死刑の量刑が維持された事例(大阪の中国人留学生・会社員強盗殺人等事件)
判旨
死刑制度は憲法13条、31条、36条に違反しない。死刑の適用については、殺害自体が計画的でないことや自首・反省等の事情を考慮しても、犯行の残虐性、結果の重大性、前科等の事情に照らし、刑事責任が極めて重大な場合には是認される。
問題の所在(論点)
死刑制度の憲法適合性、および強盗殺人2件・同未遂1件の事案において、殺害自体に計画性がないことや自首・反省等の有利な情状がある場合に死刑を選択することの可否(量刑の不当性)。
規範
死刑の選択にあたっては、永山基準(最判昭58.7.8)を前提とし、(1)犯行の性質、(2)動機、(3)態様(特に殺意の強弱・方法の執拗さ・残虐性)、(4)結果の重大性(特に殺害された被害者の数)、(5)遺族の処罰感情、(6)社会的影響、(7)被告人の年齢、(8)前科、(9)犯行後の情状を総合的に考慮し、その罪責が誠に重大であって、罪刑の均衡、一般予防の観点からも極刑がやむを得ないと認められる場合に適用される。
重要事実
被告人は共犯者と共謀し、路上で留学生からバッグを強奪しようとした際、取り押さえようとした男性を負傷させ、追いかけてきた女性をナイフで刺殺した(事案1)。その約7年半後、金銭に窮した被告人は、ビル内のトイレで男性に対し金品を強奪しようとしたが、抵抗されたためナイフで胸部等を数回突き刺して殺害した(事案2)。被告人には過去に凶器を用いた強盗致傷等の前科があり、事案2の1週間後に自ら警察に出頭していた。
あてはめ
各犯行は金銭に窮した末の短絡的な動機に基づくが、凶器を準備し標的を物色するなどの強盗の計画性が認められる。殺害態様は胸部等を突き刺すなど残虐かつ冷酷で、人命軽視の性向が顕著である。2名の生命を奪った結果は極めて重大であり、遺族の処罰感情もしゅん烈である。凶器を用いた強盗等の前科から更生可能性は低い。殺害自体の非計画性や自首、反省の態度といった有利な事情を十分考慮しても、これらを凌駕する刑事責任の重さがあるといえる。
結論
死刑制度は合憲である。被告人の刑事責任は極めて重大であり、第1審の死刑判決を維持した原判決の判断は相当である。
実務上の射程
被害者が2名以上である強盗殺人被告事件において、殺害行為そのものの計画性が否定され、自首等の有利な情状が存在する場合であっても、犯行の残虐性や再犯性(前科)を重視して死刑が維持される実務上の判断枠組みを示す事例である。
事件番号: 平成13(あ)1401 / 裁判年月日: 平成17年6月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強盗殺人等の極めて重大な罪を犯した被告人に対し、犯行の態様が冷酷かつ残忍で結果が甚大であり、前科関係や動機にも酌むべき点がない場合、不遇な成育歴等の事情を考慮しても、死刑の選択は免れない。 第1 事案の概要:被告人は、約半月の間にスナック等の女性経営者計4名を窒息死または失血死させて現金を強奪する…
事件番号: 平成21(あ)776 / 裁判年月日: 平成24年3月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】2名の命を奪った強盗殺人事件において、計画性、犯行態様の残虐性、結果の重大性、遺族の処罰感情、及び犯後の情状を総合考慮し、死刑の選択を是認した事例。 第1 事案の概要:被告人は、強盗目的で知人宅を訪れ、凶器(鈍体及び緊縛用の針金)を準備した上で、知人夫婦(2名)を相次いで襲撃した。犯行態様は、頭部…
事件番号: 平成12(あ)1160 / 裁判年月日: 平成16年12月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法13条、36条に違反せず、強盗殺人事件において主導的な役割を果たし、犯行態様が冷酷かつ結果が重大である場合、共犯者の刑罰との均衡を考慮しても死刑の選択はやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人はバカラ賭博の借金返済に窮し、共犯者と共謀して貴金属販売業者の男性と交際相手の女性を殺害して…
事件番号: 昭和45(あ)293 / 裁判年月日: 昭和47年2月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度そのものは憲法36条が禁じる「残虐な刑罰」には当たらない。また、強盗殺人罪等の重大な犯罪に対して死刑を科すことは、諸般の情状を考慮した上でやむを得ない場合には憲法上許容される。 第1 事案の概要:被告人は強盗殺人等の罪に問われ、一審および二審において死刑の判決を受けた。弁護人は、死刑制度そ…