袋地の所有権を取得した者は、所有権取得登記を経由していなくても、囲繞地の所有者ないし利用権者に対して、囲繞地通行権を主張することができる。
袋地の未登記所有者と囲繞地通行権の主張
民法210条,民法177条
判旨
袋地の所有権を実体上取得した者は、所有権取得登記を経由していなくても、囲繞地の所有者等に対して囲繞地通行権を主張することができる。囲繞地通行権は相隣関係に基づく所有権の共存の一態様であり、不動産取引の安全を目的とする公示制度の対象外だからである。
問題の所在(論点)
袋地の所有権を取得した者が、所有権取得登記(民法177条)を経由していない場合に、囲繞地所有者に対して囲繞地通行権(民法210条)を主張することができるか。
規範
囲繞地通行権(民法210条)の主張において、袋地取得の対抗要件(同法177条)は不要である。相隣関係の規定(民法209条〜238条)は、隣接不動産相互間の利用調整を目的として所有権の内容を画定するものであり、不動産取引の安全を保護する公示制度の範疇に属さないからである。したがって、実体上袋地の所有権を取得した者は、未登記であっても囲繞地所有者らに対し通行権を主張し得る。
重要事実
被上告人(原告)は、りんご樹を植栽する複数の畑を所有しているが、その一部((五)の畑)については、実体上の所有権を取得しているものの、所有権取得登記を経由していなかった。上告人(被告)は、当該未登記の土地を除外すれば被上告人の土地は袋地にならない、あるいは未登記の者は囲繞地所有者に対して通行権を対抗できないと主張して、通行の妨害(溝渠の掘削等)を行った。
あてはめ
本件において、被上告人は(五)の畑につき実体上の所有権を取得している。囲繞地通行権は、袋地の効用を全うさせるために囲繞地所有者に受忍義務を課す相隣関係上の権利であり、取引の安全とは無関係である。そうである以上、(五)の畑についての登記の有無は、被上告人が上告人に対し通行権を主張する上での妨げとはならず、当該土地を含めた状況に基づき袋地性を判断すべきである。
結論
被上告人は未登記であっても囲繞地通行権を主張できる。また、既存の通路が利用方法(りんご樹植栽)に照らし必要性を充足しない以上、当該土地はなお袋地にあたり、上告人は通行を妨害してはならない。
実務上の射程
相隣関係に基づく権利(公道に至るための他の土地の通行権)は、所有権の効力そのものに含まれるため、対抗問題が生じないことを明確にした。答案上は、民法177条の「第三者」の範囲を画定する際の特殊な例外(相隣関係)として位置づけ、登記がなくても権利主張が可能である根拠として「相隣関係は取引の安全とは無関係である」という趣旨を論じる際に用いる。
事件番号: 昭和34(オ)1132 / 裁判年月日: 昭和37年3月15日 / 結論: 棄却
土地が路地状部分で公路に通じており、既存建物所有により右土地の利用をするのになんらの支障がない場合、その路地状部分が東京都建築安全条例第三条所定の幅員に欠けるとの理由で増築につき建築基準適合の確認がして貰えないというだけでは、民法第二一〇条の囲繞地通行権は成立しない。
事件番号: 平成17(受)1208 / 裁判年月日: 平成18年3月16日 / 結論: その他
自動車による通行を前提とする民法210条1項所定の通行権の成否及びその具体的内容は,公道に至るため他の土地について自動車による通行を認める必要性,周辺の土地の状況,上記通行権が認められることにより他の土地の所有者が被る不利益等の諸事情を総合考慮して判断すべきである。
事件番号: 平成8(オ)539 / 裁判年月日: 平成11年7月13日 / 結論: その他
公道に一・四五メートル接する甲土地の上に建築基準法が施行されるよりも前から存在した建築物が老朽化したために取り壊されたが、その当時、甲土地に隣接し右公道に接する乙土地は同法の規定が適用される建築物の敷地とされていたなど判示の事実関係の下においては、甲土地の所有者のために、乙土地について、同法四三条一項本文所定のいわゆる…
事件番号: 平成23(受)1644 / 裁判年月日: 平成25年2月26日 / 結論: 破棄差戻
通行地役権の承役地が担保不動産競売により売却された場合において,最先順位の抵当権の設定時に,既に設定されている通行地役権に係る承役地が要役地の所有者によって継続的に通路として使用されていることがその位置,形状,構造等の物理的状況から客観的に明らかであり,かつ,上記抵当権の抵当権者がそのことを認識していたか又は認識するこ…