土地が路地状部分で公路に通じており、既存建物所有により右土地の利用をするのになんらの支障がない場合、その路地状部分が東京都建築安全条例第三条所定の幅員に欠けるとの理由で増築につき建築基準適合の確認がして貰えないというだけでは、民法第二一〇条の囲繞地通行権は成立しない。
既存通路が東京都建築安全条例第三条所定の幅員に欠ける場合と民法第二一〇条の囲繞地通行権の成否
民法210条,建築基準法6条,建築基準法43条,東京都建築安全条例3条
判旨
民法210条の囲繞地通行権は、土地の利用における往来通行に不可欠な場合に認められるものであり、建築基準法関係の条例が定める幅員を満たさないために建物の増築が制限されるという理由だけでは認められない。
問題の所在(論点)
物理的に公路に通じる通路が存在し、既存建物の利用に支障がない場合において、建築安全条例上の幅員制限を満たさず増築が制限されるという事情が、民法210条1項の通行権を発生させる根拠となるか。
規範
民法210条1項にいう「他の土地に囲まれて公路に通じないとき」とは、土地と公路との間に往来・通行を可能とする通路が物理的に存在しない場合、または既存の通路が通行の目的に著しく不十分な場合を指す。建築基準法や地方自治体の条例(建築安全条例等)が定める接道義務や幅員制限を満たさないという公法上の不利益は、直ちに同条の要件を満たすものではなく、土地利用の実態に照らした通行の必要性から判断されるべきである。
重要事実
上告人は、幅2.28m、長さ20.45mの路地状部分を介して公路に通じる土地を所有しており、既存の建物を利用する上では通行に支障はなかった。しかし、上告人は建物の増築を計画したところ、右路地状部分が東京都建築安全条例第3条の所要幅員を満たさないため、建築確認を受けることができなかった。そこで上告人は、増築を実現するために必要な幅員を確保すべく、民法210条に基づく囲繞地通行権を主張して、隣地の通行権確認を求めた。
事件番号: 平成8(オ)539 / 裁判年月日: 平成11年7月13日 / 結論: その他
公道に一・四五メートル接する甲土地の上に建築基準法が施行されるよりも前から存在した建築物が老朽化したために取り壊されたが、その当時、甲土地に隣接し右公道に接する乙土地は同法の規定が適用される建築物の敷地とされていたなど判示の事実関係の下においては、甲土地の所有者のために、乙土地について、同法四三条一項本文所定のいわゆる…
あてはめ
上告人の土地は、幅2m超の路地状部分によって物理的に公路と通じており、現状の土地利用(既存建物の所有・使用)において往来通行に支障はない。上告人が主張する通行権の必要性は、純粋な通行そのものの不可欠性にあるのではなく、増築という特定の目的を達するための公法(条例)上の要件を満たすことにすぎない。このような公法上の規制による不利益は、土地と公路との遮断という私法上の通行権の制度趣旨を超えたものであり、本件土地を「公路に通ぜざるとき」に当たる袋地と認めることはできない。
結論
建築安全条例の規定を満たさないという理由だけでは、民法210条の囲繞地通行権は成立しない。したがって、上告人の請求は認められない。
実務上の射程
物理的な通路が存在する「準袋地」事案において、建築基準法上の接道要件を満たすための通行権拡張を否定した重要判例である。答案では、公法上の建築制限がある場合でも、民法上の通行権はあくまで「通行の必要性」によって決まり、建築の便宜のために当然に認められるものではないという論理で使用する。
事件番号: 昭和42(オ)1175 / 裁判年月日: 昭和43年3月28日 / 結論: 棄却
分割により公路に面しなくなつた土地であつても、その土地が所有者を同一にする他の土地を経て公路に通ずるものである以上、いわゆる袋地にはあたらないものと解すべきである。
事件番号: 平成17(受)1208 / 裁判年月日: 平成18年3月16日 / 結論: その他
自動車による通行を前提とする民法210条1項所定の通行権の成否及びその具体的内容は,公道に至るため他の土地について自動車による通行を認める必要性,周辺の土地の状況,上記通行権が認められることにより他の土地の所有者が被る不利益等の諸事情を総合考慮して判断すべきである。