暴行が不法監禁中になされたものであつても、その手段としてなされたものでなく、別個の動機、原因からなされた場合において、右暴行の結果被害者に傷害を負わせたときは、監禁致傷罪ではなく、監禁と傷害の二罪が成立し、両者は併合罪の関係となる。
不法監禁中になされた暴行により被害者が傷害を負つた場合に監禁致傷罪ではなく監禁と傷害の二罪が成立するとされた事例
刑法204条,刑法220条1項,刑法221条,刑法45条
判旨
監禁致傷罪が成立するためには、暴行が不法監禁の状態を保持する手段としてなされることを要し、単に監禁の機会に憤慨してなされた暴行により傷害を負わせたに過ぎない場合は、監禁罪と傷害罪の併合罪となる。
問題の所在(論点)
不法監禁の継続中に、監禁を継続する意図ではなく、被害者の言動に憤慨して暴行を加え傷害を負わせた場合、監禁致傷罪が成立するか、あるいは監禁罪と傷害罪の併合罪となるか。
規範
監禁致傷罪(刑法221条)の成立には、致傷の原因となった暴行等が不法監禁の状態を維持するための手段としてなされることを要する。監禁の機会になされた暴行であっても、監禁の手段としての性質を有しない場合には、監禁罪と傷害罪が別個に成立し、両者は併合罪(刑法45条前段)の関係に立つ。
重要事実
被告人は被害者Aを自動車内に不法に監禁していた。その際、被告人は自動車内におけるAの態度に憤慨し、Aの顔面を打撃する等の暴行を加え、顔面打撲等の傷害を負わせた。第一審および原審は、この事実を監禁致傷罪として処断した。
あてはめ
本件における被告人の暴行は、第一審の判示によれば「監禁の状態を保つための手段」としてなされたものではない。むしろ、自動車内における被害者の態度に憤慨したという別個の動機に基づくものである。したがって、たとえ不法監禁の機会になされた暴行であっても、監禁致傷罪の構成要件には該当せず、監禁罪と傷害罪が各別に成立すると評価される。
結論
監禁致傷罪は成立せず、監禁罪と傷害罪の併合罪となる。もっとも、本件では監禁致傷罪として処断しても傷害罪の刑を基準とする点等で被告人に不利益とはいえず、判決の破棄までは要しない。
実務上の射程
結果的加重犯である監禁致傷罪の成否について、「監禁の手段」としての暴行が必要であることを示した重要な射程を持つ。答案上では、暴行が監禁を維持・強化するために行われたのか、単に監禁中に行われた別個の動機によるものかを区別する際の規範として活用できる。
事件番号: 昭和42(あ)230 / 裁判年月日: 昭和42年6月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】監禁致傷罪と強姦罪(当時)の関係について、両罪を併合罪(刑法45条)として処理した一審判決の判断を正当とした。 第1 事案の概要:被告人が被害者を監禁し、その過程で負傷(監禁致傷)させた上、さらに強姦に及んだ事案。一審判決は、監禁致傷罪と強姦罪の成立を認め、これらを併合罪として処断した。弁護人は、…
事件番号: 昭和41(あ)2135 / 裁判年月日: 昭和42年2月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自動車を用いて監禁し、その車内等で暴行・脅迫を加えて強姦・致傷に至った場合、監禁行為と強姦致傷行為はそれぞれ独立した行為として評価され、監禁罪と強姦致傷罪(当時)の併合罪となる。 第1 事案の概要:被告人は、被害者を自動車に押し込み、不法に監禁した。その後、車内等において強姦の目的で別途暴行および…
事件番号: 平成16(あ)2077 / 裁判年月日: 平成17年4月14日 / 結論: 棄却
恐喝の手段として監禁が行われた場合であっても,両罪は,牽連犯の関係にはない。
事件番号: 平成22(あ)2011 / 裁判年月日: 平成24年7月24日 / 結論: 棄却
不法に被害者を監禁し,その結果,被害者が,医学的な診断基準において求められている特徴的な精神症状が継続して発現していることなどから外傷後ストレス障害(PTSD)を発症したと認められる場合,同障害の惹起は刑法にいう傷害に当たり,監禁致傷罪が成立する。