不法に被害者を監禁し,その結果,被害者が,医学的な診断基準において求められている特徴的な精神症状が継続して発現していることなどから外傷後ストレス障害(PTSD)を発症したと認められる場合,同障害の惹起は刑法にいう傷害に当たり,監禁致傷罪が成立する。
不法に被害者を監禁し,その結果,被害者に外傷後ストレス障害(PTSD)を発症させた場合について,監禁致傷罪の成立が認められた事例
刑法221条,刑法204条
判旨
不法な監禁行為等により、医学的な診断基準における特徴的な精神症状が継続して発現する外傷後ストレス障害(PTSD)を惹起した事案において、かかる精神的機能の障害も刑法上の「傷害」に当たると解される。
問題の所在(論点)
不法な監禁行為等によって引き起こされたPTSD(外傷後ストレス障害)のような精神的障害が、監禁致傷罪(刑法221条)および傷害罪(同204条)にいう「傷害」の概念に含まれるか。
規範
刑法上の「傷害」とは、生理的機能を毀損することを指し、これには肉体的な損傷のみならず、精神的機能の障害を惹起した場合も含まれる。
重要事実
被告人は、本件各被害者を不法に監禁した。その際、監禁行為やその手段として加えられた暴行および脅迫により、被害者らには一時的な精神的苦痛やストレスにとどまらない症状が発現した。具体的には、再体験症状、回避・精神麻痺症状および過覚醒症状といった医学的な診断基準が求める特徴的な精神症状が継続し、精神疾患の一種である外傷後ストレス障害(PTSD)の発症が認められるに至った。
事件番号: 昭和42(あ)1482 / 裁判年月日: 昭和42年12月21日 / 結論: 棄却
暴行が不法監禁中になされたものであつても、その手段としてなされたものでなく、別個の動機、原因からなされた場合において、右暴行の結果被害者に傷害を負わせたときは、監禁致傷罪ではなく、監禁と傷害の二罪が成立し、両者は併合罪の関係となる。
あてはめ
被害者らに生じたPTSDは、単なる一時的な精神的苦痛やストレスの範囲を超えたものである。医学的診断基準に合致する特徴的な精神症状(再体験、回避、過覚醒等)が継続して発現している事実に照らせば、それは個人の精神的機能を著しく阻害するものといえる。したがって、このような精神疾患の発症は、人の生理的機能を毀損したものと評価でき、刑法上の傷害に該当すると判断される。
結論
精神的機能の障害を惹起した場合も刑法にいう傷害に当たるため、各被害者に対する監禁致傷罪の成立を認めた原判断は正当である。
実務上の射程
傷害の概念が生理的機能障害であることを再確認し、PTSD等の精神疾患もこれに含まれることを明示した重要な判断である。答案上は、傷害の定義(生理的機能障害説)を提示した上で、本決定を根拠に「医学的診断基準を満たす精神疾患」が傷害に当たる旨を論証する。また、強姦致死傷罪等の他罪における「負傷」の解釈においても同様の論理が及び得る。
事件番号: 昭和24(れ)933 / 裁判年月日: 昭和24年7月12日 / 結論: 破棄自判
一 強姦に際し婦女に傷害の結果を與えれば姦淫が未遂であつても強姦致傷罪の既遂となり、強姦致傷罪の未遂という觀念を容れることはできない。 二 被告人等は同女を強姦しようと共謀して判示犯行をとげたのであり、そして強姦致傷罪は結果的加重犯であつて、暴行脅迫により姦淫をする意志があれば、傷害を與えることについて認識がなくとも同…