死刑の量刑が維持された事例(架空請求詐欺グループ仲間割れ殺人等事件)
判旨
犯行に至る経緯・動機に酌量の余地がなく、態様が極めて冷酷かつ非情であり、4名もの生命を奪った結果が甚だ重大な事案においては、被告人が犯行の中核的役割を果たし、反省の態度も乏しい等の事情がある限り、第一審の無期懲役判決を破棄して死刑を宣告した原判断は正当として是認される。
問題の所在(論点)
4名が死亡(うち殺人は2名)した組織的凶悪犯罪において、中核的な役割を果たした被告人に対し、第一審の無期懲役判決を破棄して死刑を処した原審の量刑判断が、死刑適用の基準に照らして妥当か。
規範
死刑適用の是非は、いわゆる永山基準(犯行の性質、動機、態様、殺害された被害者数、遺族の処罰感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等)を総合考慮して決定される。特に、死刑は極刑であるから、その適用は、罪責が誠に重大であって、罪罰の均衡及び一般予防の観点からもやむを得ないと認められる場合に限られる。
重要事実
詐欺団体の構成員である被告人は、他構成員らと共謀し、内紛から被害者4名を監禁。激しい暴行を加えて2名を傷害致死に至らせ、その後、報復を恐れて残る2名を窒息死させて殺害し、遺体を暴力団に依頼して土中に遺棄した。被告人は、被害者に対し熱湯をかけるなどの激しい暴行を加え、殺害の実行を指示するなど、一連の犯行において中核的な役割を担い、犯行後も口止め工作を行っていた。第一審は無期懲役としたが、原審(控訴審)は死刑を選択した。
あてはめ
まず、動機は報復回避という身勝手なものであり、態様も身動きの取れない被害者の鼻口部を塞いで窒息死させる等、冷酷・非情といえる。次に、4名の生命を奪った結果は極めて重大であり、遺族の感情も峻烈である。さらに、被告人は殺害の指示や死体遺棄の主導等、犯行の決定に重要かつ不可欠な役割を担っており、その刑事責任は重い。犯行後の口止め工作や公判での否認態度に鑑みれば、更生可能性も乏しいといえる。これらの事情を総合すれば、事実を認めている点等の有利な事情を考慮しても、極刑はやむを得ない。
事件番号: 平成21(あ)1602 / 裁判年月日: 平成25年2月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が指示系統の従属的立場にあり、前科がなく反省を示している等の事情を考慮しても、4名の生命を奪った結果の重大性、殺害行為の中核を担った役割の大きさ、及び冷酷・残忍な犯行態様に照らせば、死刑の選択はやむを得ない。 第1 事案の概要:詐欺組織の構成員である被告人が、共犯者らと共謀の上、組織を裏切ろ…
結論
本件被告人の刑事責任は極めて重大であり、第一審の無期懲役判決を破棄して被告人を死刑に処した原判断は、やむを得ないものとして是認される。
実務上の射程
多数の被害者が発生した組織的犯罪において、首謀者・中核者の刑事責任を重く評価し、一審の無期判決を覆して死刑を維持する際の「やむを得ない」とする判断枠組みを具体化したものである。
事件番号: 平成21(あ)995 / 裁判年月日: 平成25年1月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の量刑に際しては、犯行の罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の処罰感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、その責任が極めて重大であって罪刑の均衡等の見地からやむを得ない場合に認められる。 第1 事案の概要:組織的詐欺グループの構成員であった被告人は、グループの資金を…
事件番号: 平成20(あ)1224 / 裁判年月日: 平成23年3月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の刑事責任は極めて重大であり、死刑の選択もやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人は、友人らとトラブルになったことを端緒として、被害者2名に対しゴルフ場やゴミ集積場等において暴行を加え、瀕死の状態に陥らせた。その後、両名の顔面をビニール袋で覆った上で、さらにその上からガムテープを巻き付けて窒…
事件番号: 平成20(あ)909 / 裁判年月日: 平成24年12月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】3名の生命を奪い、かつ死体を土中に埋めて遺棄するなどした各犯行(傷害致死、逮捕監禁、殺人等)について、被告人が主導的な役割を果たし、強固な殺意に基づき冷静に残忍な殺害行為に及んでいるなどの諸事情に照らせば、死刑の科刑は正当として是認される。 第1 事案の概要:被告人は、人材派遣業を営む中、(1)雇…
事件番号: 平成18(あ)841 / 裁判年月日: 平成22年1月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】極めて組織的かつ計画的な犯行により26名もの命を奪った事案において、被告人が教団幹部として重要な役割を果たした責任は重大であり、自白による事案解明への寄与等の情状を考慮しても、死刑の科刑は免れない。 第1 事案の概要:オウム真理教の古参幹部である被告人は、教祖と共謀し、坂本弁護士一家殺害事件、松本…