公職選挙法一三条一項、同法別表第一、同法附則七項ないし一〇項の衆議院議員の議員定数配分規定は、昭和六一年七月六日施行の衆議院議員選挙当時、憲法一四条一項に違反していたものということはできない。 (補足意見及び反対意見がある。)
公職選挙法一三条一項、同法別表第一、同法附則七項ないし一〇項の衆議院議員の議員定数配分規定の合憲性
公職選挙法13条1項,公職選挙法13条別表第1,公職選挙法附則7項ないし10項,憲法14条1項
判旨
衆議院議員の定数配分規定において、最大較差が1対2.92に達し不平等が生じていたとしても、1対3未満にまで縮小させた昭和61年改正の経緯等に照らせば、直ちに国会の合理的裁量の限界を超えたものとはいえず、憲法に違反しない。
問題の所在(論点)
議員定数配分規定による1対2.92の較差および逆転現象の存在が、憲法14条1項等の定める投票価値の平等に反し、国会の合理的裁量の限界を超えるものとして違憲となるか。
規範
選挙制度の具体的決定は国会の裁量に委ねられるが、憲法14条1項は投票価値の平等をも所期している。選挙区割と定数配分が、通常考慮し得る諸般の要素を斟酌してもなお、一般に合理性を有するものとは考えられない程度に不平等に達しているときは、国会の合理的裁量の限界を超えたものとして、これを正当化すべき特別の理由がない限り憲法違反となる。
重要事実
昭和61年施行の衆議院議員選挙(中選挙区制)において、定数配分規定(昭和61年改正法)に基づき、議員1人当たりの選挙人数の最大較差は1対2.92であった。また、一部の選挙区間で人口の多い区の議員数が少ない区より少ない「逆転現象」も生じていた。昭和61年改正は、先行する大法廷判決の違憲判断を受け、8増7減等の暫定的な是正措置として行われたものであった。
あてはめ
本件選挙当時の較差1対2.92等の不平等は認められる。しかし、昭和61年改正により、改正前の1対5.12という著しい不平等状態から1対3未満(1対2.99ないし2.92)へと縮小が図られた経緯がある。また、同改正は国勢調査の確定人口を待って抜本的改正を行うまでの暫定措置としてなされたものである。過去の判例が1対2.92程度の較差への縮小をもって不平等状態が一応解消されたと評価した趣旨に照らせば、本件の不平等が、諸般の要素を考慮してもなお合理性を有しない程度に達しているとはいえない。
結論
本件議員定数配分規定は、憲法14条1項等に違反するものとはいえない。
実務上の射程
衆議院における投票価値の平等の合憲性判断基準(裁量限界逸脱説)を維持し、1対3未満の較差であれば、是正の努力が認められる限り合憲とする当時の実務的な閾値を示した。現在は小選挙区制下で「1対2未満」がより厳格な基準として機能しているが、裁量限界の枠組み自体は現在も参照される。
事件番号: 平成23(行ツ)64 / 裁判年月日: 平成24年10月17日 / 結論: 破棄自判
公職選挙法14条,別表第3の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定の下で,平成22年7月11日施行の参議院議員通常選挙当時,選挙区間における投票価値の不均衡は違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っていたが,上記選挙までの間に上記規定を改正しなかったことが国会の裁量権の限界を超えるものとはいえず,上記規定が憲…