恐喝の手段として監禁が行われた場合であっても,両罪は,牽連犯の関係にはない。
恐喝の手段として監禁が行われた場合の罪数関係
刑法45条,刑法54条1項,刑法220条,刑法249条
判旨
恐喝の手段として監禁が行われた場合であっても、両罪は犯罪の通常の形態として手段又は結果の関係にあるとは認められず、牽連犯(刑法54条1項後段)ではなく併合罪(同45条前段)の関係に立つ。
問題の所在(論点)
恐喝罪の手段として監禁致傷罪(あるいは監禁罪)が行われた場合、両罪は「手段の結果の関係」にあるものとして牽連犯となるか、あるいは併合罪となるか。
規範
刑法54条1項後段の「其の罪の手段……たる行為」とは、ある罪の性質上、その手段として通常行われる関係にあるものをいう。恐喝罪と監禁罪との関係については、他人の行動の自由を拘束する監禁行為が、財物奪取のための恐喝行為の性質上、当然にその手段として通常含まれるものとは認められない。
重要事実
被告人は、共犯者らと共謀し、被害者から風俗店の登録名義貸し料名目で金品を喝取しようと企てた。被告人らは被害者を監禁し、その際に暴行を加えて傷害を負わせた。さらに、監禁のための暴行等により畏怖している被害者をさらに脅迫し、現金および自動車1台を喝取した。
あてはめ
本件において、被告人らは金品を喝取する目的で被害者を拘束(監禁)し、その過程で傷害を負わせるとともに、監禁状態による畏怖を利用して財物を交付させている。もっとも、恐喝罪の成立に監禁は必ずしも不可欠な手段ではなく、監禁が恐喝の「通常の形態」として手段の関係にあるとはいえない。したがって、監禁致傷罪と恐喝罪は独立した犯罪として成立し、併合罪の関係にとどまる。
結論
監禁致傷罪と恐喝罪は牽連犯ではなく、併合罪として処断される。本件第1審および原判決の判断は正当である。
実務上の射程
本判決は、長らく牽連犯を認めていた大審院大正15年判決を変更し、監禁と恐喝の関係を併合罪とした重要な判例である。答案上は、罪数判断において「手段・結果の関係」を限定的に解する立場(客観的説)を明示する際に引用すべきであり、同様に「手段」となり得る住居侵入罪等と比較して、監禁罪の独立性を強調する文脈で活用する。
事件番号: 昭和42(あ)230 / 裁判年月日: 昭和42年6月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】監禁致傷罪と強姦罪(当時)の関係について、両罪を併合罪(刑法45条)として処理した一審判決の判断を正当とした。 第1 事案の概要:被告人が被害者を監禁し、その過程で負傷(監禁致傷)させた上、さらに強姦に及んだ事案。一審判決は、監禁致傷罪と強姦罪の成立を認め、これらを併合罪として処断した。弁護人は、…
事件番号: 昭和42(あ)1482 / 裁判年月日: 昭和42年12月21日 / 結論: 棄却
暴行が不法監禁中になされたものであつても、その手段としてなされたものでなく、別個の動機、原因からなされた場合において、右暴行の結果被害者に傷害を負わせたときは、監禁致傷罪ではなく、監禁と傷害の二罪が成立し、両者は併合罪の関係となる。
事件番号: 平成15(あ)60 / 裁判年月日: 平成15年7月10日 / 結論: 破棄自判
1 刑法47条は,併合罪のうち2個以上の罪について有期の懲役又は禁錮に処するときは,同条が定めるところに従って併合罪を構成する各罪全体に対する統一刑を処断刑として形成し,その範囲内で各罪全体に対する刑を決することとした規定であって,併合罪の構成単位である各罪について個別的な量刑判断を行うことは,法律上予定されていない。…