公職選挙法(昭和五七年法律第八一号による改正前のもの)一四条、同法別表第二による選挙区及び議員定数の定めは、昭和五二年七月一〇日の参議院議員選挙当時、憲法一四条一項、一五条一ないし三項、四三条一項、四四条但し書に違反するに至つていたものとはいえない。
公職選挙法(昭和五七年法律第八一号による改正前のもの)一四条、同法別表第二による選挙区及び議員定数の定めの合憲性
憲法14条1項,憲法15条1ないし3項,憲法43条1項,憲法44条但書,公職選挙法(昭和57年法律第81号による改正前のもの)14条,公職選挙法(昭和57年法律第81号による改正前のもの)別表第2
判旨
参議院議員選挙の定数配分規定は、都道府県を単位とする地方選出議員の仕組みに合理性があり、一対5.26の較差は直ちに違憲とはいえない。衆議院とは異なる代表的機能(地域代表的性格)を考慮すれば、国会の裁量権の範囲内として是認される。
問題の所在(論点)
参議院地方選出議員の定数配分規定(昭和57年改正前公選法14条、別表第2)が、憲法14条1項、15条、44条等の定める投票価値の平等に反して違憲となるか。特に、参議院の独自の性格に基づく広範な立法裁量が認められるかが問題となる。
規範
選挙権の平等(憲法14条1項)は投票価値の平等も要求するが、選挙制度の具体的決定は国会の広範な裁量に委ねられる。具体的には、①当該選挙制度の仕組みにおいて投票価値の平等の重要性に照らし到底看過できない著しい不平等状態が生じ、かつ、②それが相当期間継続して是正措置を講じないことが国会の裁量権の限界を超えると認められる場合に初めて違憲となる。
重要事実
昭和52年施行の参議院議員通常選挙当時、地方選出議員の定数配分規定により、議員1人当たりの選挙人数に最大1対5.26の較差が生じていた。また、一部の選挙区では選挙人数が多いのに定数が少ないという「逆転現象」も発生していた。原告らは、この定数配分規定が平等原則に反し無効であると主張して訴えを提起した。
あてはめ
参議院は二院制の下で衆議院と異なる機能が期待されており、地方選出議員に「都道府県という政治的単位の意思を集約的に反映させる」という地域代表的要素を加味することには合理性がある。この仕組みの下では、投票価値の平等は人口比例主義を基本とする衆議院の場合に比べ一定の譲歩・後退を免れない。一対5.26の較差や逆転現象が生じていても、参議院の半数改選制や非解散制による安定性の要請、及び定数再配分による是正の限界を考慮すれば、国会の裁量権の限界を超えた著しい不平等状態とはいえない。
結論
本件参議院議員定数配分規定は、憲法14条1項等に違反しない。上告棄却。
実務上の射程
参議院定数訴訟において、衆議院(1対3程度が基準)よりも広い裁量を認める際のリーディングケースである。答案上は、二院制の趣旨から「地域代表的性格」を肯定する論拠として用いる。ただし、後の平成24年大法廷判決等により、参議院であっても「投票価値の平等の要請が後退する」という論理は修正され、現在では都道府県単位の区割りの是非自体が厳しく問われている点に注意を要する。
事件番号: 昭和62(行ツ)127 / 裁判年月日: 昭和63年10月21日 / 結論: 棄却
公職選挙法一四条、同法別表第二の参議院選挙区選出議員の議員定数配分規定は、昭和六一年七月六日の参議院議員選挙当時、憲法一四条一項に違反するに至つていたものとはいえない。 (反対意見がある。)