公職選挙法14条,別表第3の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定の下で,平成22年7月11日施行の参議院議員通常選挙当時,選挙区間における投票価値の不均衡は違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っていたが,上記選挙までの間に上記規定を改正しなかったことが国会の裁量権の限界を超えるものとはいえず,上記規定が憲法14条1項等に違反するに至っていたということはできない。 (補足意見,意見及び反対意見がある。)
公職選挙法14条,別表第3の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定の合憲性
憲法14条1項,憲法15条1項,憲法3項,憲法43条1項,憲法44条,公職選挙法14条,公職選挙法別表第3
判旨
参議院議員選挙の定数配分において、投票価値の不平等が著しい状態が継続している場合は、選挙制度の仕組み自体の見直しを含めた是正が憲法上要求される。本件選挙時点では「違憲の問題が生ずる著しい不平等状態」にあったが、前回の指摘から制度改正に要する合理的期間を経過していないため、憲法違反には至らない。
問題の所在(論点)
参議院議員定数配分規定が、投票価値の平等を要求する憲法14条1項、43条1項等に違反し、本件選挙が無効となるか(国会の立法裁量権の限界を超えているか)。
規範
投票価値の平等は選挙制度決定の唯一絶対の基準ではないが、国会が正当に考慮し得る他の政策的目的との関連において調和的に実現されるべきである。人口変動により投票価値の著しい不平等状態が生じ、それが相当期間継続しているにもかかわらず是正措置を講じないことが、国会の裁量権の限界を超えると判断される場合には、当該定数配分規定は憲法に違反する。
重要事実
平成22年施行の参議院選挙(本件選挙)において、選挙区間の議員1人あたりの選挙人数最大較差は5.00倍に達していた。参議院では都道府県を単位とする選挙区制度が維持されており、過去の判決でも再三、較差の是正や仕組み自体の見直しが求められてきたが、抜本的な改革案の成立には至っていなかった。本件選挙は、平成18年の「4増4減」改正後、2回目の通常選挙として実施された。
あてはめ
最大較差5.00倍は、二院制の趣旨や都道府県を単位とする現行制度の制約を考慮しても看過し得ない程度に達しており、正当化する特別の理由もないため「著しい不平等状態」といえる。しかし、最高裁が制度自体の見直しの必要性を指摘したのは本件選挙の約9か月前(平成21年判決)であり、高度に政治的判断を要する抜本的改正には相応の時間を要する。本件選挙までに改正しなかったことが直ちに国会の裁量権の限界を超えたとはいえない。
結論
本件定数配分規定は、本件選挙当時、憲法に違反するに至っていたとはいえず、選挙を無効とする請求は棄却される。
実務上の射程
参議院選挙における「著しい不平等状態(違憲状態)」と「裁量権の限界逸脱(違憲判決)」を切り分ける判断枠組みを維持しつつ、都道府県単位の仕組み自体の見直しを強く迫った判例。答案では、単なる人口比だけでなく「制度改正に必要な合理的期間」の有無を論じる際の基準となる。
事件番号: 昭和62(行ツ)127 / 裁判年月日: 昭和63年10月21日 / 結論: 棄却
公職選挙法一四条、同法別表第二の参議院選挙区選出議員の議員定数配分規定は、昭和六一年七月六日の参議院議員選挙当時、憲法一四条一項に違反するに至つていたものとはいえない。 (反対意見がある。)