判旨
公道への通路であった廃道敷等の土地所有者が、一般公衆の通行を拒絶する意思を表明したことにより袋地が生じた場合、民法210条1項に基づき囲繞地通行権が認められる。
問題の所在(論点)
事実上の通路として利用されていた廃道敷の所有者が通行を拒絶したことにより袋地が生じた場合、民法210条1項の囲繞地通行権が成立するか。また、譲受人に通路が公道か否かを調査する義務があるか。
規範
民法210条1項の「他の土地に囲まれて公道に通じないとき」とは、物理的に公道と接していない場合はもちろん、事実上公道への通路として利用されていた土地について、その所有者が通行を拒絶する意思を表明したことにより公道に出られなくなった場合も含まれる。また、土地の譲受にあたって当該通路が公道か否かを調査すべき義務はない。
重要事実
被上告人らの所有地と公道の間に、上告人所有の廃道敷(本件土地)があった。本件土地は元々公道であったが大正時代に廃止され、その後も一般公衆の通行に供されていた。被上告人らは昭和23年および26年に、元一筆の土地から分筆された各土地を譲り受けた。その後、昭和27年に上告人が本件土地に鉄線を張り、売地の立札を立てて通行拒絶の意思を示したため、被上告人らの土地は公道に通じない状態となった。
あてはめ
被上告人らが土地を譲り受けた時点では、本件土地は一般公衆の通行に供されており、被上告人らは公道へ通じることができていた。その後、上告人が鉄線を張る等の行為により通行を拒絶した結果、被上告人らの土地は本件土地を通らなければ公道に出られない「袋地」になったといえる。この袋地化は土地の分筆譲受自体によって生じたものではない。また、譲受に際して本件土地が法的な公道か否かを調査すべき義務を負わせる根拠はない。
結論
被上告人らの所有地は、上告人所有の本件土地に囲まれて公道に通じないものと認められるため、民法210条1項により本件土地を通行する権利(囲繞地通行権)を有する。
実務上の射程
通路として利用されていた隣接地の法的性質(公道か私道か)を問わず、所有者の態度変更によって事後的に袋地が発生した場合にも民法210条1項が適用されることを示している。分筆に関連する213条の適用の有無が問題となる文脈でも、袋地化の直接原因が分筆か所有者の拒絶かを区別する際の参考となる。
事件番号: 昭和34(オ)1132 / 裁判年月日: 昭和37年3月15日 / 結論: 棄却
土地が路地状部分で公路に通じており、既存建物所有により右土地の利用をするのになんらの支障がない場合、その路地状部分が東京都建築安全条例第三条所定の幅員に欠けるとの理由で増築につき建築基準適合の確認がして貰えないというだけでは、民法第二一〇条の囲繞地通行権は成立しない。
事件番号: 平成8(オ)539 / 裁判年月日: 平成11年7月13日 / 結論: その他
公道に一・四五メートル接する甲土地の上に建築基準法が施行されるよりも前から存在した建築物が老朽化したために取り壊されたが、その当時、甲土地に隣接し右公道に接する乙土地は同法の規定が適用される建築物の敷地とされていたなど判示の事実関係の下においては、甲土地の所有者のために、乙土地について、同法四三条一項本文所定のいわゆる…