普通預金債権のうち差押命令送達時後同送達の日から起算して1年が経過するまでの入金によって生ずることとなる部分を差押債権として表示した債権差押命令の申立ては,第三債務者において,特定の普通預金口座への入出金を自動的に監視し,常に預金残高を一定の金額と比較して,これを上回る部分についてのみ払戻請求に応ずることを可能とするシステムは構築されていないなど判示の事情の下においては,差押債権の特定を欠き,不適法である。 (補足意見がある。)
普通預金債権のうち差押命令送達時後同送達の日から起算して1年が経過するまでの入金によって生ずることとなる部分を差押債権として表示した債権差押命令の申立てが,差押債権の特定を欠き不適法であるとされた事例
民事執行法143条,民事執行規則133条2項
判旨
普通預金債権の差押えにおいて、差押命令送達後から一定期間内の入金分(将来預金)を対象とする表示は、第三債務者にとって差し押さえられた債権を速やかかつ確実に識別できるものとはいえず、差押債権の特定を欠き不適法である。
問題の所在(論点)
債権差押命令の申立てにおいて、特定の普通預金口座につき、差押命令送達時に現に存在する預金(現存預金)だけでなく、送達後1年間の入金分(将来預金)を差し押さえる旨の表示が、差押債権の特定(民事執行規則133条2項)として適法か。
規範
債権差押命令における差押債権の特定は、送達を受けた第三債務者が、送達時点から「速やかに、かつ、確実に、差し押さえられた債権を識別することができる」程度になされる必要がある。将来債権については、第三債務者のシステム上の管理可能性や負担、差押債権とそれ以外の区別の容易性を考慮し、識別可能性の有無を判断すべきである。
重要事実
抗告人は、普通預金債権の差押えに際し、現存預金に加え、送達から1年以内の入金により生じる将来預金を表示した。しかし、第三債務者(銀行)においては、窓口外でもATMやネットで24時間入出金が行われ、特定の口座を自動監視して差押額を超える部分のみ払戻しを可能にするシステムは構築されておらず、速やかな実現も期待できない状況にあった。
事件番号: 平成23(許)34 / 裁判年月日: 平成23年9月20日 / 結論: 棄却
1 債権差押命令の申立てにおける差押債権の特定は,債権差押命令の送達を受けた第三債務者において,直ちにとはいえないまでも,差押えの効力が上記送達の時点で生ずることにそぐわない事態とならない程度に速やかに,かつ,確実に,差し押さえられた債権を識別することができるものであることを要する。 2 大規模な金融機関の全ての店舗又…
あてはめ
将来預金を差押対象に含めると、第三債務者は入出金のたびに、残高のうち差押えの効力が及ぶ部分と及ばない部分(払戻請求に応ずべき部分)を区別して把握する作業を強いられる。本件の事実関係に照らせば、将来預金の部分については、第三債務者が速やかかつ確実に債権を識別できるとはいえない。一方、現存預金と将来預金が区別して表示されている場合、現存預金については識別が可能であり、特定に欠けるところはない。
結論
将来預金に関する差押えの申立ては特定を欠き不適法であるが、現存預金に関する部分は特定を具備しており適法である。したがって、現存預金部分の申立てを却下した原決定は取り消されるべきである。
実務上の射程
普通預金・当座預金のような流動性の高い債権の将来分については、銀行の実務的負担やシステム上の制約から「特定」のハードルが極めて高く設定されている。答案上は、債権特定を要する趣旨(第三債務者の二重弁済防止・負担軽減)から説き起こし、本判例を将来債権差押えの限界を示す規範として引用すべきである。
事件番号: 平成13(許)30 / 裁判年月日: 平成14年6月13日 / 結論: 棄却
抵当権に基づく物上代位権の行使としてされた債権差押命令に対する執行抗告においては,被差押債権の不存在又は消滅を理由とすることはできない。
事件番号: 平成28(許)46 / 裁判年月日: 平成29年10月10日 / 結論: 破棄自判
債権差押命令の申立書に請求債権中の遅延損害金につき申立日までの確定金額を記載させる執行裁判所の取扱いに従って債権差押命令の申立てをした債権者が当該債権差押命令に基づく差押債権の取立てとして第三債務者から金員の支払を受けた場合,申立日の翌日以降の遅延損害金も上記金員の充当の対象となる。
事件番号: 令和4(許)6 / 裁判年月日: 令和4年8月16日 / 結論: 棄却
刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律98条の定める作業報奨金の支給を受ける権利に対して強制執行をすることはできない。
事件番号: 令和4(許)13 / 裁判年月日: 令和5年3月29日 / 結論: 破棄差戻
第三債務者が差押命令の送達を受ける前に債務者との間で差押えに係る金銭債権の支払のために電子記録債権を発生させた場合において、上記差押えに係る金銭債権について発せられた転付命令が第三債務者に送達された後に上記電子記録債権の支払がされたときは、上記支払によって民事執行法160条による上記転付命令の執行債権及び執行費用の弁済…