判旨
権利の行使が形式上は正当なものであっても、具体的諸事情の下で社会観念上、権利の濫用(民法1条3項)と認められる場合には、その行使は許されない。本件では原審の認定に基づき、被上告人の請求が権利の濫用に当たらないとした判断が支持された。
問題の所在(論点)
被上告人による本訴請求が、具体的状況下において民法1条3項の「権利の濫用」に該当し、その行使が制限されるべきか否かが問題となる。
規範
権利の行使は、信義に則り誠実に行わなければならず、権利の濫用はこれを許さない(民法1条3項)。具体的には、権利行使によって権利者が得る利益と、相手方が被る不利益を比較衡量し、さらには行使の目的、社会的相当性等の諸事情を総合考慮して、社会通念上許容される限度を超える場合には、権利の濫用としてその効力を否定する。
重要事実
本件判決文の記述からは具体的な事案の詳細は不明であるが、被上告人(原告)が上告人(被告)に対して何らかの権利行使(本訴請求)を行い、それに対し上告人側から「権利の濫用」であるとの抗弁が提出された事案である。原審は、当該請求が権利の濫用には当たらないと判断し、上告人がこれを不服として上告した。
あてはめ
最高裁判所は、原判決が認定した事実関係を前提とする限り、被上告人の請求を権利の濫用ではないとした判断は正当であるとした。上告人の主張は、原審が認定しなかった事実を前提とするものや、単なる法令違背の主張に留まっており、原判決の権利濫用に関する判断を覆すに足りる違法は認められないと判断された。
結論
被上告人の請求は権利の濫用には当たらず、その権利行使は正当である。したがって、本件上告は棄却される。
実務上の射程
事件番号: 昭和32(オ)659 / 裁判年月日: 昭和33年5月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】権利の行使が権利の濫用に該当するか否かは、確定された事実関係に基づき、客観的・総合的な諸事情を照らして判断される。本件においては、原審の認定した事実の範囲内では権利の濫用とは認められないと判断された。 第1 事案の概要:上告人らは、被上告人による本訴請求が権利の濫用にあたると主張して争った。原審は…
本判決は、権利濫用の成否が事実認定に強く依存することを示すとともに、上告審においては原審の認定した事実関係を前提に判断がなされるというプロセスを確認するものである。司法試験においては、民法1条3項の適用を検討する際、利益衡量(権利者の利益 vs 義務者の不利益)や目的の正当性といった規範を定立した上で、問題文中の具体的事実をこれらの要素に振り分けて評価する際の基本的枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和34(オ)759 / 裁判年月日: 昭和35年10月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】権利の濫用(民法1条3項)の成否は、原審が確定した事実に即して判断されるべきであり、権利行使が正当な範囲を逸脱していると認められない限り、その請求は容認される。 第1 事案の概要:本判決文からは具体的な事案の詳細は不明であるが、上告人が被上告人の請求に対し、民法1条に違反する権利の濫用であると主張…
事件番号: 昭和33(オ)279 / 裁判年月日: 昭和33年7月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の明渡請求が権利の濫用(民法1条3項)に当たるか否かは、当該請求を認めることが社会通念上著しく正当性を欠くといえるか等の事実関係を総合考慮して判断すべきである。 第1 事案の概要:上告人(被告)に対し、被上告人(原告)が本件建物の明渡しを求めた事案である。原審において認定された事実関係の詳細…
事件番号: 昭和26(オ)719 / 裁判年月日: 昭和28年6月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物収去土地明渡請求が権利の濫用に該当するか否かは、個別の事案における事実関係に基づいて判断される。本件のような事実関係の下では、当該請求が民法1条3項にいう権利の濫用に当たらないことは明白である。 第1 事案の概要:上告人は、被上告人による本件建物の収去及び土地の明渡請求について争い、その請求が…
事件番号: 昭和32(オ)839 / 裁判年月日: 昭和34年5月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本件は、権利の行使が権利の濫用にあたるか否かが争われた事案であるが、最高裁は原審の確定した事実関係に基づき、権利の濫用にはあたらないと判示して上告を棄却した。 第1 事案の概要:本件の具体的な事案の内容や、権利行使の態様に関する重要事実は、提供された判決文からは不明である。原審において何らかの権利…