上の射程
判決文からは不明(死刑選択における被害者数1名の限界事例としての評価について、具体的な射程の記述なし)
事件番号: 平成13(あ)670 / 裁判年月日: 平成17年12月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】筋弛緩剤を用いた5名の殺害および死体遺棄事件において、動機の身勝手さ、犯行態様の残虐性、結果の重大性を鑑みれば、反省の情等の有利な事情を考慮しても死刑判決の維持は正当である。 第1 事案の概要:被告人は、約1年4か月の間に、職場の同僚、知人、アルバイト、取引先女性ら計5名を、筋弛緩剤を注射する方法…
事件番号: 平成21(あ)1602 / 裁判年月日: 平成25年2月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が指示系統の従属的立場にあり、前科がなく反省を示している等の事情を考慮しても、4名の生命を奪った結果の重大性、殺害行為の中核を担った役割の大きさ、及び冷酷・残忍な犯行態様に照らせば、死刑の選択はやむを得ない。 第1 事案の概要:詐欺組織の構成員である被告人が、共犯者らと共謀の上、組織を裏切ろ…
事件番号: 平成6(あ)1024 / 裁判年月日: 平成10年12月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】半年余りの間に3名の命を奪った結果は極めて重大であり、犯行態様が冷酷、残忍かつ非情であって、遺族の被害感情も極めて厳しい等の事情がある場合には、被告人に有利な事情を考慮しても死刑の科刑はやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人は、共犯者と共に借金トラブルからBを殺害・遺棄し、その後、共犯者の父Dか…