土地明渡により袋地を生ずることになつても、囲繞地通行権が民法上考えられているのであるから、右土地明渡請求権行使をもつて、権利濫用とはいえない。
土地明渡の請求権行使により袋地が生じても権利濫用とならない。
民法1条,民法210条,民法211条
判旨
土地の明渡請求によって賃借地が袋地となり公道に通じなくなるとしても、囲繞地通行権による調整が可能である以上、当該請求が当然に権利の濫用にあたるわけではない。
問題の所在(論点)
土地の明渡請求を認容することで、債務者が占有を継続する隣接地が公道に通じない袋地となる場合、当該明渡請求は権利の濫用として制限されるか。
規範
所有権に基づく土地明渡請求が権利の濫用(民法1条3項)にあたるか否かは、請求によって生じる不利益の程度や代替手段の有無を総合的に考慮して判断すべきである。特に、明渡によって袋地が生じる場合であっても、民法210条以下の囲繞地通行権によって通行の確保が法的に予定されている以上、そのことのみをもって直ちに請求を排斥することはできない。
重要事実
上告人は、前地主から賃借した土地上に工場を構え鉄屑商を営んでいた。被上告人が上告人に対し、本件土地の一部の明渡を求めたところ、上告人は、当該部分の明渡に応じると残りの賃借地が他人の土地に囲まれて公道に出られない「袋地」になってしまい、事業継続が不可能になる旨を主張。このような結果を招く明渡請求は権利の濫用であると争った。
あてはめ
上告人は、本件土地の明渡により工場敷地が完全に囲繞され袋地となることを権利濫用の根拠とする。しかし、仮に明渡によって袋地が生じる事態を招くとしても、民法210条および211条は袋地の所有者等に対して囲繞地通行権を認めており、法律上その通行を確保する手段が別途用意されている。したがって、袋地の発生という不利益は通行権制度によって調整されるべき事象であり、明渡請求そのものを権利の濫用として否定すべき決定的な理由にはならない。
結論
土地明渡請求の結果として袋地が生じるとしても、囲繞地通行権の成立が考慮される以上、権利の濫用にはあたらず、請求は認容される。
実務上の射程
明渡請求に対する権利濫用の抗弁において、「明渡による生活・営業への重大な支障」が主張される際の反論として有用である。法的な代替手段(通行権等)が存在する場合には、事実上の不利益のみでは権利濫用が認定されにくいことを示している。
事件番号: 昭和39(オ)869 / 裁判年月日: 昭和43年9月3日 / 結論: その他
土地の買受人が、地上に賃借人が建物を所有して営業していることを知つて、著しく低廉な賃借権付評価額で右土地を取得しながら、右賃借権の対抗力の欠如を奇貨とし、不当の利益を収めようとして、賃借人の生活上および営業上の多大の損失を意に介せず、賃借人に対して建物収去土地明渡を請求するときは、該請求は、権利の濫用として許されない。
事件番号: 昭和33(オ)1024 / 裁判年月日: 昭和35年9月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地所有者が土地の使用を容認していたとはいえない状況において、当該土地の明渡し等を求める請求は、特段の事情がない限り権利の濫用(民法1条3項)には当たらない。 第1 事案の概要:上告人(被告)が本件土地を使用していたところ、被上告人ら(原告)が土地所有権に基づき本訴請求(明渡し等)を提起した。上告…
事件番号: 昭和29(オ)72 / 裁判年月日: 昭和29年7月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】権利の行使が形式上は正当なものであっても、具体的諸事情の下で社会観念上、権利の濫用(民法1条3項)と認められる場合には、その行使は許されない。本件では原審の認定に基づき、被上告人の請求が権利の濫用に当たらないとした判断が支持された。 第1 事案の概要:本件判決文の記述からは具体的な事案の詳細は不明…