判旨
自動車を用いて監禁し、その車内等で暴行・脅迫を加えて強姦・致傷に至った場合、監禁行為と強姦致傷行為はそれぞれ独立した行為として評価され、監禁罪と強姦致傷罪(当時)の併合罪となる。
問題の所在(論点)
不法監禁の継続中に強姦致傷が行われた場合において、不法監禁罪と強姦致傷罪(現:強制性交等致死傷罪)の罪数関係が、観念的競合(刑法54条1項前段)となるか、あるいは併合罪(刑法45条前段)となるか。
規範
監禁の手段として行われた暴行・脅迫が、同時に強姦の手段としての暴行・脅迫を兼ねる場合であっても、監禁行為自体が強姦の手段に包含されない限り、両罪は吸収関係に立たず、別罪として成立する(併合罪)。
重要事実
被告人は、被害者を自動車に押し込み、不法に監禁した。その後、車内等において強姦の目的で別途暴行および脅迫を加え、被害者に傷害を負わせた。第一審および原審は、この監禁の事実と強姦致傷の事実をそれぞれ独立の犯罪として認定し、併合罪として処断した。被告人側は、強姦の手段として行われた暴行・脅迫は監禁の事実の一部である等として、判例違反を主張して上告した。
あてはめ
本件において、強姦の手段として認定された暴行および脅迫は、自動車による不法監禁の態様そのものではなく、監禁状態という先行する違法状態において別途行われたものである。したがって、監禁行為そのものが強姦致傷罪の手段に直ちに包含されるとはいえず、両罪の構成要件的行為は重ならない。よって、両罪は別個の行為に基づき成立するものと解される。
結論
被告人の行為には監禁罪と強姦致傷罪が成立し、これらは併合罪の関係に立つ。
実務上の射程
監禁中に性犯罪が行われた場合の罪数判断の基準を示す。監禁が性犯罪の手段として不可欠な一部となっている場合(密接不可分な場合)は観念的競合を検討する余地があるが、本判例の射程によれば、監禁により場所的離脱を困難にした後で行われた暴行・脅迫は別個の行為と評価され、併合罪とされる蓋然性が極めて高い。
事件番号: 昭和42(あ)1482 / 裁判年月日: 昭和42年12月21日 / 結論: 棄却
暴行が不法監禁中になされたものであつても、その手段としてなされたものでなく、別個の動機、原因からなされた場合において、右暴行の結果被害者に傷害を負わせたときは、監禁致傷罪ではなく、監禁と傷害の二罪が成立し、両者は併合罪の関係となる。
事件番号: 昭和37(あ)1778 / 裁判年月日: 昭和38年4月18日 / 結論: 棄却
婦女を強いて姦淫しようと企て、自己の運転する第二種原動機付自転車荷台に乗車せしめ、一〇〇〇メートル余り疾走した場合は、不法監禁罪が成立する。