死刑が違憲である旨の主張があつた場合に、原判決が選択刑として規定している刑法第二四〇条後段を適用挙示して被告人を死刑に処した第一審判決の量刑につき、これを不当とする事由を発見することができない旨を判示したときは、死刑は憲法に適合するとの判断を示したものと解することができる。
憲法違反の主張に対し判断を示したものと認められる一事例
憲法81条,刑訴法392条1項
判旨
死刑制度を規定する現行刑法は憲法9条及び36条に違反せず、強盗殺人未遂等の罪状に対し死刑を処した量刑判断は正当である。
問題の所在(論点)
死刑制度を定める刑法の規定(本件では刑法240条後段)が、憲法36条が禁じる「残虐な刑罰」や憲法9条に抵触し違憲となるか。
規範
現行刑法が死刑を選択刑として規定していることは、憲法9条(戦争の放棄)及び36条(拷問及び残虐な刑罰の禁止)の規定に違反するものではない。
重要事実
被告人は、甲に対して脅迫を用い金員を強取した。その後、さらに乙外2名に対しても脅迫して金品を強取しようとした際、乙を殺害し、残る2名についても殺害しようとしたが、その目的を遂げなかった(強盗殺人及び同未遂等)。第一審判決は死刑を言い渡し、原審もこれを維持したため、被告人側が死刑の違憲性等を理由に上告した。
あてはめ
最高裁判所の累次の判例によれば、死刑そのものは憲法36条にいう「残虐な刑罰」には当たらない。また、平和主義を定める憲法9条との関係においても、死刑制度を維持することは何ら矛盾するものではない。本件被告人の行為は、強盗の際に1名を殺害し2名を殺害しようとした重大な犯罪であり、これに対して死刑を選択した第一審判決及びそれを是認した原判決に憲法違反や不当な点は認められない。
結論
死刑制度は合憲であり、被告人を死刑に処した原判決は正当であるとして上告を棄却した。
実務上の射程
死刑制度の合憲性を端的に示した判例である。司法試験においては、刑事法や憲法の論述で死刑制度の是非が問われた際、昭和23年の大法廷判決と並び、合憲性の根拠として簡潔に引用する足場となる。
事件番号: 昭和28(あ)997 / 裁判年月日: 昭和28年9月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は、日本国憲法第36条が禁止する「残虐な刑罰」には当たらない。過去の大法廷判決の判例を維持し、死刑の合憲性を認めるべきである。 第1 事案の概要:被告人A及びBは、第一審・第二審において死刑の判決を受けた。これに対し弁護人は、死刑は憲法36条が禁止する残虐な刑罰に該当するものであり、死刑を…
事件番号: 昭和45(あ)293 / 裁判年月日: 昭和47年2月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度そのものは憲法36条が禁じる「残虐な刑罰」には当たらない。また、強盗殺人罪等の重大な犯罪に対して死刑を科すことは、諸般の情状を考慮した上でやむを得ない場合には憲法上許容される。 第1 事案の概要:被告人は強盗殺人等の罪に問われ、一審および二審において死刑の判決を受けた。弁護人は、死刑制度そ…