仮に、所論のように、当時被疑者であつた被告人と弁護人との間の接見交通に対し検察官による不法な制限があつたとしても、本件においては、その制限があるとされた以前の段階において被告人が犯行を全面的に自白しており、しかも、第一審の公判において、被告人側は所論の自白調書をすべて証拠とすることに同意していることが記録上明らかであるから、所論憲法三四条違反の主張は、結局判決に影響を及ぼさない訴訟法違反のあることを前提とするものであつて、適法な上告理由にあたらない。
接見交通の不法制限と自白の証拠能力
憲法34条前段,憲法37条3項,憲法38条,刑訴法39条,刑訴法319条1項
判旨
検察官による不当な接見交通の制限があったとしても、制限前の段階で自白が得られ、かつ公判で当該自白調書の証拠採用に同意がある場合には、判決に影響を及ぼさない訴訟法違反にとどまる。また、強盗殺人罪(刑法240条後段)に死刑を規定することは憲法31条および36条に違反しない。
問題の所在(論点)
1. 捜査段階における接見交通の不当な制限が、公判における自白調書の証拠能力や判決の効力にどのような影響を及ぼすか。2. 死刑を規定する刑法240条後段が、憲法31条および36条に違反するか。
規範
1. 接見交通権(憲法34条、刑訴法39条)の不当な制限が認められる場合であっても、それが直ちに判決の取り消し事由となるわけではなく、当該制限が判決に影響を及ぼしたか否かによって決せられる。2. 死刑制度そのもの、および特定の罪名(刑法240条等)について死刑を規定することは、憲法31条(適正手続)および36条(残虐な刑罰の禁止)に違反しない。
重要事実
被告人が強盗殺人の罪等に問われ、第一審で死刑判決を受けた事案。被告人側は、捜査段階において検察官により弁護人との接見交通を不当に制限されたため、憲法34条等に違反し、自白調書の証拠能力が否定されるべきであると主張した。また、刑法240条後段が死刑を定めていることは憲法に違反するとの主張もなされた。記録上、接見制限が疑われる時期以前に被告人は全面的に自白しており、かつ第一審公判において被告人側は当該自白調書をすべて証拠とすることに同意していた。
事件番号: 平成21(あ)2078 / 裁判年月日: 平成24年7月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法13条、31条、36条に違反しない。死刑の適用については、殺害自体が計画的でないことや自首・反省等の事情を考慮しても、犯行の残虐性、結果の重大性、前科等の事情に照らし、刑事責任が極めて重大な場合には是認される。 第1 事案の概要:被告人は共犯者と共謀し、路上で留学生からバッグを強奪し…
あてはめ
1. 接見制限の主張について、仮に不法な制限があったとしても、本件では制限がなされたとされる前の段階ですでに被告人が犯行を全面的に自白している。さらに、第一審の公判において被告人側が自白調書の証拠採用に同意している事実がある。したがって、当該制限は判決に影響を及ぼすほどの重大な訴訟法違反とはいえない。2. 死刑規定の合憲性について、最高裁大法廷判決(昭和23年3月12日)の例に照らし、死刑は憲法36条の「残虐な刑罰」に当たらず、死刑を定めた刑法の規定も憲法31条に違反しない。本件の犯行態様に照らせば、極刑の適用もやむを得ない。
結論
1. 接見制限が判決に影響を及ぼさない本件では、違憲の主張は適法な上告理由に当たらない。2. 刑法240条後段の死刑規定は憲法31条・36条に違反しない。上告棄却。
実務上の射程
接見交通権侵害を理由とする証拠排除や判決破棄を狙う際、制限前の自白の有無や公判での証拠同意の有無が決定的な判断材料となることを示している。死刑制度の合憲性については、昭和22年(れ)11号判決を維持する標準的な判旨として引用可能である。
事件番号: 昭和45(あ)293 / 裁判年月日: 昭和47年2月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度そのものは憲法36条が禁じる「残虐な刑罰」には当たらない。また、強盗殺人罪等の重大な犯罪に対して死刑を科すことは、諸般の情状を考慮した上でやむを得ない場合には憲法上許容される。 第1 事案の概要:被告人は強盗殺人等の罪に問われ、一審および二審において死刑の判決を受けた。弁護人は、死刑制度そ…