公職選挙法一四条、同法別表第二の参議院選挙区選出議員の議員定数配分規定は、昭和六一年七月六日の参議院議員選挙当時、憲法一四条一項に違反するに至つていたものとはいえない。 (反対意見がある。)
公職選挙法一四条、同法別表第二の参議院選挙区選出議員の議員定数配分規定の合憲性
憲法14条1項,公職選挙法14条,公職選挙法別表第2
判旨
参議院選挙区選出議員の定数配分規定は、都道府県を単位とする地域代表的要素等の合理性が認められるため、投票価値の不平等が国会の裁量権の限界を超える場合に限り憲法違反となる。本件の最大較差1対5.85は、いまだ違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態には至っていない。
問題の所在(論点)
参議院選挙区選出議員の定数配分規定が、投票価値の著しい不平等を生じさせているとして、憲法14条1項に違反するか。また、その違憲判断において参議院独自の性格をどのように考慮すべきか。
規範
参議院議員の定数配分規定が憲法14条1項に違反するか否かは、投票価値の平等の要請と、両院制の下で国会に委ねられた広範な裁量権との権衡により判断される。具体的には、人口異動による不平等が、選挙制度の仕組みに照らして到底看過できない程度の著しい不平等状態にあり、かつ、それが相当期間継続してもなお是正措置を講じないことが、国会の裁量的権限の限界を超えると判断される場合に、初めて違憲となる。参議院は衆議院と異なる代表性格(地域代表的要素等)を付与することが許容されるため、衆議院に比して投票価値の平等の要請は一定の譲歩を免れない。
重要事実
昭和61年7月施行の参議院議員通常選挙当時、公職選挙法の定数配分規定により、選挙区間における議員1人あたりの選挙人数の最大較差は1対5.85に達していた。参議院は都道府県を単位とする選挙区選出(地域代表的要素)と比例代表選出(職能代表的色彩)を組み合わせており、3年ごとに半数を改選する仕組みをとっていた。
あてはめ
参議院は、全都道府県を単位とする選挙区に地域代表的要素を加味しており、人口基準のみでは十分に代表されない国民各層の利益を反映させる仕組みとして合理性を欠かない。このような仕組みの下では、投票価値の平等は人口比例主義を基本とする衆議院よりも後退を免れない。本件の最大較差1対5.85という数値は、参議院の持つ独特の性格や国会に与えられた高度に政策的な判断権限を考慮すれば、いまだ「到底看過することができない著しい不平等状態」にあるとは認められない。
結論
本件選挙当時、本件議員定数配分規定が憲法に違反するに至っていたものとすることはできないため、上告を棄却する。
実務上の射程
参議院定数訴訟における「裁量権限界逸脱説」を確立した判例である。衆議院(1対3基準)と比較して、参議院では地域代表的要素等を理由に、より大きな較差(本判決当時は1対6未満)が容認される傾向にある。答案では、両院の代表性格の差異を論証の出発点とし、裁量権の逸脱を判断する際の考慮要素として用いる。
事件番号: 昭和63(行ツ)24 / 裁判年月日: 昭和63年10月21日 / 結論: 棄却
公職選挙法一三条一項、同法別表第一、同法附則七項ないし一〇項の衆議院議員の議員定数配分規定は、昭和六一年七月六日施行の衆議院議員選挙当時、憲法一四条一項に違反していたものということはできない。 (補足意見及び反対意見がある。)