通行地役権の承役地が担保不動産競売により売却された場合において,最先順位の抵当権の設定時に,既に設定されている通行地役権に係る承役地が要役地の所有者によって継続的に通路として使用されていることがその位置,形状,構造等の物理的状況から客観的に明らかであり,かつ,上記抵当権の抵当権者がそのことを認識していたか又は認識することが可能であったときは,通行地役権者は,特段の事情がない限り,登記がなくとも,買受人に対し,当該通行地役権を主張することができる。
通行地役権者が承役地の担保不動産競売による買受人に対し地役権設定登記がなくとも通行地役権を主張することができる場合
民事執行法59条2項,民事執行法188条,民法177条,民法280条
判旨
担保不動産競売により承役地が売却された場合、最先順位の抵当権設定時を基準として、通行地役権が客観的に明らかで、かつ抵当権者がこれを認識し得たときは、登記なくして買受人に対抗できる。
問題の所在(論点)
承役地の買受人に対し、未登記の通行地役権を対抗できるか。特に、抵当権の設定された土地が競売された場合において、対抗要件の欠缺を主張することが信義則上制限される「正当な利益を有しない第三者」に該当するか否かの判断基準が問題となる。
規範
通行地役権の承役地が担保不動産競売により売却された場合、①最先順位の抵当権設定時に、承役地が要役地の所有者によって継続的に通路として使用されていることが、位置・形状・構造等の物理的状況から客観的に明らかであり、かつ、②当該抵当権者がそのことを認識していたか又は認識することが可能であったときは、特段の事情がない限り、登記がなくとも、通行地役権は売却によって消滅せず、買受人に対抗できる。
重要事実
上告人が所有する土地(承役地)の一部には、昭和55年頃に開設された通路が存在していた。承役地には昭和56年および平成10年に抵当権が設定され、平成20年の競売により上告人が買い受けた。一方、被上告人らは、前の所有者との間で通路につき通行地役権を設定する合意をしていたが、設定登記は未了であった。原審は、買受人である上告人が売却時に通路の存在を認識可能であったことを理由に、被上告人らの通行地役権を認めたため、上告人が上告した。
あてはめ
通行地役権の対抗可能性は、競売による売却時の事情ではなく、最先順位の抵当権設定時の事情によって判断されるべきである。なぜなら、抵当権者は設定時に通行権の存在を調査・推認することが可能であり、その状況下で担保権を設定した以上、登記の欠缺を主張することは信義に反するからである。本件において、原審は売却時(上告人の取得時)の状況のみを重視しており、最先順位の抵当権(昭和56年設定)当時の客観的状況や抵当権者の認識可能性について審理を尽くしていない。
結論
原判決を破棄し、最先順位の抵当権設定時における通路の使用状況および抵当権者の認識可能性を調査させるため、本件を原審に差し戻す。
実務上の射程
未登記地役権の対抗力を認めた判例(最判昭41・12・22等)を抵当権が関与する競売事案に適用したものである。答案上は、不動産登記法177条の「第三者」の例外として信義則を論じる際、判断の基準時が「最先順位の抵当権設定時」であることを明記して使う必要がある。
事件番号: 昭和46(オ)630 / 裁判年月日: 昭和47年4月14日 / 結論: 棄却
袋地の所有権を取得した者は、所有権取得登記を経由していなくても、囲繞地の所有者ないし利用権者に対して、囲繞地通行権を主張することができる。
事件番号: 平成9(オ)966 / 裁判年月日: 平成10年2月13日 / 結論: 棄却
通行地役権の承役地が譲渡された場合において、譲渡の時に、右承役地が要役地の所有者によって継続的に通路として使用されていることがその位置、形状、構造等の物理的状況から客観的に明らかであり、かつ、譲受人がそのことを認識していたか又は認識することが可能であったときは、譲受人は、通行地役権が設定されていることを知らなかったとし…
事件番号: 平成17(受)1208 / 裁判年月日: 平成18年3月16日 / 結論: その他
自動車による通行を前提とする民法210条1項所定の通行権の成否及びその具体的内容は,公道に至るため他の土地について自動車による通行を認める必要性,周辺の土地の状況,上記通行権が認められることにより他の土地の所有者が被る不利益等の諸事情を総合考慮して判断すべきである。